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“鴨のまち”で若い料理人が考えた「新しくておいしい鴨料理」 江戸時代からの“御狩場”福岡・小郡市

福岡市から車で1時間、福岡県の中心部に位置する小郡市は2年前、市制50周年を記念して、 「鴨のまち プロジェクト」を立ち上げました。いったいなぜ鴨なのでしょうか。

久留米藩主の「御狩場」だった小郡

鴨のまちとして受け継がれる小郡

小郡市は昔から鴨の飛来地として有名で、江戸時代には久留米藩主の御狩場でした。鴨の刺身や鴨鍋、甘辛い醤油につけたたれ焼きなどは、地域の伝統料理として愛されてきました。そんな「小郡の鴨を取り巻く食文化」は2022年、文化庁の「100年フード」に認定されました。

文化庁の「100年フード」とは、世代を超えて受け継がれ、長く地域で愛されてきた食文化を認定し、継承を目指す取り組みです。

これまでに全国で250件が認定されていて、福岡県では「小郡の鴨を取り巻く食文化」のほか、「北九州の糠の食文化」「柳川のうなぎのせいろ蒸し」「大川のえつ料理」「筑前朝倉蒸し雑煮」などが選ばれています。鴨の食文化継承に取り組む小郡市では2023年度、「食でつながる日本の文化認定事業」として次世代を担う料理人が新しい鴨料理を考案しました。

市長「小郡は鴨文化を発信している街」

小郡市で27日に開かれた「新しくておいしい鴨料理」の試食会には、加地良光市長も参加しました。

加地良光・小郡市長「おいしい」
 

「真鴨と苺の燻製」、「鴨のたたき」、「小松菜と鴨味噌の卵焼き」の3品


試食会で披露されたのは、フレンチのシェフが考案し、ミントがアクセントとなっている「真鴨と苺の燻製」、唐辛子と黒酢のソースをかけた「鴨のたたき」、そして、家庭でも作りやすい「小松菜と鴨味噌の卵焼き」の3品です。

小郡市は鴨の食文化継承に取り組んでいて、2023年度は文化庁の「食でつながる日本の文化認定事業」で、全国の優秀な若手料理人6人が新しい鴨料理を考案しました。
 

加地良光・小郡市長


加地良光・小郡市長「鴨の食のよさを知っていただきたいし、小郡が鴨文化を発信している街だとみなさんに知っていただけたら」

開発されたレシピは冊子にまとめられ、市内の観光施設などで配布されているほか、小郡市観光協会のホームページでも公開されています。

“無双網”で鴨を捕る現役猟師も舌鼓

レシピ集の作成を企画したのは、グルメサイト「ぐるなび」の大住由季子さんです。都市圏の企業から人材を派遣し地域を活性化させる総務省の地域活性化起業人制度で小郡市に派遣されました。
 

ぐるなび 大住由季子さん


ぐるなび 大住由季子さん「みなさんのイメージしている鴨料理は固定されていると思うんですけど、そういうものとは違う、面白いおいしい鴨料理が小郡で食べられるといいかなと思っています」

試食会には、現役の鴨猟師も参加していました。
 

鴨猟師 天本美博さん


鴨猟師 天本美博さん「うまいね。創作料理は食べたことなかったけど、なるほどなと思って」

小郡市は昔から鴨の飛来地として知られていて、毎年11月から2月まで鴨猟が行われます。

Q.何猟法と言うのですか?
鴨猟師 天本美博さん「“無双網”です。ころ合いを見て、これでいいと思ったら(手綱を)握って足を踏ん張って一気に体をぐっと。スピードも要ります」
 

「無双網」というわなを使った伝統の鴨猟


小郡市では江戸時代から、「無双網」というわなを使った伝統の鴨猟が続いています。無双網は幅2.5メートル、長さ14メートルの横長の網です。今、無双網を使っている猟師は天本さんら2人だけだということです。

鴨猟師 天本美博さん「これは青米」
 

天然鴨は臭みがなく上質で深いコクが味わえます


何日もかけて餌付けを行います。鴨はとても警戒心が強いため、200メートルほど離れた場所に作った見張り小屋に夕方入り、鴨が集まってくる早朝までじっと待ち続けます。そして、一気に手綱を引いて捕獲します。猟銃ではなく無双網猟で捕獲された天然鴨は、肉を傷つけることがないため、臭みがなく、上質で深いコクが味わえます。

月替わりコースメニューに必ず鴨料理

世代を超え、長く地域に愛されてきた「小郡の鴨を取り巻く食文化」は2022年、文化庁の「100年フード」に認定されました。それを機に小郡市は地元の商工会などと連携して、「鴨のまちプロジェクト」を始動させています。

RKB三浦良介「鴨のまちをPRする小郡市では、市内23の飲食店で鴨にちなんだグルメを楽しめます」

その一つ、2023年9月にオープンした日本料理店「縁(ゆかり)」では、月替わりのコースメニューに必ず鴨料理を提供しています。
 

日本料理「縁」江嵜寛司店主

 

鴨の煮物


日本料理「縁」江嵜寛司店主「鴨の煮物です。イベントなど活動がある時は積極的に参加して、微力ながら手伝えたらいいなと思っています」
 

「鴨のまち」をPRする小郡市


「鴨のまち」をPRする小郡市。受け継がれてきた食文化を継承しつつ、新たな特産品の開発なども進めることで地域の活性化を目指しています。

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この記事を書いたひと

三浦良介

1999年入社、テレビ営業部、大阪支社勤務を経て2011年から情報番組のディレクターを務める。2016年から報道記者として政治・経済を中心に取材奮闘中。