故郷は地球|アナウンサーコラム

故郷は地球|アナウンサーコラム

「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」。映画『シン・ウルトラマン』のキャッチコピーである。皆さんは、ご覧になっただろうか? 私は5回見た。

ウルトラシリーズは、娯楽巨編である一方、多くの社会問題や、人間が抱える根源的な問題も描いてきた。なかでも、初代ウルトラマン第23話『故郷は地球』は秀逸だ。
登場する怪獣ジャミラは、なんと元は人間。宇宙飛行士だった彼は水のない惑星に漂着し、怪物化してしまう。

あまつさえ祖国はその事実を隠蔽し、1匹の怪獣として処理することを決める。復讐のため国際平和会議を襲うジャミラを、ウルトラマンはやむなく倒す。彼の死後たてられた墓標にはこう記されていた。「人類の夢と、科学の発展のために死んだ戦士の魂、ここに眠る」。地球を守る科特隊のイデ隊員は最後につぶやく。「犠牲者はいつもこうだ。文句だけは美しいけれど」

国家というものの残酷さ、偽善、そして名もなき犠牲者たちへの哀悼…。多くの皮肉とメッセージを含んだ本作は、一部では道徳の授業にも使われたそうだ。他にも、怪獣や宇宙人を通して、善悪さまざまな「人間」の姿を描いてきたウルトラシリーズ。ウルトラマンは、清濁併せ呑んで、人間を好きになってくれたのだ。

8月6日(土)毎日新聞掲載



冨士原 圭希
RKBアナウンサー。千葉県出身。

【担当番組】
テレビ:タダイマ! 金曜ビッグバン!
ラジオ:カリメン 土曜 de R。 おしゃべり本棚

金曜ドラマ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』

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