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「#サイゼで喜ぶ彼女」から考えるファミレスが果たした外食産業の功罪

暮らし
2月10日ごろ、Twitter上で沸き起こった「初デートでサイゼリヤはダメなのか?」論争。「#サイゼで喜ぶ彼女」がトレンド入りするほどだった。明治大学准教授でエコノミストの飯田泰之さんは「この論争から日本の外食産業の発展が見える」という。レギュラー出演しているRKBラジオ『櫻井浩二インサイト』で解説した。

※聞き手は櫻井浩二アナウンサーが休演中のため、宮脇憲一アナウンサーが務めた。  

ファミレスの登場が日本の外食文化を変えた

飯田泰之・明治大准教授(以下、飯田):サイゼリヤは定期的にSNS上で話題になります。今回の論点は「初デートでサイゼリヤに行くのはありかなしか」でした。

宮脇憲一アナウンサー(以下、宮脇):面白いですね。どちらかと言えば手軽な値段で食べられるお店ですよね。

飯田:サイゼリヤは後発組ですが、そもそもファミリーレストランが日本に登場したことで、外食文化は大幅に変わりました。ファミレスには「自社契約の農場」などからの「大規模な仕入れ」があり、さらに下ごしらえや調理を集団でやって、そこで処理されたものを各店に運んでから調理する「セントラルキッチン」という考え方があるからです。こうした流通形態はファミレスチェーンで形成されました。そのおかげで、私たちは数百円程度でおいしい料理を食べることができます。個人店で同じ食材を使おうとすると、ファミレスの3倍ぐらいの値段をつけないと経営できません。

飯田:その結果、個人店では安さや手軽さではなく、料理人の腕を見せられるということに重点を置きました。さらに、内装に凝るなど、ファミレスにはない魅力で勝負することで差別化を図ってきました。その結果ここ30年間で、日本の外食産業のレベルが大幅に上がったんです。ファミレスの大きな功績といえます。

デートにはストーリー性・イベント性が必要だ

飯田:個人店がほかに何を売りにするのかというと「物語(ストーリー)性」「イベント性」なんです。特別な場所で特別な料理人がいて、特別感あるおしゃれな内装であったりと、飲食店はそういった特別な経験や体験を売るビジネスに変化していくきっかけになったんです。

宮脇:「デートでサイゼリヤ論争」に戻ると、イベント性やストーリー性に欠けるということですよね?

飯田:コストパフォーマンスが良くて、味もおいしいというのは確かに大事なのですが、デートとなるとイベントやストーリーが重要なのではないかと考えます。その局面に置かれているのに「なぜコストパフォーマンスを重視したお店に行くのか」という不満が生まれるのだと思います。

宮脇:飯田さんはどう考えますか?初デートでサイゼリヤというのは…

飯田:デートのコース次第だと思います。例えば食事以外にドライブをして夜景を見るという「イベント」があるとすれば、サイゼリヤというのもひとつの選択肢だと思います。ただ、仕事帰りに食事をするという場合では、食事以外にイベントがないということになりますので、ファミレスに行ってしまうと、どこにイベント性を感じればよいのか?ということになるかと思います。
本田奈也花アナウンサー:私も飯田さんに同感です。メインを食事以外に持ってくるというのであれば、初デートでファミレスに行くのはありです。

宮脇:食事とイベント“合わせ技”が大事なんですね。

飯田:デートに何を求めているのか、ストーリー性やイベント性であると考えます。そのストーリーの部分が食事以外で保たれるのであれば、ファミレスは手軽だし短時間で楽しめるので選択肢の一つかなと思います。一方で、食事だけなのにファミレスやファストフードだと「その時間はイベントではないの?」という気持ちになるのではないかと思います。デートで行く飲食店に求められているものは、行って楽しいという体験。今回の論争で「日本のファミレスはものすごくコストパフォーマンスが良いんです」と主張している人は、話のピントがずれているのではないかと考えます。

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