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人口がインドに抜かれる!中国で進む深刻な少子化と高齢社会

世界の総人口は2022年11月、80億人の大台に到達した。また、2023年中に国別での「人口世界一」は中国からインドになる。東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長は、1月12日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、中国の少子化について解説した。  

「一人っ子政策」転換後も出生数低下に歯止めがかからない

中国政府は毎年1月中旬に、前年の主要な統計数字を発表する。そこで2022年の中国全体の出生数が明らかになる。統計数字の発表に先立ち、概況を説明しよう。

 

中国の人口は、2022年7月1日時点で約14億2600万人。1949年に、中華人民共和国が建国されて以来、初めて前年に比べて減少に転じた。出生数は2021年過去最少の1062万人。来週にも明らかになる最新の出生数はさらに下がるのではないかと予想している。

 

一方、中国の65歳以上の人口比率は2022年に約14%と「高齢社会」に突入した。高齢化率は11年後の2034年には21%台になり、遠からず「超高齢社会」に到達する。

 

65歳未満、つまり15歳から64歳までを、「生産年齢人口」と定義するが、こちらはより深刻だ。中国の生産年齢人口は2022年9億8430万人。それが27年後の2050年には2億人以上減る見通しとなっている。

 

生まれてくる子供の実数も比率も減る。一方で働き手の実数も、比率も減る――。当然、なんとかしなくてはいけない。よく知られる「一人っ子政策」は過去40年も続いたが、2016年には1組の夫婦に2人目の子供をもうけることを認めた。

 

さらには2021年に3人目の出産を解禁する「三人っ子政策」となった。実際には4人以上の子供をもうける夫婦は多くないから、産児制限を事実上、撤回したといえるだろう。それでも効果は乏しく、少子化の傾向は変わらない。

 

中国政府も出生率を高めようと、対策を打っている。3歳以下の乳児・幼児にかかる養育費を、個人所得税の控除対象にした。また多くの省で出産休暇の日数を増やしたり、育児休暇を新たに導入したりしている。このほか、個別の企業も、それぞれ独自の支援策を打ち出している。もちろん、企業にとっては、人材確保のため、との意味合いも濃い。

経済的理由で「子供を持たない」「結婚しない」若者が増加

「中国では、日本以上に子供の教育費が大変」という話を聞いたことがあるだろうか。中国の人々が子供を産まない最大の理由は、やはり子育てに負担がかかりすぎるからだ。激しい受験競争を勝ち抜くために習いごとや塾代がかさむ。過酷な受験戦争が保護者にも大きな負担だ。また、いわゆる評価の高い学校の近くでは、住宅の購入価格が高騰し、手が出ない。

 

政府は、学習塾について「家庭の負担を重くしている」として、学費がかかる学習塾を認めずに、非営利化するように規制した。日本ではあり得ない措置だが、これも少子化対策の一つだ。

 

また「結婚しても子供をつくる」うんぬんの前に、経済的な理由で「結婚しない」「結婚できない」若者も増えている。中国の2021年の婚姻件数は約760万組で前年から6%減った。減少は8年連続だ。特に若者の間には「結婚を急がない」、また「独身のままでもいい」との考え方が広がる。

 

数年前から、中国で「寝そべり族」(寝そべる=マイペース)という単語が話題になった。若い人たちが成功を追い求めない。自分の稼ぐ範囲の中で、「自分1人の人生を楽しもう」「結婚して子供を持つなんて意味がない」と考えるようになった。

少子化で経済は「負の循環」に

長く続いた「ゼロコロナ」政策で、中国経済の失速が指摘されているが、少子化にもおおいに関係がある。人とモノの移動制限によって景気低迷が長引き、所得が伸びず、雇用不安が高まる。そんな状況の中で、結婚をためらう若者が増えた。都市封鎖で婚姻届の提出や挙式を延期した人も多い。将来への不安が募っている。

 

経済が冷え込めば、少子化につながり、その逆に急速な少子化も、経済の活力をそぐことになるだろう。カギは中間層、つまり中間所得層を増やすことが重要だと思う。昨年秋の共産党大会では、重要施策の一つに、「共同富裕(=共に豊かになる)」が挙げられた。格差の縮小、「格差」とは所得格差、それに地域格差がある。

 

税や社会保障を通じた分配の強化で低所得者の収入を底上げし、中間層を増やさないといけない。だが、地域格差一つを考えても、今も地方の農民が北京や上海のような大都市への転入は厳しく制限されたまま。難しい。

 

さらに、少子高齢化が進むと、貯蓄率が下がる。財政赤字も確実に増える。年齢の高い世代が増えると、年金や社会保険の支払いが増える。日本も同じだが、一方で負担する現役世代は減っていく。そうなれば、最終的に財政で埋め合わせするしかない。そして、財政赤字が増えると、国際的な信用不安にもつながりかねない。まさに「負の循環」に陥る。

外国人労働者の獲得競争が激化?

岸田首相が年頭会見で述べた「異次元の少子化対策」を進めるという日本が、中国の少子化の心配をする余裕もないが、中国経済の冷え込みは、当然、日本を含む世界経済に打撃を与える。だが、中国の少子化による日本への影響はそれだけではない。

 

日本政府がめざす経済成長達成のためには、イノベーションの進展とともに、外国人労働者をさらに受け入れないといけない。国際協力機構(JICA)などの推計では、現在の約4倍の外国人労働者が必要だという。

 

しかし、現状の受け入れルールでは、まったく足りない。日本に労働者を送り出している中国などアジアの国々も、少子化で労働者の獲得競争の激化が予想されるからだ。日本の少子化対策として、「人の開国」が必要だが、送り出す方も少子化で、人材を出せなくなっている。

国内の危機に直面した指導者がとる行動は…

私が最も懸念するのは、少子高齢化に端を発した社会の「負の循環」がさらにスピードを上げて転がり出す。そうなると、その社会の不安がますます増大する。たとえば「年金がきちんともらえるのか」「格差は減るどころか逆に広がっているのではないか」といった不安だ。

 

そんな国内の危機に直面した指導者は、どのように急場をしのごうとするだろうか。「国の外に敵を仕立て上げ、国民の不満を内から外へそらす」――。中国では、そんな光景を何度も見てきた。だから、隣人の我々も、無関係ではないのだ。近く発表される中国の出生数に注目してほしい。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。
 

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