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五輪を政治と切り離すには「国家元首に反戦宣言求めよ」玉木正之が秘策

北京冬季五輪の外交的ボイコットをめぐり、IOCは「五輪とスポーツの政治化に断固として反対する」との共同宣言を出した。しかし、彭帥選手の失踪問題で、IOCは中国との政治的なつながりを世界に示してしまっている。五輪と政治を切り離す方法はないのか?スポーツ文化評論家の玉木正之氏がRKBラジオ『櫻井浩二インサイト』で“画期的方法”を提唱した。  

歴史的に見ると「オリンピックと政治は切り離せない」

よく言われますよね「オリンピックと政治を切り離せ」とか「スポーツと政治を切り離せ」って。なぜ切り離せられないんでしょう。ということでいろいろ考えてみました。そうしたら、面白いことがわかったんです。「オリンピック憲章」の中に「開会式の項目」というものがあって、そこには「オリンピックの開会宣言は国家元首が行う」と書いてあるんです。おまけにその国家元首を、IOCの会長と組織委員会の会長がスタジアムで出迎えて、貴賓席まで案内する、なんてことまで書いてあるんです。オリンピックというのは“都市”がやるんでしょ。それなのになぜ、国家元首が突然出てくるのかなと思って調べてみたところ、オリンピックは国家元首がいろいろと口出しをしてきたという歴史が第1回大会からあることが分かったんです。

 

クーベルタン男爵(近代オリンピックの父)は、そもそもパリでオリンピックを開きたかった。ところが、ギリシャのゲオルギオスⅠ世という国王が「オリンピックはギリシャで開かないとおかしいんじゃないか」と言い出し、お金を用意した大船舶王と一緒にアテネで開催することを決めてしまったんです。第2回大会はパリ開催でしたが、「もうオリンピックなんて知らないよそんなの」と、今度は政治的に完全に無視されてしまい、“万国博覧会の余興”としての開催になりました。第3回はアメリカですが、こちらもセオドア・ルーズベルト大統領が、開催地はシカゴで決まっていたのに「セントルイスがフランスからルイジアナ州を得た100周年記念で、万博もあるから、そこでやりましょう」と言い出したんです。

 

だから、国家元首をちゃんとまつりあげましょう、ということになったんでしょう。それでも「開会宣言だけで、他のことには口出ししないで」というように収めればよかった。しかし、そこへ登場したのがヒトラーです。彼は国家元首としてナチス式の敬礼をしながら「オリンピックは俺のものだ」みたいな宣言をしてしまいました。オリンピック憲章はその名残でしょう。

国家元首に「オリンピック精神」を語らせてみては?

来年は習近平・中国国家主席が関わることになります。政治とオリンピックの関係っていうのは、もうズブズブ。はっきり言いますと、中国共産党書記長という、大スポンサーの企業を支配している人物でもあるわけですから。さらにIOCの副会長も中国人です。これで「政治とスポーツは関係ない」っていうのは無理がありますよね。

 

政治を持ち込ませない秘策があります。IOCはあらゆる差別、そして戦争に反対しています。ならば、国家元首に開会宣言だけではなく、反戦宣言もやってもらったらどうですか?「あらゆる人権弾圧に反対します。これがオリンピック精神です」と習近平氏が言ったら、素晴らしいですね(笑)もし本当に言ったら西側諸国は「本気か?」という感じになるんでしょう。でも、オリンピックの開会式ですからね。「オリンピックの精神をオリンピック開催国の元首は言ってください」と、バッハ会長は習近平氏に迫ったらどうですかね。それが、スポーツと政治を切り離すきっかけになればいいと思います。

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