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「営業再開しても大赤字」北九州の“台所”旦過市場 大火1年後の不安と期待 営業再開の夫婦

2022年に2度の大火に見舞われた、北九州市の旦過市場。2度目の火災から10日で1年を迎えます。営業を再開する店がある一方で、仮設店舗には空室も目立ちます。

営業を再開した飲食店「あらまき」の夫婦


旦過市場の焼け跡に市が整備した仮設店舗「旦過青空市場」。ランチタイムの店内は多くの客でにぎわっています。そこに6月、飲食店の第1号として「あらまき」がオープンしました。

荒巻松美さん「不安とよろこびが入り交じったオープンだったんですよ。『お客さん、本当に来てくれるかな……』と」

店を営むのは荒巻廣行さんと松美さん夫婦です。

荒巻さん夫婦は5年前から旦過市場で海鮮料理の店を営んでいました。しかし、旦過市場を襲った2度目の火災で、荒巻さんの店は全焼しました。

荒巻廣行さん「自分がこの世界に入って、ずっと修行してきた大事なノートも全部燃えてしまって、箸一本も残っていなかったから、それは苦しかったですね」

ネットでいわれのない「火元」扱いされ


さらなる災難が荒巻さんを襲いました。

荒巻松美さん「主人は火災と同時に倒れて手術しないといけない状態で、翌日にはネットに“火元”と載せられ、精神的な苦痛の方が大きくて……」

体調を崩した上に、SNSでいわれのない誹謗中傷にさらされました。

荒巻松美さん「非通知で電話もかかってきて、『お宅が火元なんでしょ』って」

営業再開も「大赤字です」


多くの困難を乗り越え、仮設店舗で何とか営業を再開した「あらまき」。しかし、費用面での負担が重くのしかかります。

荒巻松美さん「赤字です。もう、大赤字です」
荒巻廣行さん「聞いたらびっくりしますよ」
荒巻松美さん「けっこうな費用かかってるから」

仮設店舗で営業するために必要となる冷蔵庫や厨房、客席などを整備するための費用がかさみました。市は、被災後営業を再開する店舗に対して最大120万円の補助金を出していますが……。

荒巻松美さん「(仮設店舗で)営業するために投資した分はおそらく全く返ってこないし、アルバイトの人件費と、仕入れた食材の支払いができたらいいかな。ずっと赤字だと思います。頑張っても赤字」

「旦過市場から離れたくない」


1区画5坪で客席も少なく、集客にも限界がある仮設店舗。契約が終われば、再整備後の商業施設に入居する予定ですが、不安もあります。

荒巻松美さん「(新しく入居する商業施設が)どれだけの店舗の坪数か分からないから、実際この中の揃えているものが使えるかどうかは分からない」

先の見通しが立たない状況の中で営業を再開したのは、旦過市場に対する特別な思いがあったからです。

荒巻松美さん「どうしても旦過市場から離れたくなかったんです。その一言しかない」
荒巻廣行さん「家内が(仮設店舗で)するって言うから、最初反対していたけど。『命ある限り頑張る』という気持ちでやりましたよ。あとは一生懸命がんばってやる。もうけは二の次」

26区画ある仮設店舗で営業は7店舗止まり


困難を抱えながらも、新たなスタートを切った「あらまき」。その一方、営業再開に踏み切れない店も多くもあります。

RKB岩本大志「旦過市場の2度目の火災から1年を迎えますが、仮設店舗に足を踏み入れますと、あちこちに空室が目立ちます」

旦過青空市場に用意された仮設店舗は26区画。当初21店舗が入居を希望していましたが、現在営業しているのは7店舗にとどまっています。背景にはあるのは、やはり「店舗の面積」や「費用面での負担」です。

北九州市 武内和久市長「移転すると現在の店舗面積から狭くなるので、入居を悩んでいる方もいるし、移転することで売り上げが予測できなくなる不安から仮設店舗への移転をちゅうちょしている方もいる、とうかがってっています。丁寧に対話をしていく、話し合いを重ねて、できる限り速やかに入所することを促していく」

火災前からの「再整備事業」も進行中


北九州市が入居を促す背景には、火災前から進める再整備事業があります。旦過市場に新たな商業施設を建設するため、約50の建物が一時的に別の場所に移る必要があります。
ただ、約半数で、移転に向けた契約の協議が続いていて、市は2023年度中にも契約をとりまとめたい考えです。移転がスムーズに進まなければ、2027年度の完成を目指す再整備事業に影響が出てくるおそれもあります。

北九州市 武内和久市長「全体のスケジュールが大きく損なわれる、変更を余儀なくされる、ということがないように努力していきたい」

2度目の大火から1年。困難を抱えながら再起を図る人もいれば、二の足を踏む人も。旦過市場の復興の歩みは、まだ始まったばかりです。

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