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「見えない」を強みに~現役選手が語る5人制サッカーの魅力~

暮らし
8月24日に開幕した東京パラリンピックの競技種目のひとつ「5人制サッカー」は視覚障がい者がプレーヤーとなる、ブラインドサッカーだ。見えないボールを追ってゴールを狙うため、選手たちは日夜どんな練習をしているのだろうか?RKBラジオの朝の情報番組『櫻井浩二インサイト』で、日本ブラインドサッカー協会の職員で、クラブチーム「ソイエ葛飾」の選手としても活躍している、増田周平さんに話を聞いた。

 

宮脇憲一アナウンサー(以下、宮脇):種目としては複数あるんですよね?

 

増田周平選手(以下、増田):視覚障がい者のサッカーは、ブラインドサッカー(5人制サッカー)とロービジョンフットサルという2種類があります。アイマスクをする・しない、ボールの音が鳴る・鳴らない、壁がある・ないといった違いがあります。視覚障がい者といっても、一人一人見え方が違うので、それぞれの得意なプレーがあります。ロービジョンフットサルの場合は、その特技を生かして、チーム編成を考えます。

 

宮脇:見えない中でサッカーをするのは、どんな感覚ですか?

 

増田:プレーしている自分のことを自分でもすごいと思うのですが、見えていない中でドリブルやパスがなぜできるのかよく聞かれます。それはやはり「練習」です。この練習の中で、足の裏でボールをタッチして、ボールの感覚をつかんでいったり、選手同士やサポーターとの声のかけ合いなどを打ち合わせたりして「味方はここにいてね」というフォーメーションを大事にしていく中で、皆さんがすごい!と思うブラインドサッカーになっているんです。

 

宮脇:増田さんの見え方は?

 

増田:今、私の視力は0.3あり、眼鏡やコンタクトをすると1.0見えます。しかし、周りを見る力である「視野」が95パーセント欠けている状態です。5円玉や50円玉の小さな穴からずっと覗いている感覚です。日常生活の中では白杖をつくことはありませんし、見えている人に協力してもらって危ない時や段差があることを確認してもらっている状況です。

 

宮脇:ブラインドサッカーとはどこで出逢ったのですか?

 

増田:視覚障がい者が通える大学に入学し、そこで寮の先輩から「一緒にやらないか?」と声をかけてもらったことがきっかけです。高校時代まではテニスをしていましたが、そのころから徐々に視野が狭くなって、それが原因でけがをするようになり、大好きなスポーツから離れていました。しかしブラインドサッカーはみんなアイマスクをして、視力や視野関係なく行えるスポーツで、新鮮で面白いと思いました。しかも、頑張れば誰でもうまくなれる競技なんです。全盲の人は、ボールを蹴る、パスをするという動作から覚えなければならないのですが、一方で、空間認知や声を聴き分ける力がとても発達しているので、声を聞いただけで、味方・敵が分かったり、音で障害物との間隔が分かったりします。逆に少し視力が残っている人は、耳の力をあまり使ってこなかったので、敵の場所が分からなくて怖かったという声もあります。どちらも練習を積み重ねれば克服できます。

 

宮脇:日本代表のメダルの可能性は?

 

増田:私は将来パラリンピックや国際大会に出場するための選手を育成する「ナショナルトルセン」のメンバーで、今回のパラリンピック代表選手と練習試合をする機会がありました。「もしかしたら勝てるかも」と思っていましたが、パラリンピックが近づくにつれてボールが抜けないし、取れないということがあり、私のチームは負けてしまいました。代表選手たちはそれだけたくさん練習して技術を磨いているのだと思いました。それと、今年開催されたワールドグランプリという国際試合で、日本代表は初めてメダルを獲得しました。それらを考えると日本のメダルは近いと思います。僕もパラリンピックに出られるようにもっと頑張らなければ、と思いました。

 

見えない中でも力強くプレーする選手たちの活躍を見届けたい。

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