佐賀県の吉野ヶ里遺跡の「謎のエリア」で今年6月に発掘された有力者の墓とみられる石棺墓にまた新たな発見です。棺には計4枚の石蓋が載せられていましたが、このうち3枚の大きな石蓋はもともと1枚の石で、40キロほど離れた佐賀県南西部にある多良岳から船を使ってわざわざ運んだとみられています。蓋に彫られた記号の一部だけの向きが異なることから、当時の人たちが失脚したシャーマンを封じ込める目的で手間暇をかけて墓をつくった可能性が浮上しました。
わざわざ400キロの石を40キロ先から船で運んだ可能性
佐賀県文化財保護・活用室の白木原宜室長によると、石蓋の成分を分析したところ、多良岳で産出される玄武岩のものとよく似ていたということです。重量物のため船で運んだと推測できます。
白木原室長は「棺には軽い石蓋を使うことが多いが、今回の3枚の石蓋は合計400キロほどの重さで、これだけの手間をかけているということも棺に眠っていたのが有力者だったと裏付ける」と説明しています。
記号の向きの違いが意味することは?シャーマンの力を封じ込める目的か
石蓋には埋葬者を封じ込めるための「線刻」と呼ばれる記号がいくつも刻まれていました。白木原室長は「なぜ線刻を刻んだあとで石蓋を割る必要があったのか現時点ではわからない。今後、弥生時代の葬送儀礼などを知るうえで重要なものになる」と話しました。3枚の石蓋のうち1枚の記号だけが棺の内側を向いていました。祭祀を司る「シャーマン」などの有力者を完全に封じ込めるために、頭の上の石蓋だけを内側にした可能性も考えられるということです。
吉野ヶ里遺跡でまだ発掘が終わっていない「謎のエリア」はまだ残されていて、9月23日から調査が始められる予定です。
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