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日中台3首脳の新年メッセージから読み解く今年の東アジア情勢

2022年がスタートした。今年、大きな選挙・リーダー選びがあるのが日本とアメリカ、そして中国だ。日本では7月に参院選、アメリカは連邦議会の中間選挙が11月に、中国では秋に5年に一度の共産党大会が控える。そこで問われるテーマの一つが対外関係、外交の手腕だ。元RKB解説委員長・飯田和郎がRKBラジオ『櫻井浩二インサイト』で、日中、それに台湾を含めたトライアングルの視点から、3人のリーダーによる新年のメッセージを読み解いた。  

中国を念頭に置いた岸田首相の年頭所感

まず日本から。岸田文雄首相は1日、年頭所感を発表し、外交分野についてこう語った。

「急速に厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、外交・安全保障の巧みなかじ取りと、安定政権の確立が益々求められています。本年は、本格的に、首脳外交をスタートさせる年にします」
新型コロナの影響もあり、10月の就任以来、外遊はイギリスへ以外ない。年明け早々計画していたアメリカ、オーストラリアへの訪問は「国内のコロナ対策に万全を期す」ことを理由に断念している。掲げた首脳外交の出鼻をくじかれた形。話を年頭所感に戻すと、首相はこう続けている。

「私は、未来への理想の旗をしっかりと掲げ、現実を見据えながら、①普遍的価値の重視②地球規模課題の解決に向けた取り組み ③国民の命と暮らしを断固として守り抜く取り組み(この)3本柱とした「新時代リアリズム外交」を推し進めます」
①普遍的価値とは人権、民主主義を、②地球規模課題とは温室効果ガス抑制など環境問題を、③国民の命と暮らしを断固として守り抜くとは安全保障を維持することを意味し、いずれも中国を意識しているように見える。さらに、「新時代リアリズム外交」についてもリアリズム=現実、すなわち安全保障分野での中国からの脅威を指している。

今秋「異例の3期目」に入るとみられる中国・習近平指導部

その中国は、開幕まで1か月を切った北京オリンピック・パラリンピックを踏み台にする。コロナ対策を含め、オリンピックを成功させ、「専制主義」と非難されてきた中国の体制が、欧米より勝っていることを証明したいと願っている。習近平国家主席は新年を前に昨年末、国営テレビなどを通じて国民向けに新年の挨拶を発表した。北京オリパラに関しては「我々は誠意を尽くし、世界に対して盛大なオリンピックを捧げる。世界は中国に期待を寄せており、中国はすでに準備を整えている」と自信を示した。「すべて力をオリンピック、パラリンピックへ」と、国民にも協力を呼びかけたといえる。習氏は同日、これとは別の会議の場で、2022年の年頭所感を公表した。秋に開く共産党大会について「党と国家の政治・生活の中で大きなことだ」と述べている。

 

ところで、中国指導部の3つの最高ポスト(共産党総書記=共産党、国家主席=国、軍事委員会主席=軍)を習近平氏が務めている。このうち、国家主席だけは任期が2期10年と憲法で決まっていた。個人の独裁を防ぐための措置で、過去の指導者は、それに合わせて、総書記や軍事委員会主席のポストをほぼ同じくして譲ってきた。それを習氏は2018年に憲法を改正し、国家主席の任期をなくした。そのときから既に、今年の党大会をにらんで、自分が共産党の総書記を続投することを視野に入れていたのだ。過去の指導者は、後継者人事をほぼ明確にしていたが、現在68歳の習氏にはそれがない。秋の共産党大会で、総書記に三たび選出され、国家主席、中央軍事委員会主席のポストを兼務することになれば、いずれも任期がない。憲法を変えてまで、中国は自身が統治する可能性がいよいよ高まるのだ。それが決まる瞬間が今年訪れる。

台湾は「軍事的冒険主義広げるな」と中国に注文

台湾について習氏は「祖国の完全な統一は両岸(=台湾海峡の両岸=中国と台湾の意味)の同胞がともに願っている」と述べた。1年前の年頭所感にはなかった発言で、中台統一への意欲、米国の介入に譲らない考えを強調した。

 

一方の、台湾・蔡英文総統は、中国との最大の相違=民主主義や人権の大切さを強調したうえで、こう訴えている。

我々の立場は常に『圧力に屈せず、冒険せず』である
習近平政権に対しては「軍事的冒険主義」を広げるな、と求めている。また、「軍事は、台湾海峡の両側(中台)の相違を解決するオプションではない。人々の生活を大切にし、社会を安定させるため努力して、台湾と中国は平和的な方法で問題に向き合おう。これが地域の緊張緩和につながる」とも言っている。台湾住民や中国だけではなく、国際社会へのメッセージだろう。

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