まさに迷走としか言いようのない台風6号は、気象庁の最新の予報によると九州に接近し北上、その後は朝鮮半島に向かうとみられています(7日正午時点)。夏の台風は迷走しやすいのが特徴ですが、6号の進路の変わり方はとりわけ極端です。その背景には、高気圧の急激な張り出しがありそうです。なぜこんな動きになってしまっているのか、気象予報士が解説します。
龍山康朗=RKB気象予報士・防災士
エンジンがない台風は吹いている風で行く先が決まる
実は台風は自らを動かすエンジンを持っていません。積乱雲の塊が回転しているだけなんです。じゃあ、何が台風を動かすのか?それは、周りの風です。たとえば、偏西風って聞いたことがありませんか?偏西風は、蛇行しながら西から東に吹く強風です。この偏西風は、秋には日本の上空付近を吹いています。台風が偏西風に乗ると足早に東に抜けていきます。ところが、真夏の偏西風は北海道付近にあるため、台風は偏西風に乗ることができず日本の南海上などをウロウロ。これが「夏の台風は迷走する」と言われる所以です。
次々に高気圧の「壁」、特に“迷走”が激しい台風6号
それにしても、6号の進路はUターンしたり直角に進路を変えたりと極端ですよね。このところの猛暑をもたらしている高気圧が関係しています。台風は低気圧の仲間であり、基本的に性質の違う高気圧を避ける傾向があります。高気圧が「壁」のような役割を果たし台風の進路を阻むわけです。当初、勢力が強い高気圧が日本列島を覆っていたため、台風6号は高気圧を避けるように沖縄付近を東に進みました。ところが、西から高気圧が張り出しそのまま西に進むことができなくなったため、Uターンして東に進みだします。
急激な高気圧の張り出しで「90度ターン」した
しばらくは東に進んでいたわけですが、新たな「壁」が出現します。今度は高気圧が東側からぐぐっと張り出してきたため、ほぼ直角に“ターン”して北に向きを変えたというわけです。このように進路の先々で高気圧の急激な変化を受け、右往左往しているようにみえるのです。さすがに九州を通過した後にUターンすることはないと思いますが・・・。
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