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大地を切り裂くカッター!?

土を知り尽くした、土木作業のプロが創った画期的な発明がある。重機の先につけるアタッチメント(重量800キロ)で、地下約1メートルの深さまで切り込みを入れる。さらに、刃についた筒状の器具が地中に円形の水路を作る。これにより水はけが格段に良くなり、根腐れや病気の発生を抑制した。創ったのは、「輝喜重機(てるよしじゅうき)」代表の金城一喜(かずき)さん(55)。この器具は「フィールドリッパー」と名付けられ、土壌改良の新たな切り札として、やんばる(沖縄本島北部)の農家さんから絶大な支持を受けている。今、金城さんは、JICA の事業で、干ばつで苦しむカンボジアの土壌改良にも挑んでいる。

20数年前から土木作業に従事してきた金城さん。ある時、パイン農家さんから土の水はけを良くして欲しいと頼まれた。従来のユンボでの作業では、硬盤層(地下にある硬い層)の状態により、作業にムラができ、効率も悪い。

四六時中考えた末、フッと頭に浮かんだのは、大型船の船首のイメージだった。船首が波を切るイメージで大地に切り込みを入れたのだ。こうして8年前、「フィールドリッパー」は完成した。番組では、その開発秘話に迫る。
会社名:輝喜重機(てるよしじゅうき)
担当者:代表 金城一喜
住所:沖縄県東村字平良863-7
電話:090-3790-8424

取材後記

金城一喜さんが発明した「フィールドリッパー」は、今までの農耕機にはない画期的なものだ。弓なりの形や鎖で繋がれた弾丸など、その斬新な形状プラス、工法で特許を取得している。似たような農耕機はあるが、地下約1メートルの深さにまで切り込みが届くようなものはない。まして、その下に、160パイor220パイのトンネルを造れるものもない。
沖縄はサンゴが隆起してできた島。地面の下、60~80センチ付近に硬盤層が広がる。
そこに切り込みを入れるためには、今までの農耕機にはないやり方でなければならなかったのだ。

一喜さんは30年以上に渡って土木作業に従事してきた、重機を操るプロ。操作しながら、目に見えない地中の様子が手に取るように分かるという。同じ畑の中でも、硬盤層が波打っていたり、均一ではない。それがレバーをつかむ手に伝わり、把握できるのだ。まさにゴッドハンド。

「フィールドリッパー」はその画期的な形状と一喜さんのゴッドハンドが加味され、威力を発揮する。通常、約800坪の畑をユンボで耕作したなら1日仕事だが、一喜さんは1日で約1,600坪を耕作するという。(1本刃リッパーの作業後、3本刃リッパーで耕す)工期短縮にも繋がるのだ。

去年、一喜さんは、JICAの仕事でカンボジアを訪れ、土壌改良に尽力した。カンボジアの土質は沖縄に似ていて、硬い硬盤層が広がっていた。だが、「フィールドリッパー」の作業で、一喜さんは確かな手応えつかんだという。この技術は、沖縄と土壌が似ている東南アジア、あるいはネパールなど、農耕地には向かない山岳地域でも力を発揮すると予想される。「フィールドリッパー」は、世界中の農家さんを“笑顔”に、“幸せ”にする、まさに夢の農耕器具だ。
担当:RBC琉球放送 藤原 廣進

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