映画『君たちはどう生きるか』主題歌・米津玄師「地球儀」を語る
7月14日に公開され話題となっているジブリ映画『君たちはどう生きるか』は、事前情報が完全に秘匿され、観ないと内容が分からない作品だ。7月18日に放送されたRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』では、すでに2度観たという、RKB報道局の神戸金史解説委員長が、ネタバレを避けるために敢えて映画の内容には触れず、主題歌である米津玄師の「地球儀」の歌詞を読み解いた。
「情報ゼロ」の初見と2回目の鑑賞の違い
宮﨑駿監督10年ぶりの新作映画、スタジオジブリの『君たちはどう生きるか』の公開が始まりました。15日にT・ジョイ博多のDolby Cinema®で観てきました。ここは音が非常に素晴らしかったです。
(T・ジョイ博多のDolby Cinema®)
この映画が話題になっている理由の一つは、「PRを全くしていない」ことです。「観客にまっさらな気持ちで見てもらいたい」ということで、公開されているのは鳥のくちばしの中に鋭い目がのぞいている1枚のポスターとタイトルだけ。誰が声優なのかも分かりません。
映画館に入って、映像が出始めて、「こういう絵から始まる映画なのか…」とか、「次はどうなるんだ?」「うん? 場面が変わって、どういうこと?!」とか、内容を全く知らないで映画を観るという体験は、初めてかもしれません。情報はゼロです。
分からなかったところをもっと知りたいと思って、その翌日、今度はTOHOシネマズ天神・ソラリア館に観に行きました。今度は「次はこうなるな」とわかっているので少し落ち着いて観られましたが、この2回の鑑賞体験は全く違いました。「普通に映画を観た」のがこの2回目で、1回目は情報ゼロ。受け取り方も、どこか違う気がして面白かったです。
夢の中で変転していくような映画
これから観る人のために、ここでは詳細は申し上げませんが、少しだけ言っておくと、少年が主人公の「冒険活劇ファンタジー」という感じ。鳥は、重要な登場する「アオサギ」でした。
(スタジオジブリツイッターキャラ)
©2023 Studio Ghibli
個人的なことですが、私は夢を見た時に、ある場面から次の場面になぜ移動したのかよくわからないまま転換して、そこでまた自分がワタワタしたりして、さらに次の場面に行って「うーん…なんでここにいるんだっけ?」と夢の中で考えたりすることがあるんです。そんな感じがちょっとして、転々としていく中で翻弄されていく、夢を見ているような気分になる、そんな映画でした。
謎のツイート
公開日の7月14日正午過ぎに、ジブリの公式ツイッターは、宮崎駿監督の直筆メッセージを公開しました。
米津玄師さん 素晴らしい音楽 ありがとうございました
(米津さん宛の宮崎監督メッセージ)
©2023 Studio Ghibli
これで観ていない方も、主題歌がシンガーソングライターの米津玄師さんのものだと分かりました。
この作品は、ツイートで小さな情報が出てくる形を取っています。公開日の午前8時にはジブリの公式ツイッターが、映画のポスターと同時に「カヘッカヘッカヘッ」というカタカナの文字を出しました。
「この変な鳥の鳴き声なんだろうか?」と思ったのですが、17日午後1時39分には、ジブリ公式が、別の角度からのアオサギの画像を投稿して、こんな言葉を付けています。
カカヘカヘッカヘヘッヘカヘカヘッカカッヘカヘカカッヘカヘカヘッカヘカヘカッヘ……
(スタジオジブリツイッターキャラ)
©2023 Studio Ghibli
もっと長いのですが、この辺で止めておきましょう。一体何なのか? ネット上の人たちはすごいですね。「カ」と「ヘ」と「ッ」を、それぞれモールス信号の短点「・」と、長点「-」と、区切り(空白)として変換すると言葉になるじゃないか、と。
みやざきさんまいにちきいてるよ
実は、その直前に、米津玄師さんのスタッフ公式アカウントが「カカヘカッヘカヘカカッヘカカ……(以下略)」とツイートしているのですが、これを変換すると…
ちきゆうぎきいてね
「地球儀」は主題歌のタイトルです。こんなやり取りをTwitter上でやっていたんです。「これは何なんだろう?」と調べた人がいたわけで、すごいなと思いました。
米津玄師さんが歌う主題歌「地球儀」(Spotify)
(米津玄師「地球儀」配信ジャケット)
©2023 Studio Ghibli
米津玄師さんのメッセージ
この主題歌が流れたシーンは、僕の中ではとてもリラックスした時間になって、「映画に合った素晴らしい曲だな」と思いました。米津さんはメディア向けにメッセージを出しています。
小さな子供の頃から宮崎さんの映画を見て育ちました。(中略)「地球儀」は『君たちはどう生きるか』の為の曲であり、わたしが今まで宮崎さんから受けとったものをお返しする為の曲でもあります。
この曲は非常に胸を打つものになっていて、テーマとしてとても合うものだったと私は思いました。…こんなお話をしていたら、もう1回観に行きたくなってきました。
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この記事を書いたひと
神戸金史
報道局解説委員長
1967年、群馬県生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。現在、報道局で解説委員長。