“VOCALIST”德永英明の軌跡を音楽プロデューサー・松尾潔が振り返る
目次
2月27日は德永英明の誕生日。「Rainy Blue」でデビューし、順風満帆の音楽生活のさなか、「もやもや病」でキャリアを中断。「VOCALIST」で軌跡のカムバックを果たした稀代のボーカリストの軌跡を、音楽プロデューサー・松尾潔さんが同日、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で振り返った。
実は福岡出身の德永英明
きょう2月27日は德永英明さんの誕生日です。今年62歳になりましたが、ここ20年ぐらい、全くイメージが変わらないですね。德永さんは1986年にデビューしたので、キャリアが長いですね。透明感のあるボーカルはいまも健在です。
実は德永さん、福岡の出身なんですよね。柳川生まれで、福岡市内の別府小学校卒業だと聞いています。でも、あまり福岡色が強くないですよね。中学・高校時代の思春期は関西で過ごし、福岡で音楽活動をスタートしたわけではないので、福岡のイメージが希薄なのかもしれません。
実は德永さん、福岡の出身なんですよね。柳川生まれで、福岡市内の別府小学校卒業だと聞いています。でも、あまり福岡色が強くないですよね。中学・高校時代の思春期は関西で過ごし、福岡で音楽活動をスタートしたわけではないので、福岡のイメージが希薄なのかもしれません。
声、メロディ、容姿…ヒットを連発
德永さんといえばやっぱり、美声かつ素晴らしいメロディで、ヒット曲が多い方ですよね。僕も長らくオーディションとかボーカルの審査とかをやっていますが、そういう場面で、徳永さんのデビュー曲の「Rainy Blue」は、いまだに誰かが歌っている感じなんですよね。スタンダード化している1曲と言ってもいいかと思います。
他にも「輝きながら…」や「壊れかけのRadio」と、1980年代から90年代の頭にかけて自作曲のヒットを連発しました。あの声であの容姿、誰が見ても「かっこいい」って言っちゃうような人物が、メロディメーカーでもある。でも、そのどれかにクローズアップされるというよりも全体として「何でもできる人」です。
他にも「輝きながら…」や「壊れかけのRadio」と、1980年代から90年代の頭にかけて自作曲のヒットを連発しました。あの声であの容姿、誰が見ても「かっこいい」って言っちゃうような人物が、メロディメーカーでもある。でも、そのどれかにクローズアップされるというよりも全体として「何でもできる人」です。
「もやもや病」でキャリア中断
一時、芝居もやっていて、キャリアも順風満帆という感じだったんですが、2001年にもやもや病でキャリアを中断することになったんですよね。その直前にTBSテレビ『スーパーサッカー』のキャスターという、新しいチャレンジを始めたところでした。ツアーやレコーディングも中止して、このまま引退するんじゃないかとささやかれたんですが、1年半ぐらいで克服しました。
第2章「VOCALIST」
「音楽生活第2章」は、大手レコード会社・ユニバーサルに移籍してスタートしました。そして、2005年に立ち上げたのが「VOCALIST」という、女性アーティストの曲だけをカバーしたアルバムですね。
それまでずっと自作曲でやってきた德永さんが「ボーカリストに専念するんだ」という新鮮な驚きがありました。同時に、病気のインパクトが強かったので、「曲を書くことができないんだろうか?」とか、いろんな憶測を呼びました。
それにしてもとにかくこのアルバムが素晴らしくて。僕の友人でもあるアレンジャーの坂本昌之さんが德永さんのアルバムをずっと手がけているんですが、共通するのは坂本さんがアレンジしているということだけで、あとはもう女性ボーカルの歌を歌いまくると。これが受けて、奇跡的なV字回復ですよね。日本の音楽シーンの中で、カバーで大復活するって、あまり例がないと思います。
それまでずっと自作曲でやってきた德永さんが「ボーカリストに専念するんだ」という新鮮な驚きがありました。同時に、病気のインパクトが強かったので、「曲を書くことができないんだろうか?」とか、いろんな憶測を呼びました。
それにしてもとにかくこのアルバムが素晴らしくて。僕の友人でもあるアレンジャーの坂本昌之さんが德永さんのアルバムをずっと手がけているんですが、共通するのは坂本さんがアレンジしているということだけで、あとはもう女性ボーカルの歌を歌いまくると。これが受けて、奇跡的なV字回復ですよね。日本の音楽シーンの中で、カバーで大復活するって、あまり例がないと思います。
異例のロングセラーでカバーブームをつくる
「VOCALIST」は当時のチャートを見てみると、オリコンの最高位は5位なんですが、ずっと売れ続けて、発売から2年経った2007年に年間54位、2008年は年間34位と、上昇しているんですよね。
どういうことかというと、この「VOCALIST」シリーズが2、3、4と出すたびに、昔のアルバムも売れていくんです。で、累計するともうミリオンをとうに超えているわけですが、これは「あ、こういう山の登り方があったのか」と改めて気づかせてくれました。
かつての吉田拓郎さんもそうですが、自作で歌っている方がボーカリストに専念したとき、一つのエンジンでも十分に快適な走行することを証明するという、鮮やかな例でしたね。この後、德永さんに続けとばかりに、男性の歌だけを歌う女性アーティストのアルバムがたくさん出て、ブームなりました。
德永さんの「VOCALIST」は、第6弾までリリースされていますが、まだ62歳、「VOCALIST 10」までいってほしいと思っています。
どういうことかというと、この「VOCALIST」シリーズが2、3、4と出すたびに、昔のアルバムも売れていくんです。で、累計するともうミリオンをとうに超えているわけですが、これは「あ、こういう山の登り方があったのか」と改めて気づかせてくれました。
かつての吉田拓郎さんもそうですが、自作で歌っている方がボーカリストに専念したとき、一つのエンジンでも十分に快適な走行することを証明するという、鮮やかな例でしたね。この後、德永さんに続けとばかりに、男性の歌だけを歌う女性アーティストのアルバムがたくさん出て、ブームなりました。
德永さんの「VOCALIST」は、第6弾までリリースされていますが、まだ62歳、「VOCALIST 10」までいってほしいと思っています。
ジェンダーのねじれが生み出す色気
僕がEXILEに提供した「Ti Amo」を德永さんがテレビ番組で歌ってくれて、それがYouTubeで何百万回と視聴されました。改めて、女性の言葉で書いた歌詞を彼が歌ったときの特別な化学反応を僕も感じました。歌舞伎の女形のような、ジェンダーのねじれが生み出す色気っていうんでしょうか。その先駆者として、これからも歌い続けてほしいと思います。
この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう