繊細な仕事で四季の雅をコースに映す、舞鶴の人気日本料理店

繊細な仕事で四季の雅をコースに映す、舞鶴の人気日本料理店

大阪の「味 吉兆」で12年間の修業を終え、1993年に「味 竹林」を開いた竹林譲さん。以来、大手門を舞台に、口うるさい美食家も黙りこむ美味を振る舞ってきました。2014年・2019年の「ミシュランガイド」でも一つ星を得た日本料理の名店ですが、つい先ごろ「30年目にして舞鶴へ移転」との情報をキャッチ。さっそく新装祝いを兼ねて、新生「竹林」を訪ねてみました。

竹林外観

目的地は、昭和通り「舞鶴2丁目」の信号から長浜方面に折れたすぐの場所。前は純和風の趣でしたが、11月5日に開店したこちらはモダンな店構えです。天神から近くなった割に落ち着いた雰囲気で、長年の常連にも納得のロケーションでしょう。

竹林個室

真新しい木の香りを嗅ぎつつ入店すると、以前はなかった個室が設けてありました。「これを待っていた!」という人も多いようで、早くも慶事や接待目的の争奪戦が始まっているとか。個室は6席と4席の2部屋があり、つなげれば12名まで利用できます。
なお設計担当者は、小田和正氏率いる「オフコース」に一時在籍した元ミュージシャンの建築家だそうですよ。

竹林カウンター

さらに奥へ進むと、艶めくイチョウの一枚板のカウンターがあり、その向こうで竹林さんが温和な笑みを浮かべていました。「味 吉兆」譲りの技術をベースに、幅広い知識と好奇心で、魅惑の料理を形にする66歳の職人です。
いまや福岡和食界きっての重鎮ですが、偉ぶらず、親しみに満ち、それでいて紳士然とした品格を覗かせる人柄は、決して客に緊張を与えることがありません。そして今宵も、技巧を凝らした旬の恵みを余さず披露してくれるはずです。

竹林突き出し
竹林お椀

この日頼んだ11,000円コースの1品目は、渡蟹と春菊の酢の物で始まりました。カニの甘みを増幅させる酢は、出汁と手絞りした橙を加えた柔らかな仕上がり。ほんのりした酸味と爽快な後口に、食欲が快く目覚めます。
その余韻は2品目のお椀にも続きました。羅臼昆布と本枯節の濃淡をバランスよく合わせた逸品で、舌をまろやかに包む液体の粘度も上質そのもの。具材の地鶏のつくねが、そこへ程よいコクを与えていました。上に乗せたほうれん草・金時人参・柚子は、この時期の関西の祭事で使われる飾りを模しているとか。

竹林刺身2

個人的に、うまいお造りもここの楽しみの一つです。鮮魚は必ず竹林さん自身が柳橋連合市場で選んでおり、厳しい吟味をくぐり抜けた本日のラインナップは、鯛、アジ、ヤリイカ、ハガツオ、皮目を炙った金目鯛の5種類。ひと噛みごとに、ギュッと弾む歯応えと、豊かな甘みが口の中を吹き抜けます。

竹林八寸

おしのぎの後の八寸は、まさに“千両役者”の貫禄。いくらの醤油漬け、松前蒲鉾、車海老のうま煮、白子ポン酢といった品々に日本酒のピッチも急上昇です。竹林さんは多くを語りませんが、この深いうまさを支えるのは、紛れもなく細やかな仕事の数々。日々の食材の状態を見極め、適切な仕込みをほどこし、再び食材に命を吹きこみたい──。どの料理にも感じる活力や濃厚な香りは、そんな食材への慈しみから生まれます。
ほかに魚のテリーヌといった西洋料理テイストも見られますが、これも竹林さんの持ち味。日本料理の礎は崩さず、ジャンル不問の料理愛を随所に注ぎ、コースにひとさじの驚きを添えていくのです。

竹林焼物
竹林炊き合わせ

絶妙なふっくら感で仕上げたカマスは、中国の骨董に乗って登場。新生姜を甘辛く味付けした、松葉に刺さったベッコウ生姜も良いアクセントです。
これまた味わいある織部焼で供されたのは炊き合わせ。カブラ、なんきん、ほうれん草、海老芋、牛蒡などの素材は、もちろんどれも異なる仕込みで味を煮含め、旬のベストな食味を引きだしています。
さらにご飯とデザートを食べ終えたら、全9品のコースは終了。店は変われど生真面目で、遊び心もちょっぴりあって、胃の腑に染みいる幸せな食事は昔のままでした。

竹林店主

その仕掛け人たる竹林さんは、「この年齢で、こんな立派な店を造ってしまいました」と少々はにかんだ様子。「でもせっかくだから、あと10年は頑張ろうかな」。この頼もしい一言こそ、「竹林」を愛する人々が一番聞きたかった言葉でしょう。けれども、何より引退を拒みたいのは大将自身かも。なにしろいまも精力的に飲食店を食べ歩き、「次の一品」への着想を探り続ける生粋の料理人なのですから。
「新しい技術を覚え、納得いく料理を作れた瞬間が一番嬉しい。それがこの仕事に打ち込める原動力だと思います」。その飽くなき探究心と若々しい情熱の発露を、あらためてこの新たな舞台で堪能したいものです。

店舗名:味 竹林
ジャンル:日本料理
住所:福岡市中央区舞鶴1-3-14小榎ビル1F
電話番号:092-712-1051 前日までに要予約
営業時間:12:00〜OS15:00/18:00〜OS21:00
定休日:日祝日
席数:カウンター6席、テーブル10席
個室:2〜12名
メニュー:昼のおまかせ6,600円・11,000円、夜のおまかせ11,000円・14,300円・19,800円(夜はサービス料5%)
URL:https://www.ajitakebayashi.com

THE WRITER

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