「うまく話せるようになりたい」。アナウンサーに限らず、そう願う人が多いことを知った。それは社会人対象の「話し方講座」の講師を依頼されて感じたことだった。単純に「話すのが苦手」という悩みから「かんでしまう」「滑舌が悪い」「話が長くなる」「声が小さい」など課題は多岐にわたるようだった。
講座ではいくつかの「処方箋」を示した。プレゼンで「かまない」ためには、ゆっくり発語する、苦手な語句を把握し何度も反すうする、話す前に「準備運動」として大きく口を開いて発声練習をし、ほおの筋肉を緩めておくといったものだった。「話が長い」という悩みには、「重要なことを最初に話す」こと、「声が小さくなってしまう」対策としては「ボールを遠くに投げるように」言葉を発してはどうかと提案した。
ところがどうだろう。AIのようによどみなく均一な音量で話せたとして、それで人の心を動かせるだろうか。不器用でも「伝えたい」という熱意や、懸命な姿勢こそが「心に届く話し方」ではなかろうか。講座の締めくくりに「あなた自身のプロであれ」と述べた。技術より大切なこと、それは各人の生き方から生まれる言葉の「熱」ではないだろうか。自分にもそれを言い聞かせている。
9月12日(土)毎日新聞掲載
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