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食卓に届け!幻の千年鯛

 

鹿児島県の薩摩半島と大隅半島に挟まれた錦江湾。火山が育んだ豊かな海だ。養殖が盛んで、特にカンパチは生産量日本一。

 

垂水市の養殖会社「康秀」、社長の和田康志さん(36)はこの錦江湾で今、変わった魚を養殖している。淡い赤色が目をひく千年鯛。天然物は高値で取引され、「1000年に1度しかとれない」と言われる幻の魚だ。

 

養殖のきっかけは新型コロナ。飲食店の営業自粛で魚が売れず、売り上げは6割にまで落ち込んだ。「このままではダメだ」。起死回生の一手として選んだ魚種が「千年鯛」。希少性が高いため学術的な調査が進まず生態は謎に包まれてきた。

 

特に何を餌にしているのかがわからず、養殖は困難だった。「マダイのエサを与えたが成長しなかった」と和田さん。しかし、10種類以上のエサを試し、2年半かけてようやく出荷にこぎつけた。

 

研究機関の調査によると、うまみや甘みを構成する成分のアミノ酸が他の魚に比べて圧倒的に多い事もわかった。まだ出荷量は少ないが、大阪の百貨店で販売されると売り切れてしまうほどだ。

 

「これだけおいしい魚、日本で広めたい」。幻の魚を食卓に届けようと奮闘する若き社長を追う。
 

 

<取材先データ>  
康秀

出演者:和田 康志 代表取締役

住 所:鹿児島県垂水市海潟694-4

TEL0994-32-2706

HPhttps://kousyuucorporation.net/

取材後記

 

私は釣りが趣味だ。基本、狙うのはイカだが、仲間のほとんどは鯛。彼らが「いつか釣ってみたい」と口にするのが幻の魚「千年鯛」。どんな魚?検索すると「1000年に1度しかとれないことで千年鯛」、「高級魚でおいしい」ということにも興味がわき、さらに調べると「鹿児島で養殖に成功」との記事。これは取材するしかない。

 

養殖する垂水市の「康秀」を訪ねると、スタッフはほとんどが20代の若者たち、代表の和田康志さんも36歳という若さだ。日本の漁業就業者は減少傾向と聞いていたので意外。養殖場で初めて目にした「千年鯛」。赤く淡い体色が想像以上に美しく印象に残った。
 

料亭で炙った刺身を試食すると、今まで食べた魚にはない上品な甘みが広がる。特に塩で食べると魚本来のうまみを感じられた。味を分析してもらった博士が言う「イセエビに近い」という言葉に納得。

 

しかし、幻の魚と呼ばれるほど数が少ないため、学術的な調査が進まず生態が謎に包まれている。特に食べてエサがわからないのは、養殖にとって致命的だ。実は、先に養殖を始めた県外の会社では、冬の間にかなりの数が死んでしまったそう。垂水市で養殖に成功した背景には、和田さんの探究心はもちろん、温暖な錦江湾ならではの地の利もあるのだろうと取材しながら感じた。

 

中国ではお祝いの席で赤色の魚が好まれるという。一時期は円安でエサの高騰に苦しんだ和田さん、今度は円安をチャンスに変えて世界に「千年鯛」を売り込むことを模索中だ。


     (MBC南日本放送 中靍 崇大)

 

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