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【特集】活版印刷の技術を守る!熟練の技を受け継ぐ新世代|タダイマ!

活版印刷ってご存知ですか?

活版印刷とは、文字の部分が凸型になっている活字にインキを塗り、紙を押し付けて印刷する技術のことです。発祥は諸説ありますが爆発的に普及したのは、14世紀のヨーロッパ、グーテンベルグが発明し、この技術によってキリスト教の聖書が一般大衆に広く普及したといわれています。

それ以降、人類にはなくてはならない印刷技術として定着しました。しかし現在では、コンピューターを使ったDTPや写真植字などの技術によって活版印刷は、印刷の中心を担う役目は終えているといわれています。

独自の風合いに仕上がる印刷

そんな中、今もこの技術を守り抜き活躍している活版印刷の職人が福岡市におられます。今年で80歳の山田善之さん。日本でも珍しい活版印刷職人。

活版印刷機から生まれる印刷物は、あたたかみと柔らかさがあり独自の風合いをかもし出します。
福岡市城南区鳥飼にある印刷所「文林堂」では、今でも、一枚一枚手作業で紙を印刷しています。

古い印刷機からの再スタート

山田さんは幼い頃から父親の手伝いで活版印刷機に触れてきました。成長してそのまま印刷業の道に進み、やがて"文林堂"を立ち上げます。その後、事業は拡大し、一時は30人近くのスタッフを雇っていました。

しかし、バブル崩壊にあわせるように印刷業は衰退。従業員も離れ、事業の将来を思案していた時に、ふと思い出したのが古い印刷機でした。山田さんは、使われずに放置されていた活版印刷機の活字や機械を全国から少しずつ集めては整備を繰り返し、活版印刷職人として再スタートを切ったのです。

現在の山田さんの仕事の相棒は日本製の「アルビオン型印刷機」。制作は、なんと150年以上前のもの。先代の父親が戦後すぐに購入した印刷機です。「アルビオン型印刷機」で印刷すると、美しい文字の陰影、触った時の凸凹感など感性に響く不思議な力があり、深いぬくもりが伝わってくるといいます。

若い人たちの感性を味方に

再スタートを切った山田さんは、活版印刷機が稼働する工房を誰もが気軽に出入り出来るように開放しました。すると新しいことにチャレンジしたい好奇心旺盛なデザイナーや、活版印刷技術を習得したい若者が訪れるようになりました。
そんな若者の中に、150年前の活版印刷機に魅了されて山田さんに弟子入りした女性がいます。よしだようこさん。

もともと、活版印刷に興味のあったよしださんですが、実はこの世界に飛び込むことに何年も躊躇していた時期がありました。しかし家族の後押しもあり「文林堂」の山田さんに弟子入りを志願しました。

活版印刷の技術を受け継ぎたい

活版印刷を使うよしださんの主な仕事は名刺作り。全ての工程がアナログな活版印刷では機械の洗浄はもちろん、手作業で行う版の組み方やインク練りなど、一つ一つを師匠・山田さんから手取り足取り教わっています。

手間もかかる、時間もかかる。しかし心温まる仕上がりの活版印刷。

「山田さんの思いを引き継ぎたい、山田さんの技術を受け継ぎたい」
これが今のよしださんの気持ちです。

そんなよしださんの熱意に、師匠である山田さんは「印刷業は時代時代で無駄を省きながら、どんどん合理化を進めてきた業界です。昔ながらの活版印刷は、この合理化のスピードについていけなくなりました。今の時代にこの仕事を続けていくのは大変なことだけど、活版印刷の技術を学び守りたいという若い人がいることはありがたいことです。」

若い人に出会得たことが奇跡です

そして、最近「文林堂」に新たな活版印刷機がもう一台導入されました。ドイツ生まれの高速活版印刷機『ハイデル』。印刷職人なら誰もが憧れる世界的な名機です。
山田さんとよしださんは、この新参印刷機を親しみを込めて「ハイデル君」と呼んでいます。

動力はモーターひとつ。紙を吸い上げ、版に運び、あっという間に印刷完了!

山田さんが幼い頃から欲しくてたまらなかった憧れの印刷機。実は、購入を迷っている山田さんに弟子のよしださんが「買いましょう!」と猛プッシュ。「65年間想い続けた名機を手に入れました。あまりの嬉しさにオリジナルの歌まで作ってしまいました」。

「自分にとっては大切な宝物だけど、私がいなくなったらゴミになってしまうかもしれない古い印刷機と活字たち。よしださんがあらわれ、手に入れようと猛プッシュしてくれたのは奇跡のような出来事でした。生きる励みになります。」

人の気持ちが和らぐ活版印刷で作られた印刷物、この技術を伝え、受け継ぐことをお二人は強く願っています。
HIGHTIDE アタシェレタープレスメモパッドA5
※直営店限定
2,640円
●文林堂
問:(092)851-9531

2021年6月28日放送



タダイマ!  毎週月~金曜 ごご3時40分

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