有機スパイスのおいしいクラフトコーラを飲んで福祉に貢献!

有機スパイスのおいしいクラフトコーラを飲んで福祉に貢献!

刺激的なコーラに出会いました。それはスパイスを使って手作りするクラフトコーラです。
もともとコーラという名は、熱帯雨林に植生する“コラの木”のナッツ(木の実)を使って作られていたことから付けられたそう。ということで、このクラフトコーラには「コーラナッツ」のパウダーをはじめ、シナモン、クローブ、カルダモン、ブラックペッパーなど、カレーでもお馴染みのスパイスが8種類使われています。そして、そのほとんどが有機栽培されたものです。
つくり方は簡単。水にそれらのスパイスと砂糖を入れ、およそ10分煮出して粗熱をとり、炭酸水で割ってレモンをひと搾りすれば出来上がりです。炭酸の刺激、そして甘みの後にピリッとスパイスの風味が効いた味わいで、もちろんおいしかったです!

障害者の就労支援施設「どりーむはうす」

このクラフトコーラと出合ったのは、今年(2022年)4月、大丸福岡天神店のパサージュ広場で開催されたオーガニックマルシェでした。マルシェのテーマが「食品ロス」だったこともあり、僕はRKBのコンポスト&るるるガーデンの取り組みを紹介する展示とトークイベントで登壇をさせて頂きました。
その時、同じくマルシェに参加されていた「どりーむはうす」の中村大成さん(42)が販売していた“クラフトコーラ”という聞き慣れない言葉に興味が湧き、お声がけしたことがきっかけです。(後々調べて、クラフトコーラはいま世間で話題の飲み物だと知ったのですが…汗)

中村さんが所属している「どりーむはうす」は、「社会福祉法人そら」が運営する障害者の就労支援施設(A型・B型※)の1つです。クラフトコーラのスパイスは、そこで精神障害や知的障害をもたれる方々の手によって袋詰めされています。このクラフトコーラを買うことは、袋詰めされている方の収入につながり、それを作って飲むことで社会に貢献できます。つまり、作って楽しい、飲んでおいしい「どりーむはうす」のクラフトコーラには、僕がSDGsの取り組みにおいて必要だと思っている“ワクワク”が詰まっているのです。
(ちなみに「どりーむはうす」の皆さんが袋詰めしているカレースパイスもおすすめです!)

※A型は、一定の支援があれば働ける人に働く場を提供する「就労継続支援A型」。B型は、雇用契約をしての就労が困難な人を対象に、負担が少ない短時間の作業に対して工賃が支払われる「就労継続支援B型」のこと。

【クラフトコーラ、カレースパイス】の販売は
ナチゅ村(福岡パルコ)、オーガニックスーパー「マキイ」、
ダイキョーバリュー弥永店

 

かつてはエリート思考、いま求めるのは人としての可愛げ

僕は後日、中村さんにアポを取り「どりーむはうす」にお邪魔しました。そこでは10名ほどの方がスパイスの袋詰めや弁当箱の箱折り作業をされていました。
中村さんはここに勤め始めて4年目。「社会福祉法人そら」は農園を併設した別の施設、カフェ「とわ・え・もあ」を運営していることもあり、農家さんの作業を泊まり込みでサポートする仕事をされていた中村さんに、スタッフとして白羽の矢が立ったそうです。

中村さんはかつて有名選手にスポーツマッサージなどをする仕事をしており、どちらかといえばエリート思考だったと言います。しかし、ふとしたことから農業に興味をもつようになり今の仕事に。そこで障害者の方と接する機会を持つにつれ、他の人に自分の弱いところを見せることに抵抗がなくなっていったそうです。
障害者の方には、確かに「できないこと」などがいくつかあります。しかし、それを目の当たりにした時、彼らに「可愛げがあるな」という感情が湧いてきたのと同時に、「できないこと」は自分の中にもあるということに気づいたのです。それを機に自省した中村さんは、心が楽になり、「豊かな生き方とは何か」を考えるようになったと言います。今は、一般販売こそしていないものの、障害者の方と一緒に野菜を作り、その野菜を一緒に食べることで「お腹の中から元気になる」暮らしを実践しています。
そして、その気持ちの変化は農作業後の言葉や態度にも表れています。

心が変われば言葉が変わる。その言葉で相手の心と行動が変わる

皆さんは、農作業をして帰ってきた人になんと声をかけますか?
「暑かったね」「大変だったね」「きつかったでしょう?」

これらの言葉には、労いの気持ちがあるものの、農作業に対するネガティブなイメージが潜んでいるように感じます。そんな言葉をかけると、実際に作業した人の体は疲れた上に、心まで落ち込んでしまうと中村さんは考えました。

そこで中村さんは、こう声をかけます。
「野菜美味しそうだね」「今日はお天気で良かったね」

すると施設の利用者さんの表情は明るくなるそうです。
つまり、心がけひとつで自分だけでなく相手の心も行動も変えることができるのです。
これは簡単なようで難しい。でも出来ないことではない…。
中村さんが言う「(自分が本当に)幸せじゃないと感謝の気持ちが芽生えない」という言葉の意味が少し分かる気がしました。

「地域資源の循環」を利用した土づくりと野菜づくり

中村さんは、食べるという行為が「生きる力の根幹」だと言います。この菜園でそれを支えるのは利用者のみなさんが一緒に作った野菜です。中村さんの方針で化学肥料や農薬は使わずに栽培しています。
大事な土づくりは、近場にあるものでまかなっています。「地域資源の循環」です。まず、農園の隣にある大きな運動公園から譲ってもらう「落ち葉」を畑にまきます。そして、これまた農園の隣にある米屋さんからもらう「もみ殻」に、購入した「米ぬか」をプラスしています。最初のうちはパサパサして固い「もみ殻」は、野ざらしにして雨風を当てることで分解され畑の養分になるそうです。そこに畑に生えた草までも養分になるように工夫して、土づくりをします。
出来上がった野菜は、生産者でもある施設の利用者さん自身が格安で買って帰ったり、併設しているカフェで使われたりします。僕もおすそ分けを頂いたのですが、どれも美味しくて、改めて自然の力の偉大さを感じました。

マヤ文明を受け継ぐ(!?)自然栽培

さらに新たな試みも始まっています。それは山間部から畑の横に流れる用水路の泥を使った野菜作りです。山間部から農園まで数キロを流れてくる用水路には山のミネラルがたっぷりなはず、ということで用水路に溜まった泥をかきあげ、夏からの栽培に使おうというのです。
中村さんの調べによると「マヤ文明」を記す文献には、川や池沼水草などの植物の遺骸が積み重なり泥炭化された浮島では、野菜の育ちが良かったという内容が記載されているそうです。遠くない未来、「とわ・え・もあ」の農園では、今よりさらに美味しい野菜ができる日が来るのでしょう。

変化の種まき

中村さんは今後、慣行栽培(※)を続ける日本の農業に一石を投じる活動を起こしたいと考えているそうです。そのために「とわ・え・もあ」の農園で礎を築いているのです。その活動は同時に、一緒に野菜作りに取り組む施設の利用者さんが社会で活躍できるようになるための就労支援も兼ねています。
もちろん一般社会への就労だけが利用者さんのゴールであると考えているわけではありません。それぞれの方に合った「心地よい環境」を第一に考えながら活動を続けています。農業界にも一人一人の利用者さんにも明るい未来を迎えられるように、中村さんは今日も「変化の種まき」を行っているのです。

※国や自治体、JAの指導に沿い、法律に則って農薬や化学肥料を正しく使用し、多くの農家が当たり前に行っている従来型の栽培のこと

 

THE WRITER

松井聡史 / RKBテレビ制作部ディレクター
松井聡史 / RKBテレビ制作部ディレクター
カメラやパソコンよりも土を触ってる時間の方が圧倒的に長いRKB農園部(自称)。最近の仕事は、生ごみのコンポスト、畑の水やり、除草作業、野菜の販売、そして時々、番組企画書の作成。RKBラジオよなおし堂ではレギュラーでコーナーを持ち、SDGsを発信している。

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