西九州新幹線「長崎・佐賀」2県間66キロだけ開業へ どうなる「福岡」への残り50キロ

9月23日にいよいよ開業する西九州新幹線。長崎と佐賀を結びますが、佐賀から福岡までどう整備するかは決まっておらず、国内で最も短い距離を走る新幹線となります。

◆「西九州新幹線」9月23日開業へ

RKB堤千春「武雄温泉駅です。ここで、特急から新幹線に乗り換えて、長崎駅までを最短23分で結びます」

9月23日に開業する西九州新幹線かもめ。博多駅から長崎駅へ行く場合、佐賀県の武雄温泉駅まで特急を使い、そこで新幹線への乗り継ぎが必要となります。

博多から新鳥栖までは九州新幹線が運行していますが、新鳥栖から武雄温泉までの区間(約50キロ)をめぐっては、いまだに新幹線のルートも、整備方式も決まっていません。なぜこうした状況になったのでしょうか?

◆在来線・新幹線 両方走れる新車両の開発は破たん

在来線と新幹線は、線路の幅が異なります。西九州新幹線は当初、両方を走行できる車両「フリーゲージトレイン」を導入する計画でした。整備方式を検討していた政府与党の委員会が、今から18年前(2004年12月)に作った資料にも、そのように記載されています。
その3年後、JR九州と長崎県・佐賀県の3者は、「フリーゲージトレインの導入を前提」に、新幹線の整備を進めることで合意。武雄温泉と長崎の間は、「フル規格」と呼ばれる新幹線の幅で線路の建設が始まります。しかし……。

「採算性が成り立たず、運営は困難」

2017年、JR九州は「フリーゲージトレインの導入は困難」との結論を出します。さらに、政府の検討委員会も技術的な問題が続出した車両の開発を断念。これをきっかけに、整備計画は大きく揺らぎました。

◆佐賀県が主張していた「在来線の活用」

佐賀県 山口祥義知事「合意が破談となった原因は、国にある。国において打開する手立てを示すべきだということについては一致したのでは」
長崎県 中村法道知事「長崎県は県民の大半がフル規格整備を希望しているので、可能性をゼロにしないで、議論を続けていただきたい」
JR九州 青柳俊彦社長「ぜひとも全線フル規格による整備について検討いただくようお願いを申し上げました」
<肩書きはいずれも2019年当時>

政府与党の検討委員会は2019年8月、「新鳥栖と武雄温泉の間もフル規格で整備するのが望ましい」と結論付け、佐賀県が同意した「在来線の活用」という前提が崩れ始めたのです。佐賀県の担当者は、合意の前提が宙に浮いたまま、計画の見直しを検討する場が設けられていないことを指摘します。

「フル規格はやらないともやるとも言っておらず、まだ議論もしていない。将来の西九州ルートのあり方を議論することは閉ざしていない」

また、フル規格にした場合、佐賀県が懸念していることがあります。

◆九州新幹線の新駅で起きたこと

11年前、九州新幹線「鹿児島ルート」の開業で新たに誕生した新大牟田駅。まちの賑わいについて地元で話を聞くと……。

Q.新幹線開業で人は増えた?
「いえ全然ないです。乗降客も少ないし、周りを見ても何ら商業施設もない」

大牟田駅は、かつて博多との間を結ぶ特急列車が1日に89本停車していました。しかし、新駅の開業に伴い「平行在来線」となり、去年ついに特急停車はゼロになりました。

「博多に行くのに、在来線で行けば時間もかかるし、不便さを感じています。新幹線で行くのは、交通費が高くなるし。今さら言っても仕方ないことですけど、大牟田駅に新幹線の駅が一緒になってたら、非常に大牟田は活気づいていたと思います」

フル規格にした場合、多額の地元負担に加え、在来線の利便性の低下など同じようなことが起きる恐れがあるとして、佐賀県の担当者は懸念しています。

◆フル規格を望む声は佐賀にも

一方で、フル規格を進めようとする動きは佐賀県にもあります。県内さまざまなエリアの議員などで作る会は、「フル規格で開業しなければ、新幹線の100パーセントの力は発揮できない」と主張します。

「西九州ルートは長崎のためだけの新幹線ではないんですよ。佐賀県も恩恵があるし。『佐賀市と博多間は今の特急でも十分じゃないか』という意見は承知しています。関西方面から乗り換えなしで来てもらうことが最大の目標で」

未開発の車両の導入を前提に、いわば見切り発車で整備を進めた結果、宙に浮いてしまった「約50キロの区間」。地域を活性化するために最も望ましい整備方式、それに伴う財政負担、在来線の存続など多くの課題を積み残したまま、新幹線は走り始めます。

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