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突然シャットダウン!Twitterアプリの開発者が“マスク氏に言いたいこと”

イーロン・マスク氏がTwitter社を買収してから、大きな変化と混乱が起きている。1月中旬、民間で開発された各種のTwitter非公式アプリが遮断され、利用できなくなった。RKB毎日放送の神戸金史解説委員は、愛用のアプリ「ついっとぺーん」の開発者とTwitterのダイレクトメッセージ(DM)で意見交換。マスク騒動に直撃された胸の内を、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で伝えた。  

イーロン・マスク氏と「サードパーティー」

Twitterは、140字以内の短文を投稿するSNSです。本社はアメリカにあります。南アフリカ出身で、電気自動車テスラ、宇宙開発スペースXなどのビジネスで成功を収めたイーロン・マスクさんが経営を担って以来、いろいろ話題になっています。

 

2022年10月にはTwitterの買収を終え、いろいろなチャレンジをしているようですが、一部で混乱もしています。CEOに自分が向いているのかTwitterで投票を求めて「辞めた方がいい」が多かったから「辞めます」と発言したり、日本を含む世界中で大量解雇を実施したり、経営者が変わるといろいろなことが変わるな、という感じです。

 

サードパーティーとは、公式ではなくて、民間の非公式。Twitterを使うのに、公式アプリではなくサードパーティーのアプリを使う人がいます。私も、「TwitPane」(ついっとぺーん)というアプリが見やすいので長年使ってきました。

 

しかし、Twitter社は規約を変更してサードパーティーにデータを提供しなくなってしまい、事実上排除されてしまいました。1月中旬、私のスマホにも突然エラーが出て、使えなくなりました。自分のスマホのトラブルだとばかり思っていたら、1月19日にTwitter社から発表がありました。「なんで(前もって)発表しないのだろう?」と思いました。混乱が広がった面もあります。

突然の仕様変更をどう受け止めたか?

そこで23日、「ついっとぺーん」の開発者、ペーンクラフト代表・竹内裕昭さんに、Twitterのダイレクトメッセージ(DM)を使って「開発者はどのように受け止めたのか」を聞いてみました。DMをそのまま読んでみます。

神戸:突然の不具合が起きて、私個人のスマホのトラブルだと思いました。みなさんは、どのように受け止めたのでしょうか。(午後0:53)

 

ついっとぺーん:我々のような開発者はTwitter社の一時的なトラブルにはある程度慣れていて、「またTwitter側の不具合かな?」という受け止め方もありました。しかし状況を調べてみると他の多くの非公式アプリも同時に使えなくなっていることが分かり、「これは意図的なものだ」と認識しました。(午後1:02)

 

神戸:「意図的」なものだと感じたのですね。ということは、Twitter社が何らかこうした行動を取る可能性がある、と事前に予想していたということでしょうか。(午後1:05)
 

ついっとぺーん:突然使えなくなったのは 1/13(金) でしたが、その2日前の 1/11(水) に Twitter Blue というTwitterの有料サブスクリプションが始まったので、その直後の凍結ということもあります。Twitterは主に広告収入で成り立っていますが、非公式アプリは広告を出していないのでTwitter社にとっては直接的な利益がないんですよね。

 

ですのでいつかはこういうことになるかも、とは思っていました。ただ、何もアナウンスがなかったので、Twitter社側の不具合の可能性も高いとは思っていました。(午後1:10)
 

サードパーティーとはどのようなものなの?


神戸:なるほど…

それでは、サードパーティーについてお教えください。みなさんのような開発者さんは、どのような目的でこのようなサービスを展開しているのですか。(午後1:13)

 

ついっとぺーん:10年以上前になりますが、元々Twitterが始まった当初は「公式アプリ」というものがなく、API という「素材」だけが与えられた状態でした。

 

APIでは「誰がいつどんなつぶやきをしたか」を取得したり、投稿したりできます。これを見やすく綺麗に並べて表示するのがアプリの役割ですが、開発者はそれぞれ思い思いに、見やすく・使いやすくしていったということです。

 

弊社は約10年前にTwitPaneをリリースし、多くのユーザーが使ってくれていたので、このアプリに付いている広告の収入で経営できていました。(午後1:20)
 

マスク氏は気づいていない!


神戸:私たちユーザーも、マスク氏が登場してから、非常に大きな変化に見舞われています。開発者としては、マスク氏についてどのようにお考えですか。(午後1:26)

 

ついっとぺーん:優秀な経営者で、エンジニア出身ということもあり技術的にも自信があるようですが、ユーザー目線が足りないと思いますね。

Twitterは色々なアプリから利用できることにこそ他のSNSにはない価値があったのだと思いますし、それによって色々な利用方法が生まれたんだと思います。

 

例えばTwitPaneのようなアプリは「情報収集」が得意で、日本ではTVの番組を見ながらみんなでわいわいとツイートするような文化があります。好きな芸能人、特にジャニーズなどに代表される「推し」の文化では、好きな推しの情報を全て読みたい、といった使い方もされています。これは一例ですが、そうしたことは公式アプリではかなり難しいのですが、公式アプリしか使ったことのないマスク氏は、こうしてユーザーが困っていることに気づいていないでしょうね。(午後1:33)

 

神戸:気付いてない…! 確かに、そうかもしれないですね。(午後1:36)
 

神戸:私も、「ついっとぺーん」さんを便利に使わせていただいてきていました。完全に皆さんのおかげだったんですね。本当にありがとうございます。(午後1:38)

 

ついっとぺーん:いえいえ、ありがとうございます。(午後1:38)
 

ユーザーにとってTwitterはどうなる?


神戸:利用者にとって、これからTwitterはどんな風になっていくと思われますか? (午後1:38)

 

ついっとぺーん:公式アプリやWebなど、使いにくいなぁと思いながらもしぶしぶ使っていく方が大多数だと思います。他のSNSに移動する方もいらっしゃるでしょうけどそれは少数派ですよね。Twitterでのつぶやきや閲覧時間も減っていくと思います。(午後1:41)

 

神戸:となると、ユーザーはあまり減少しない、と見積もり、公式アプリに集約して広告収入を上げる、というのが今回の目的と考えてよいのですね? (午後1:47)
 

ついっとぺーん:非公式アプリを使っているユーザーはTwitter全体の1%と言われています。これらのユーザーが全て公式アプリを使ったところで1%の収益改善にしかなりません。広告を消すためのサブスク(Twitter Blue)の加入者を増やそうと思っているのではないでしょうか。

 

また、非公式アプリに使われるAPIを提供するために、Twitterは多くのサーバを利用しているはずです。このサーバ代を減らすという経費削減的な意味もあると思います。(午後1:51)

 

神戸:なるほど、そういうことなんですね。お話をうかがっていて、コスト削減が目的だったのか、と分かってきました。(午後1:54)
 

「多様性がなくなった生態系がどうなるか、想像して」


神戸:最後に、マスク氏についておっしゃりたいことはありますか? (午後1:57)

 

ついっとぺーん:そうですね、言いたいことはたくさんありますが、先ほどの「ユーザー目線で経営して欲しい」ですかね。Twitter社の従業員が減ってもほとんどユーザーは困りませんでしたが、非公式アプリがなくなって数万人単位のユーザーが困っています。こうした事実に早く気づいて欲しいです。多様性がなくなった生態系がどうなるか、想像してみて欲しいですね。

 

神戸:大変勉強になりました。ありがとうございました。(午後2:03)
 
非常によい方で、DMのやりとりがそのままこうして読めるくらい、丁寧な説明をしてもらい、ありがたかったです。「ついっとぺーん」が使いやすかったのも、こういう人が作っていたからなのかな、と思いました。Twitterでの仕事がなくなってしまうので、これからは「Mastodon」(マストドン)というSNSのアプリを作ろうと思っているそうです。

 

マスク氏の決断は多くの人に影響を及ぼしています。「ユーザー目線を大事にしてほしい」という声が上がっていることをお伝えしたい。Twitterの利用について、僕らもどう使っていくのか、経営者にも考えてほしいなと思います。

 

◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。

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