田畑竜介Grooooow Up

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中国またも“爆買い”政治的思惑でヨーロッパとアメリカを天びんに

中国またも“爆買い”政治的思惑でヨーロッパとアメリカを天びんに

「爆買い」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。新型コロナウイルスの感染が拡大する前、中国人観光客が日本にやって来てお菓子や紙おむつを買い込んでいた姿が浮かぶ。また、中国人富裕層は貴金属や宝石などを大量に購入していた。いま「ちょっと違った中国による爆買い」が起きているという。RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・RKB元解説委員長が解説した。

 

航空需要回復を見込んで小型旅客機を“爆買い”

中国国営の航空会社3社が、欧州エアバス社から合わせて旅客機292機を調達する契約を結んだ。最新の価格基準によると、その金額は372億ドル(約5兆円)に上る。

詳しく見ると、北京を拠点にする中国国際航空が100機、広東省の広州が拠点の中国南方航空と上海がベースの中国東方航空がそれぞれ96機。機体は2024年から順次、各社へ納入するという。

この292機はすべて「エアバスA320neo」という小型旅客機。燃費に優れた最新鋭機で、日本の航空会社も保有している。導入する中国の3社は、主に国内線や、日本など比較的距離の短い国際線で使うという。

中国の航空当局は、コロナ後の需要回復に向けて強気の見方を示している。その読みの中で今回、フランスとドイツが中心となっているエアバス社から爆買いした。これは中国を取り巻く国際情勢と大きく関係している。

世界の2大民間航空機メーカーは、エアバス社とアメリカのボーイング社。コロナ禍前、この2社とも納入先の4分の1を中国が占めてきた。2大メーカーどちらにとっても、中国は大のお得意様だった。そこにコロナ禍が続き、航空機産業も大きなダメージを受けた。

エアバスA320シリーズと同じ規模の航空機で、ライバルのボーイング社にはボーイング737がある。中国がアフターコロナで、エアバスを選ぶのか、ボーイングを選ぶのかに注目が集まっていた。中国は政治的思惑で、その決定を意図的に遅らせ、そして今回、エアバス=つまりヨーロッパを選んだ。

ボーイング737といえば、最新鋭機マックスの事故が続いたのが記憶に新しい。2018年と2019年に墜落事故が起き、約1年9か月の間、運航停止措置がとられてきた。その後、事故要因と判断されたシステムの改修、それに乗員訓練の見直しなどがなされ、当局による運航再開が承認された。

その決定を受け、世界46の航空会社が、この機種の運航を再開し、順調に運航実績を積み重ねている。日本でもANAホールディングスが今月11日、この737マックスについて、予備の発注も含め計30機の最終購入契約を締結したと発表した。2025年度からの導入が予定されている。最新鋭機は従来機と比べ、約15%も消費燃料の軽減が見込まれる。

ロシアへの対応めぐり「ヨーロッパとの距離を縮める方が得策」

しかし、ボーイング737マックスの安全性が確認された中で、なぜ中国はエアバスを選んだのだろうか。先ほど「政治的思惑」と述べた。中国の航空会社は国営だから、政府の意向が大きく働く。航空機の大口購入者として中国はこれまでも、ボーイングとエアバス、すなわちアメリカとヨーロッパを天びんにかけてきた。そこにはその時、その時の政治情勢が大きく関係している。

今で言うと、やはりウクライナ問題を抜きにできない。ウクライナへ侵攻したロシアとの関係で、中国は曖昧とも思える態度を続けている。もちろん、アメリカもヨーロッパもロシアを厳しく非難し、中国に対しロシアへ厳しい態度で臨むよう求め続けている。

ただ、ヨーロッパの国々は個々のテーマでは中国に対するスタンスが異なる。またウクライナ問題以外においては、米中の間には太平洋エリアでの安全保障、貿易摩擦などなど多岐にわたって問題が先鋭化している。そのような情勢のなか、今はヨーロッパの主要国との距離を縮めておいた方が得策と中国は判断したのだろう。それが今回のエアバスの航空機爆買いに表れている。

「ボーイングとエアバスを天びんにかける」はよくある手法

これまでも、中国のトップがアメリカを訪問する時にはボーイングから大量買い付け、一方でフランスへ行く時にはエアバスから大量に買い付けてきた。

2015年に習近平主席が訪米、西海岸のシアトルを訪問した。シアトルはボーイング社創業の地だ。習主席はここでボーイングから旅客機を300機購入すると表明した。一方、2019年に習主席フランス訪問の際には、中仏首脳会談でエアバスからやはり300機の購入契約を結んでいる。

こうした買い付けは「手土産代わりであり、もっと言うと、首脳会談で厳しい中国バッシングを受けないよう、事前に懐柔や先制パンチに使っているようにも見える。

中間選挙控えバイデン大統領の対処も注目

ロイター通信によると、今年中国に納入された航空機はエアバスの47機に対して、ボーイング社は1機のみ。航空機メーカーはコロナ禍で需要が落ち込み、発注への期待は大きいが、バイデン政権は、厳しい対中姿勢を示しており、それがアメリカの航空産業にダメージを与えている。

今回、中国がエアバスからA320neoを292機買い付けたことで、ライバルのボーイング社はすぐに声明を出した。その内容は、アメリカと中国のそれぞれの政府に「生産的な議論」を促すとともに「ボーイング社は、中国の航空業界と50年もの間関係を持続してきたアメリカ最大の輸出企業として、地政学的な対立がアメリカの航空機輸出を抑制し続けていることは残念だ」としている。

さらに「中国へのボーイング航空機のセールスは歴史的に、何万ものアメリカ人の仕事を支えてきた。ボーイング社への発注と、機材提供がすぐに再開されることを願ってやまない」としている。

アメリカは秋に中間選挙がある。バイデン大統領も有権者の雇用も守りたいだろう。ブリンケン国務長官は、近く米中首脳会談が行われる見通しを示している。ウクライナ問題は重要だが、雇用に絡み国内からの突き上げを、バイデン大統領はどう対処していくかも注目点だ。

飯田和郎(いいだ・かずお) 1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。

 

日曜劇場『オールドルーキー』

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