PageTopButton

歌うように話す|アナウンサーコラム

「うまい人は、話すように歌い、歌うように話すものだよ」。かつて先輩アナウンサーにそう教わった。正直、分かるようで分からない。

このほど、諫早湾干拓事業の功罪を問うテレビドキュメンタリー「誰のための公共事業~ギロチンが宝の海を壊した~」(26日25時20分放送)のナレーションを担当した。その際、まるで器楽演奏のように声を操る感覚があった。

ナレーション録音は番組制作の最終段階。画竜点睛を欠いてはならぬと、精神集中してマイクに向かうのだが、理想のナレーションに明確な形はない。そこで心がけていることは、(できているかどうかはともかく)制作スタッフの思いを酌んで、関係者と当事者が納得するように語ること。録音ブースで映像に目を凝らし、音声に耳を傾け、台本の奥にある思いに心身を添わせたいと集中して声を発する。その声で「私はこう解釈して、このような表現になりました」と提案するのだ。

一発OKになるとハッピーだが、制作者の理想像との間にずれがあるとやり直しとなる。この補正作業が難しい。声は感情の発露なので、感情の動きを上書きし、制作者の理想像に寄せて声の出し方をコントロールする。そうだ、これはきっと指揮者から指導を受ける演奏家と同じだ。「歌うように話す」とはこの感覚かもしれない。
 

5月25日(土)毎日新聞掲載

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

坂田 周大

RKBアナウンサー

出身地:長崎県長崎市 誕生日:3月10日 趣味・特技 音楽鑑賞、レコード屋巡り、オーディオ探究(電源タップを自作した!)、革細工(小物中心)、映画も好き

担当番組

テレビ

志、情熱企業

テレビ

サンデーウォッチ

ラジオ

Toi toi toi

ラジオ

おしゃべり本棚

ラジオ

オーディオのじかん

ラジオ

古代の福岡を歩くステージA海の道から空の道へ~安曇族の足跡を探る~