「角打ち」とは、辞書にも載っているように北九州発祥の方言がルーツであり、その意味は「酒屋の店頭で酒を飲む行為、またはその空間」を指す。その語源には諸説あるものの、少なくとも酒屋の「角打ち」と街場の「立ち飲み屋」は、明確に区別されるべきである。以上が北九州の出身で、生粋の"角打ち原理主義者"たる自分の見解ではあるが、今や「カクウチ」を称する飲食店は街中に溢れており、もはやこの流れに抗うことできないだろう。そうであれば、酒屋の店頭で酒が飲める本来の「角打ち」を広く知らしめるのが、"角打ち原理主義者"の務めであろう。そんな使命感から、今回は3軒の酒屋を紹介することにした。
1.ソムリエセレクトのワインが充実した六本松の新店
まず最初は今年の4月、六本松にオープンした「141酒店 福岡・六本松店」だ。本店は2023年に久留米で開業した新進気鋭の酒販店で、特にワインの品揃えには定評がある。創業からわずか3年にして九州随一のワイン消費地である福岡に進出を果たしたのは、その勢いを感じる。
発展著しい六本松の新築ビル路面1フロアを使った店舗は真新しく広々としており、向かって左側がワインセラー、右側が日本酒のショーケースになっている。やはりワインの品揃えが素晴らしく、フランスのシャトーものからマニアックなワイナリーまで、およそ27ヵ国から幅広く網羅されており、その数は2,000本以上。ワイン好きならそのエチケットを眺めるだけでも楽しめるコレクションだ。
店内奥の飲食スペースにはテーブル席、カウンター、立ち飲みコーナーが用意されており、ワインや日本酒に合わせた料理も充実している。今回は月替わりのペアリングセットで、フランス・ロワールの辛口スパークリングと冷しゃぶ山葵ポン酢マスタードの組合せを注文。自作の料理以外にも、大濠のフレンチ「Syn」のラザニアや久留米のイタリアン「IIDA」のジェラートを取り寄せるなど、そのレベルの高さは飲食店顔負けのクオリティだ。好みの1杯に出会えれば、販売価格+1,000円でボトルを注文することもできる。
2.自社畑で生産するナチュラルワインが飲めるアンテナショップ
2軒目は、薬院駅近くの白金にある「とどろき酒店 薬院stand」。本店は福岡市博多区三筑にあり、主に業務用酒販店として福岡市内の数多くの飲食店に酒類を卸している。以前から全国の地酒の品揃えに定評があったが、2代目店主の轟木渡さんが2000年代からナチュラルワインの販売に力を入れはじめ、2021年には自社ワイナリー「Studio go go(ストゥディオ・ゴーゴー)」を設立。卸売りだけでなく、プレイヤーである生産者として参入することで、福岡の食文化の活性化に一役買っている。
「薬院stand」は厳選した地酒やワインを手頃な価格で飲めるアンテナショップ的な存在であり、季節の限定酒や国内外のナチュラルワインがその都度オンメニュー。今回は「Studio go go」からリリースされた白ワイン「ディスコテック」を注文した。ワイナリー名をはじめ銘柄の多くは音楽をモチーフにしたもので、エチケットのデザインも含めてシャレが利いている。甲州、デラウェア、プティマンセン、シャルドネをブレンドした白ワインは、食前、食中にグビグビ飲める軽やかな飲み口。つまみに注文した「きびなごのカルピオーネ」ともよく合い、真夏の夕刻に楽しむアペロには最適だった。
カウンターには常に日本酒好き、ワインラバーが集まり、それぞれが情報交換する場にもなっている。そうしたコミュニケーションレベルでも、福岡の食文化の一端を担う存在である。
3.これぞ「本物の角打ち」と呼びたい、老舗酒屋が移転オープン
最後に紹介したいのが、この4月に赤坂から渡辺通に移転した「原酒店」である。創業は昭和10年頃というから、その歴史はなんと90年ほど。長く赤坂の裏通りで店を構えていたが、この4月に諸般の事情により渡辺通2丁目に移転オープンした。現在は「角打ち未満」と称して、毎週金・土曜限定の週末のみ角打ち営業を行っている。
A4サイズのメニューに小さな文字でビッシリと書き込まれているのは、全国の酒蔵から厳選した日本酒だけでざっと50種類以上あり、しかも、そのほとんどが500円台という低価格。そもそも酒屋の角打ちでは一升瓶の酒を升で量り売りしていたのがルーツといわれているから、その現代版ともいえる。酒のアテも基本的にはいわゆる"乾き物"だけという潔さで、これぞ「本物の角打ち」と呼びたいスタイルを貫いている。
90年にもわたる歴史の中で、九州・福岡の酒蔵との信頼関係を築いてきたからこその品揃えを誇り、そんじょそこらの酒屋や酒場では決して飲めない希少な銘柄や限定酒も目白押しで、今回は福岡・八女の銘酒「繁升」の純米スパークリングから純米クラシックラベルを立て続けに注文した。昔の呑兵衛は、升の上にちょびっと乗せた塩を舐めながら酒を飲んでいたというから、アテは塩っぱい揚げピーナッツで充分だ。
週末だけの営業とあって、狭い店内は常に呑兵衛たちで満員状態で、あっちでワイワイ、こっちでガヤガヤと喧噪に包まれている。昭和の角打ちもこうだったのかと思いを馳せながら、グビッとコップを空けて店を後にした。
ジャンル:立ち飲み
住所:福岡市中央区白金1-16-4
電話番号:092-753-8311
営業時間:12:00~21:00(角打ちは16:00~)
定休日:日曜・最終月曜
席数:スタンディング15名くらい
メニュー:日本酒400円~、グラスワイン900円~、砂ずりのコンフィ400円、きびなごのカンピオーネ400円、チーズ各種850円
URL:https://www.instagram.com/todoroki_yakuin/
ジャンル:立ち飲み
住所:福岡市中央区渡辺通2-8-28
電話番号:092-741-1159
営業時間:10:00~20:00(角打ちは金・土曜の17:00~22:00のみ)
定休日:日祝日
席数:スタンディング10名くらい
メニュー:日本酒500円~、焼酎400円~、缶ビール400円~、ハイボール400円~、おつまみ30円~
URL:https://www.instagram.com/hara.saketen/
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