PageTopButton

ガソリン価格高騰よりも深刻?法人向け電気料金の上昇で新電力が撤退

ガソリン価格や食料品などの値上げが相次ぐ中、法人向けの電気料金の高騰が深刻化している。あまり報じられていないが、これからわたしたちの生活にも影響を及ぼしそうなこの問題について、「日経エネルギーNext」の山根小雪編集長が、コメンテーターを務めるRKBラジオの新番組『田畑竜介 Grooooow Up』で解説した。  

新電力が撤退し、電力供給の契約ができない企業も

私はガソリンよりも電気料金の値上げの方が深刻なんじゃないかなと思っています。ガソリンの値上げは4割と言われていますが、企業向け、法人が使う電気料金はこの半年で6割ぐらい上がってるんです。あまり知られていませんが、どうして知られてないのかというと、法人向けの電気料金は1年ごとに電力会社に見積もりを取ったうえで契約する形になってるからなんです。家庭の電気料金は、ホームページに料金が出ていて、いつでも申し込みができるし、料金プランを変えることも大丈夫です。一方で企業は電気の使い方、どんな設備があってどんな時間に使うかがそれぞれ違い、料金体系もあるわけではないので、見積もりベースです。企業によって契約更新が来る月がバラバラなので、契約更新までは値上げになったって気がつかないまま、次のタイミングが来て驚くということになります。

きょう(3月30日)の日本経済新聞朝刊にも、新電力が撤退し、電気料金も値上げしているという報道がありました。電気は九州であれば九州電力のほかにも、例えばauやソフトバンク、新出光などいろんな会社が提供してます。それが九州電力のような大手電力会社以外の会社がどんどん撤退して電気料金も上昇しているのは、電気の原価が上がっているからです。それは日本に多い火力発電所で、電気を作るために輸入して燃やす天然ガスや石炭、これらの資源高をはじめ、ほかにも制度の穴といったさまざまな課題もありますが、とにかく電気の原価が上がっています。

たとえば企業にこれまで1kWh20円で売っていたとします。ずっと20円でも利益が出ていたものが、今は原価が80円に上がって、売れば売るだけ3倍損するわけです。これではビジネスとして成立しないのでどんどん撤退が始まっています。企業側は「どこか電気代が安いところはないかな?」ではなく東京の(東証)一部上場の大企業でも「(電力供給の)契約先が見つからない、どうしよう」という状況に陥っています。

一応、国は「最終保障供給」という、例えば自分が契約している電力会社が潰れてしまったとか、手続きを忘れてしまったというときに電力供給してもらえるというルールのセーフティネットを持っています。このセーフティネットは例えるなら、きのうまでレストランでご飯を食べていたのに突然「公園の炊き出しに行ってください」というようなものです。こんなことが企業向けの電気料金で起きてしまっているんです。

再生可能エネルギーをもっと増やすための議論を

そして、それはその先、わたしたち一般市民の生活にも影響を及ぼしてきます。(福岡で有名)「むっちゃん万十」が値上げしたのは、原価すべてが上がったから、という話ですよね。物流費も上がり、小麦粉の価格も上がり、ここに電気の値段が加わります。

電力会社も経営が立ち行かなくなってしまっているので、どうするかといえば、もう電気料金の水準自体を上げるしかありません。今までと同じような価格水準で提供しようとすると大赤字になり「もう契約できません」となります。でも契約できないと困るわけです。だから「皆さん理解してください。今までよりもずっと高い値段になりますけれども、それでもいいですか」ということになりそうな雰囲気です。

もちろん、再生可能エネルギーは燃料費はかからないので、コストが変動することはありません。しかしまだ比率はわずかです。今、ロシアによるウクライナの侵攻の影響で「天然ガスの脱ロシア」といった話が、ヨーロッパでも広がっています。そのときの選択肢に原子力も入ってきてはいますが、原子力はコストの問題やいろんな課題もあるし、ウラン燃料の問題もあります。

 

やはり再生可能エネルギーをもっともっと入れなければいけないっていう議論になりつつありますね。「純国産のエネルギー」ですからコストもかからない。まさに今過渡期です。

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

radiko 防災ムービー「あなたのスマホを、防災ラジオに。」