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プノンペンの奇跡 ~北九州が“水”を変えた~

カンボジアの首都プノンペンの水道水は、蛇口をひねればそのまま飲める水が出る。世界最高水準といわれる、日本の水道水と同じレベルだ。

わずか10数年で成し遂げられた、劇的な水環境の変化は「プノンペンの奇跡」と呼ばれている。「奇跡」を起こしたのは、水道技術で100年の歴史を持つ、北九州市から派遣された職員たち。浄水場には日本の技術が惜しみなく導入された。また、盗水や漏水を監視するモニターは、かつて北九州市で使われていた機器が移設された。今では、プノンペン水道公社の職員がカンボジア国内の他の街の水道事業者に経営指導を行うまでになっている。

さらに、北九州市は官民一体となって「海外水ビジネス」も始めた。東南アジアの都市と水道事業のコンサルティング契約を締結したのをはじめ、民間企業も浄化装置を海外に設置するなど、着実に成果をあげている。

なぜ、北九州市は「海外での水道支援」に乗り出したのか?そこには、かつて北九州市が抱えていた大きな問題を克服したことが背景にあった。
<取材先データ>
北九州市上下水道局海外事業課
住所:北九州市小倉北区大手町1-1
電話:093-582-3111
HP:http://www.city.kitakyushu.lg.jp

取材後記

「水道局の職員は、苦情が寄せられることはあっても、褒められることはない」北九州市上下水道局の職員が取材で漏らした一言です。日本の水道は24時間飲める水が出るのが当たり前のことで、何らかの理由で断水したり、濁った水が出たりしたときには利用者からのお叱りを受けてしまう。

一方で、カンボジアなど海外で技術・経営指導に派遣された職員たちが体験したのは、家庭にきれいな水が出る水道が引かれ、感謝する住民たちの声。そして、真剣な表情で学ぼうとしている現地の水道局員たちのまなざし。「プノンペンの奇跡」が起きた背景には、「感謝されること」が派遣職員のモチベーションを高め、言葉や文化の壁を克服できたことも大きかったのだろうと思います。

北九州市は、官民一体となって「水ビジネス」を世界じゅうに展開しています。日本が高い技術力を誇る「水」の分野で、世界の人々を幸せにする場面に、これから何度出会えるのか?取材する私たちもとても楽しみです。
RKB毎日放送 宮岡 朋治

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