PageTopButton

岸田首相も所信表明演説で訴えた“憲法改正に向けた議論の活発化”とは?

岸田文雄首相は12月6日の所信表明演説で、憲法改正に向けて、国会議論の活発化と国民の理解を深める必要性を訴えた。「憲法は変える・変えないことよりもまず知ること」--RKBラジオ『櫻井浩二インサイト』に出演した大阪芸術大学客員准教授の谷口真由美さんに聞いた。  

「好きな条文、ただし九条以外で」あなたは答えられる?

改憲・護憲の前に、まず知憲でしょう。知らんものを変えるとか変えへんとかっていう議論をするの、おかしくないですか?憲法って前文と103条しかないんです。

でも学校で習うのって、前文と第一条の象徴天皇制と国民主権、第九条の平和主義。あとは基本的人権の尊重を少し、くらいじゃないでしょうか。後ろの方、第九〇条以降って、習わないままでしょう?

私は、みなさんに「推し条文」を聞くことにしているんです。「好きな条文、ただし九条以外で」って。そうすると大抵、答えられない。

憲法は大きな一つの物語。一部を変えると全体のバランスが崩れる。

憲法には一つの流れがあって、いわば大きな物語なので、そのうちの例えば9番目の話を変えたり足したりするということは、全体の物語のバランスどうなりますか?ということになります。

九条でいうと、前文にも平和主義が書かれています。ということは「前文はどうしますか?」っていう話になりますよね。いろんなところが絡んでくるから、1個だけをいじるっていう議論そのものが、すごく雑で乱暴やということです。

自衛隊=軍隊として国民が認識するか議論を

安倍元首相は自衛隊を憲法に明記すべきだと主張していましたが、先に軍隊を持つ国なんだということを認識した上で議論しなきゃいけないと思います。

安倍さんは首相在任中に「自衛隊は海外では軍隊ですよ」という発言をしています。ということは、海外に派遣された自衛隊は「日本の軍隊が来た」と思われている。それを日本の中でどれだけの人が認識してるかですよね。

災害救助に行ってくれるからって、自衛隊のことをサンダーバードのように思っていませんか?

困ったときに出動してくれる、何かそういう部隊やと思ってる方、結構いらっしゃるじゃないすか?

「そんな自衛隊の人たちが虐げられてるからかわいそう。だったら憲法を変えよう」みたいな言い方する方もいらっしゃるんですけど、誰も虐げてない。

「軍隊になるかならないか」つまり、戦力を持つか持たないか、日本が戦争する国になるかどうかっていう大きな岐路を議論しなきゃいけないんですよ。だから憲法に自衛隊を明記するということは「日本が軍隊を持った方がいいんだ」という決断を、国民がするかどうかっていうことだと思うんです。

「軍隊はあった方がいいよね」っていう人もいるし、一方で、中東ではタリバンでも「日本の自衛隊は自分たちを攻撃しない」と言われてきた。それが実は外交的にはすごくプラスの評価で、国と国との交渉で間に入れる役割を担えるんです。

そういう意味で日本の存在感ってすごく大きい。私は2019年にイラクのクルド人自治区に行ってきたんですけど「日本の兵器で自分たちが攻撃されたことがない」と言われました。

国際社会の中で、取らなきゃいけない実利は何かということを、いろんな角度から議論するべきだと思うんですね。

憲法を自分事としてとらえられるかどうか

関心持って議論することは悪いことじゃないので、大いに議論すべきだと思うんです。日本が取るべき方向性をどういうふうにするかっていうのは、皆さんが自分ごととして捉えられてるかどうか。

日本国憲法に「日本国民は」って書いている主語を「私は」にしたり、自分の名前入れたりして読むと、全部述語とか動詞は自分にかかってくるんで、意味がよくわかってきます。「憲法は自分事」として捉えるということからやらんとあかんのちゃうかなって思います。

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう