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みうらじゅん「ウルトラマンの世界観と共通」仏像の魅力を語る

イラストレーター、漫画家、エッセイスト小説家ミュージシャン評論家ラジオDJなど、さまざまな顔を持つ人、みうらじゅんさん。彼が仏像マニアであることはよく知られているが、みうらさんが仏像について話す機会は、活動の多彩さゆえに今はほとんどない。しかし、新型コロナ禍で心の安らぎや救いを求める人々が増えている今日、改めてその魅力を彼の口から語ってもらおうと、RKBラジオ『櫻井浩二インサイト』はみうらさんに出演をオファーした。

 

 

みうらじゅんさん(以下、みうら):多くの人にとっては、仏像=奈良・東大寺の大仏のイメージなんですよね。修学旅行などで大仏を見ても、ほかの仏像には興味を持っていない人にとっては、仏像=大仏なんです。しかし、大仏があるなら小仏もある。仏像って他にもたくさんあるんです。

 

櫻井浩二アナウンサー(以下、櫻井):みうらさんは京都出身で小さい頃から仏像を見てきたんですよね。

 

みうら:僕が小学1年生の時に怪獣ブームがあって、写真を切り抜いて「怪獣スクラップ」にしたものを5冊ぐらい作っていたんです。ところが小学4年の時に突然「仏像スクラップ」に移行しました。2つに共通していたのは「異形」だったんです。京都・東寺のお堂の中に「立体曼荼羅」があるんです。曼荼羅は絵で表すものなのですが、空海が当時表現した飛び出す仏像曼荼羅なんです。その密教仏の世界観にグッときました。憤怒の表情をしたもの、顔が何個もあったり、手が何本もあったり…まさに異形ですよね。しかも見上げる角度も怪獣と共通している。そうして仏像がだんだん好きになってくると、京都・広隆寺にある国宝第一号の弥勒菩薩半跏思惟像は「ウルトラマン」の世界観と同じだということに小学生の時に気づいたんです。

 

櫻井:え!?どこが同じなんですか?

 

みうら:弥勒菩薩は釈迦が入滅して56億7000万年後にこの世を救いに来られるという設定もそうですし、顔のシンメトリーさとアルカイックスマイルが初期のウルトラマンの口元と同じなんです。さらに口元に手を当てて、足元にもう1本の手を乗せているんですが、そのもう1本の手を上げていくと「スペシウム光線」になるんです。

 

櫻井:(笑)

 

みうら:あと、僕が中学生だった当時話題になった映画「エマニエル夫人」では、夫人が半跏思惟像のポーズをとるシーンがあります。観音の世界は「豊穣の神様」であったりするので、インドではものすごくナイスバディな体つきでもあるんです。「エロ」に興味を持つ中学生の僕にとって、セクシーでかっこいい観音や地蔵は、仏像に惹き込まれる要因でした。

 

櫻井:みうらさんは「見仏記」という本もシリーズで出されていますよね。

 

みうら:実はその本を書いていた当時、お寺の住職さんに「仏は見るものではない、拝むものだ」と怒られたんです。でも「見仏」という仏教の言葉もあるんです。僕は“かっこいい”という入口から興味が湧いたのですが、好きには違いありません。そののちに仏教の世界観を知るようになったんです。仏像には「たおやか」「美しい」などという表現がよくあてはめられますが「かっこいい」というのもあると思うんです。密教仏は特にそうです。当時の最新のものを空海は持ち帰っていますから。最先端が詰め込まれています。もし当時レーザー光線があれば使っていたと思うんです(笑)。

 

櫻井:みうらさんは今まで何体ぐらいの仏像を見てきたんですか?

 

みうら:いや…分からないんです。かつて「九州仏」を集めた展示会が福岡で開かれた時に、僕といとうせいこうさんとでテレビの収録をしたことがあったんですが、九州だけに限っても、こんなにも数があるのかと驚きました。

 

櫻井:九州でおすすめの仏像はどこですか?

 

みうら:大分県豊後高田市にある「太郎天」ですね。大分は神仏習合の地なんです。だから“神センスをもった仏の表現”とかがあります。明治以降、神仏分離があって別々になってしまいましたが、大分にはそのルーツが残っています。太郎天は神像ですが、とても不思議なものです。また、東大寺大仏とも縁がある宇佐の八幡神もおすすめです。

 

櫻井:みうらさんにとって「仏像」とはどんな存在ですか?

 

みうら:かっこいいの一言です。かっこいいものではないと、何十年何百年と残っていないと思うんです。宗教の教えを守り伝える側と、美しいものを残したい仏師とのせめぎあいもグッときます。

 
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