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睡眠不足が国際競争力を下げている!?いま注目のスリープテックとは

「日本人は睡眠時間が足りていない」「睡眠は8時間取るとよい」――こんなことをよく耳にする。私たちの生活と切っても切り離せない「睡眠」について、ラジオの生放送のため日々午前3時過ぎに起きているというRKB毎日放送の田畑竜介、田中みずき両アナウンサーが『田畑竜介 Grooooow Up』で毎日新聞の元村有希子論説委員に聞いた。
 

日本人の睡眠、時間と質は世界の中で“最低”

元村:お二人は睡眠、足りていますか?

 

田畑:足りていないと思います。ショートスリーパーになろうとしていますね。

 

田中:もう寝ちゃいけないようなときに眠くなっちゃって…(笑)

 

元村:夜勤と似たような環境だと思います。お二人をはじめ「日本人は睡眠が不十分」だというのはよく聞くと思います。OECDの2021年の調査によると、30か国中、睡眠時間は最下位という結果が出ています。15歳から64歳までの日本人の平均は7時間22分でした。調査全体の平均が8時間24分ということなので1時間ぐらい日本人は短いということになりますね。

 

元村:これは時間だけでなく、質も心配なんです。民間企業のフィリップスが「自分の睡眠に満足しているかどうか」について調べているんですけど、「満足している」と答えた日本人は29%、つまり3割に満たないんですね。調査対象の13か国中最低だったということで、インドは67%の人が満足しているそうなんです。

スリープテック市場に注目集まる

元村:睡眠が大事であることは、自明の理だと思うんですけど、最近は「睡眠負債」ということがよく言われるようになりました。睡眠負債とは、慢性的に睡眠不足を重ねていくと、それが負債・借金となってミスを誘発しやすくなると言われているものです。例えば「音が聞こえたらボタンを押す」といった反応の速度のテストをすると、それがよく分かるんだそうです。6時間睡眠を2週間続けた人の反応速度は、徹夜明けの人と同じぐらい(遅い)と言われているんです。

 

元村:徹夜明けだと、どうしても集中力が下がりますよね。それぐらい睡眠負債がたまっている状況ということも言えるわけですね。

 

田中:6時間って結構寝ていると方だと思っていました。まずいですね。

 

元村:睡眠中は成長ホルモンが出たり、脳の中の情報処理をして、頭をスッキリさせたり、記憶を定着させたりという働きがあります。さらに、睡眠は量も質もしっかりとることは、免疫にも関わるらしいということが最近よく言われるようになったんです。

 

元村:そんな中「スリープテック」という市場が今注目されています。つまり睡眠をいわば「商売」にするということです。2022年でいうと「ヤクルト1000」ですね。ヤクルトの中でも含有する乳酸菌がひときわ濃いといわれ、店頭で見ることがほとんどないですね。期待できる効果の一つに「睡眠の質の改善」が話題を呼んで、入手困難になっています。

 

元村:あとは睡眠の質を計測できるスマートフォンのアプリや、腕時計をつけて計測し、深い睡眠が何時間できているかなどのデータを表示させるものもあります。そういったものが人気ということは、つまりニーズが高いということかと思います。

体内時計のリズムを保つために仮眠を

元村:そんな中でも夜勤、すなわち「人が寝ている時間に起きて働く」ということの生産性が話題になっています。日本では「2日間昼間に働いて、3日に一度は夜勤」というパターンが多いんです。お二人のように、ずっと午前3時起きが続く方がまだいいんですが、これがバラバラだと体内時計のリズムが崩れて睡眠の質が落ちがちだ、ということが言われています。

 

元村:そこで専門家が勧めているのは「仮眠」をとることです。例えば「今日は夜勤だ」という人は、夜勤の前に寝ること。そして寝る直前にコーヒーやお茶などのカフェインが入っているものを飲むことなんです。

 

田畑:カフェインが入った飲み物は飲んじゃ駄目じゃないんですか?

 

元村:寝る直前に摂れば、目覚めを良くするんだそうです。これは結構心理的な作用もあるので、飲んだことで眠れなくなっちゃうっていう人もいるかもしれませんけど…。あと、夜勤の間も、30分程度の仮眠をとるということは、ミスを防ぐ上でもとても重要だと言われています。

 

元村:これは仕事のタイプによっても違うと思いますが、集中力や思考力、判断力が低下しがちなので、仕事の合間に30分間ぐらい寝るなど、そうした工夫でなるべく体内時計を健全に保つということが重要だと言われています。

いまの時代「寝る間を惜しんで働く」は美徳ではない

元村:私が思うのは、そうやってスリープテックで補ったり仮眠を取ったりすることよりも、本当は働き方を変えていくという社会的な取り組みの方が求められていると考えます。夜勤がどうしても重要な職場はありますが、日本の文化として「寝る間を惜しんで働く」みたいなのが美徳と言われていますね。でもそれはもうこの時代では美徳ではないという認識を持ってもらわないといけないと思うんです。

 

田畑:寝ていないことを自慢げに話しちゃう。「最近寝てねえんだよね」ってすごい頑張っているんだ、みたいに言う人もいますよね。

 

田中:それでミスが連発だったら困りますもんね。

 

元村:日本生産性本部の調査でも、日本の労働生産性が低いと言われているんです。G7で最下位だそうです。あれだけ寝ずに頑張っているのに! と思いがちですが、その頑張りの長時間労働が、実は睡眠不足に繋がっていて、さらに睡眠不足がパフォーマンスの低下を招いているというふうにも考えることができます。悪循環ですよね。

 

田畑:睡眠の質を上げることによって、起きている時間の質も上げられるっていうことですね。

 

元村:そういうこともあり、欧州連合各国では「ある制度」を導入しています。それは、会社勤めなら、退社から翌日の出社までの間を11時間以上空けるよう、会社に努力目標を課すというものです。本当は国家主導でやってもいいぐらい大切なのが「睡眠」なんです。

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