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ジャスティン・ビーバーはなぜ楽曲の著作権を売却した?松尾潔が解説

ジャスティン・ビーバーが自身の楽曲291曲の著作権を約260億円で売却したことで話題になった。このところ相次いでいるビッグアーティストによる楽曲売却の理由とは? RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演した音楽プロデューサー・松尾潔氏が解説した。    

相次ぐビッグネームの楽曲売却

音楽業界の大変な人気者であるジャスティン・ビーバーが、一昨年の暮れまでにリリースした291曲の著作権を総額2億ドルで売却したと話題になっています。日本円で約260億円ですから、1曲あたり1億円弱ぐらいですね。

 

最近、ミュージシャンたちが著作権を売却することに積極的だという話、聞いたことはありますか? ジャスティン・ビーバーのほかに、ボブ・ディランやピンク・フロイド、そういったアーティストやバンドたちが売却した事例が珍しくなくなっています。

著作権の売却は生前贈与?

先ほど名前を挙げた人たちは、1970年代ごろに一時代を作って、いまやレジェンド扱いされている方々です。例えばピンク・フロイドのメンバー、ニック・メイスンは、自分が高齢であるということから、カタログ(権利)を売って現金化することで、資産が扱いやすくなると考えているようです。

 

つまり、カタログを権利者の人たちが取り分を巡って争うような事態に、自分の子供を巻き込みたくないんだと。でも、そういう理由だと、まるで富裕層が生前贈与の話をしている、みたいな、ちょっと人間くさい話に聞こえてきます。

サブスク各社が著作権の争奪戦

ただ、ジャスティン・ビーバーはまだ20代(3月で29歳)です。本人は「体調がよくない」みたいなことを言っていますが、それにしても若いですよね。相続問題に縁のない彼のような世代がなぜこういう動きを見せるようになったか?

 

その理由は、サブスクリプションが音楽を聴くサービスの主流になって、パッケージではなくなったためです。SpotifyやApple、Amazonといった、サブスクを展開する世界的な会社が、今しのぎを削っています。彼らの競争は「うちにはこんな楽曲がありますよ」「こんなカタログありますよ」という、楽曲の権利ホルダーの争奪戦になっています。早い話が今アーティストたちにとっては権利の「売り時」なんですね。

音楽業界の収益構造が変化

権利って、すごく細かく入り組んだりしています。つまり、それをずっと持ち続けているということは、その煩雑さともずっと付き合っていくということを意味します。ですから、長年にわたって印税が振り込まれることよりも、ある時点でそれを現金化して、次のビジネスに乗り出した方が良いと考える人が現れることも理解できるでしょう。

 

投資会社も今、音楽のカタログ分野への参画に積極的で、ビジネスとして今、波に乗っているんです。アメリカでは、ブラックストーンという投資会社がガンガン投資をしていて、このビジネスをより高いステージに押し上げようとしています。業界全体として、収益を生み出す構造としての楽曲の権利に再注目されているという感じですね。

コロナ禍でライブができず

日本でも、例えばユーミンが昔、派手なコンサートで話題になっていたときは「コンサートは赤字でも、CDをミリオンセールスにすることで、全体としてバランスがとれている」というふうに言われました。

 

しかし、今ではCDがさほど売れないので、そこを頼りにすることはできません。となると「(売り上げを上げるためには)やっぱりライブだよね」って話になって、入場料収入に加えて会場でのグッズ販売という「お金を落とす場所」を作っています。印税ビジネスよりも、ライブや物販といったものが売り上げをリードするようになりました。

 

ところが、コロナ禍では、ライブの開催もままならなくなりました。そこで注目されることになったのが、YouTubeやサブスクリプションに代表される配信です。そんな事情が背景にはあるのです。

富を墓場まで持って行かない

それにしても金額があまりに大きすぎて、われわれからすると、ただ指をくわえて見ているだけっていうような感じもありますね。今までもヒット曲を飛ばして相当潤ってきたのに、もう一回ここでまとまって莫大な金を手にするなんてね。「富を墓場まで持っていかない」って考える人が増えてきたということなんだろうと思います。

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