「北九州チャンス!シュート!決まったー!」ゴールデンウイーク最終日。快晴のミクニワールドスタジアム北九州には、6000人を超えるサッカーファンが詰めかけた。ギラヴァンツ北九州対ロアッソ熊本。私はその日、「サッカー実況のピッチ」に初めて立った。
正直に言えば、この仕事は「笛が鳴る前に逃げ出したい試合」だった。サッカー・ワールドカップですらまともに見た記憶がない。フォーメーションも戦術用語も、私には異国の言葉のように聞こえた。昼は通常業務、夜は試合映像。解説者の言葉をノートに書き留めた。気づけば、生活はすっかりサッカー色に。試合直前には体調も崩した。きっと「サッカー酔い」だったのだと思う。
それでも本番のスタジアムは、不思議な力を持っていた。歓声は北九州の潮風に乗って、放送席まで吹き込み、私の背中を押した。開始直後からチームは躍動し、気づけば実況席にいることも忘れて私は前のめりになっていた。北九州に勝利こそ届かなかったが、サポーターたちの表情は、どこかすがすがしく見えた。ひと夏を越えたギラヴァンツは、きっと今よりもっと凜としたチームとなっているだろう。だから私も練習を続ける。次にチームとファンに会う秋(2026-27シーズン)には、更に胸を張って実況できるように。
5月23日(土)毎日新聞掲載
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