お坊さんが作った「梨のような大根」

お坊さんが作った「梨のような大根」

毎月8日は糸島市の大口海岸でビーチクリーンが開催されています。(主催者は糸島市在住のエリカさん。元々僕たちと同じ業界でメイクアップアーティストとして活動していて、今は自然にもお肌にも優しいバームを作って販売しているし、農業の技術も持っているスーパーウーマン。)

2022年2月8日、僕も久しぶりにビーチクリーン活動に参加しました。その日の参加者は8名ほどいたのですが、その中のお1人、園田さんが皆さんで分けてくださいと大根を段ボール1箱分持ってきてくれたのです。なんでも「梨のような味がする」ほど瑞々しい大根だそうで僕が味見させてもらうことに。

しかしなぜか葉っぱを。「葉っぱを食べただけでも分かる」ということらしい‥‥。ビーチで大根の葉っぱをむさぼる男の誕生です。「梨のような大根」とは信じがたいフレーズですが、葉っぱをかじった瞬間、口に広がる水分、シャキッとした食感、それは確かに今まで食べたことがない大根の「葉」でした。大根は梨のような瑞々しさがあるのだろうと容易に想像できる「葉」でした。

園田さんに聞くと、この野菜はお坊さんが考案した「無農薬無肥料」の農法で作られたもので、今日持ってきたのはそのお弟子さんが作った分だということでした。なんとも興味深い話で「絶対そのお坊さんに会いに行こう」と思わされました。

今後の人生を左右するかもしれない出会い

その数日後、早速、福岡市西区小田にある福寿寺へ向かいました。福岡市中心部から向かうと、海岸沿いにカフェが立ち並び、夫婦岩が有名な二見ヶ浦の少し手前くらいの場所です。自分と取り組みのレベルが違いすぎたら怖いな…という気持ちも抱えていざ対峙! 戦いに行っているわけではなく、教えを請いに行っているのに気負ってしまっていました。僕自身も農薬を使わずに野菜を栽培している自負があり(まだたった2年なのに…)ある程度は同じくらいのステージでお話をしたいなとおもっていたためです。しかし…。

快く迎えて下さったのは平兮元祥さん。2年ほど前にお父様から引き継がれ、住職さんをされているとのこと。本業はもちろん住職さんですが、3年をかけて完成させた独自の農法「禅農法」を用いて野菜を栽培され、高級野菜として販売もされているそうです。

おおよそのお話を伺った後、僕も唯一の武器である「社員食堂の生ごみをコンポスト」している話を切り出しました。食堂から出た生ごみをコンポストしてできた堆肥を使って野菜を作っていること、収穫物は食堂に循環させていること、生ごみの処理量は年間1.5トンに及ぶこと、2年も続けていることなど、満を持して伝家の宝刀を抜いたのです。

それに対し、元祥さんから出た言葉は「うちも食品残渣を年間300トン処理しています」と、サラリ。1.5トンvs300トン、明かに差が。僕の持っていた武器は刀かと思っていたら、針金だったようです…。「禅農法」は「無農薬で化学肥料を使わない」ということがコンセプトだと教えて頂きました。そうするにはやはり「土づくり」をしっかりしないといけません。その土づくりの段階で、大手飲料メーカーがペットボトルなどに使うお茶やコーヒーを絞った後に出る残渣を引き取って使用しているとのことでした。それらを使ってなぜ良い野菜ができるのか?「禅農法」とは?ここで詳しく書くのは難しい内容なので、元祥さんのYouTubeチャンネル「げんちゃんの循環農園」をご覧ください。

【げんちゃんの循環農園】
https://youtu.be/rRLq5DBTtRA

柿のようなカブ

2時間近く、とても親切にご説明頂き僕の話も聞いて頂きました。いざ畑へ。今だと「梨のような大根」のほかに「柿のようなカブ」もあるとのこと。期待を胸にお寺から車で数分の畑へ。まず目についたのはお茶の搾りカス。これをしばらく寝かせておくとキノコ菌が森からやってきて食物繊維を糖にしてくれるそうです。

そして畑の中へ。お寺の中でお話を伺っている時「うちの農園に見学に来た人はウサギみたいになりますよ」と言われていた通り、僕は卯年として生きてきて47年、ついに本格化したのかと思うほど完全にウサギと化しました。

まずは「梨のような大根」。ビーチクリーンで頂いたのはお弟子さんが作られたものだったのですが、今日は師匠である第一人者・元祥さんの大根。口に入れた瞬間、完全に梨でした。シャリシャリ食べていくと後から大根の風味がするものの物凄い瑞々しさです。1本食べきりました。その後、白菜も菜の花もバリバリ完食していきました。

さあ、そして「柿のようなカブ」の登場です。畑の中で包丁を使ってサクサクと皮をむいていただき、パクリ。サクッ! というか、シャクッ! というか、それはもう柿の食感そのままで、甘い! これは本当に美味しい。どう表現したらいいのか分かりませんが、人の手によって作られた「美味しいと思わされている味」ではなく、「野菜本来の味はこれなのだな」と思わされる美味しさ。圧倒的な自然の力。

僕のレベルではまだ出会ってはいけなかったのかもしれない…。見習うところが多すぎて追いつける気がしない。次回は元祥さんがこの「禅農法」を通して見据える未来をご紹介させて頂きます。

THE WRITER

松井聡史 / RKBテレビ制作部ディレクター
松井聡史 / RKBテレビ制作部ディレクター
カメラやパソコンよりも土を触ってる時間の方が圧倒的に長いRKB農園部(自称)。最近の仕事は、生ごみのコンポスト、畑の水やり、除草作業、野菜の販売、そして時々、番組企画書の作成。RKBラジオよなおし堂ではレギュラーでコーナーを持ち、SDGsを発信している。

金曜ドラマ『クロサギ』

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