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SDGs 韓国・済州島の大自然に異変~脱炭素に挑む

ニュース
<リード>
世界で急速に進む「脱炭素」の政策やビジネスを特集でお伝えしています。
4回目は、お隣・韓国の動きです。地球温暖化の影響が顕著になり危機感が高まる中、脱炭素の取り組みが進められています。
JNNソウル支局の取材です。

<VTR>
●記者リポート
「韓国政府も2050年までに、二酸化炭素の排出を実質ゼロにする“炭素中立”(カーボンニュートラル)を目標に掲げています。その先進地が、九州の西にある済州島です。済州で進む環境異変と温暖化対策から九州と同じ問題が見えてきました」

韓国南部の済州島。
島を囲む海は、リゾートとして人気なだけでなく、ユネスコの無形文化遺産に指定されている「海女」の潜水漁の漁場となっています。
しかし、今ある異変に直面しています。

●インタビュー

大半が日本に輸出されているサザエ、ここ数年は水揚げ量の減少が続いています。

●記者リポート
「済州の海はどうなっているのか、これから潜って確かめてきます」

海底を見てみると、カラフルなサンゴの仲間に覆われていました。
この海に35年間潜ってきたダイバーは、ここ数年「海が大きく変わった」と感じています。

●インタビュー

5年前に撮影された映像では、びっしりと生い茂っていた海藻。
同じ場所に潜ってみると、海藻は消え、より暖かい海にいるはずのサンゴや魚の姿が目につきました。
温暖化の影響で、海水温がこの50年でおよそ1℃上昇、エサとなる海藻が減少し、サザエの数が減っているのです。

異変が起きているのは海だけではありません。
世界自然遺産に登録されている漢拏山(ハルラサン)。
韓国の固有種で高山に分布するモミの一種「チョウセンシラベ」が生えていますが・・・

●記者リポート
「本来であれば、冬場も緑の葉が生い茂っているのですが、葉が落ちてまるで白骨化したような木が一面に広がっています」

絶滅危惧種に指定され、標高1700メートル付近で目立つのは枯れた木ばかり・・・

●インタビュー

長年、調査してきたキムさんが2009年に撮影した写真には、チョウセンシラベの緑の森が広がっていましたが、今は多くが枯れています。
この一帯では、10年あまりで半分以下に激減しました。
背景にあるのは、やはり温暖化。
済州では、この50年で平均気温が1.3℃上昇し、積雪日数も半分以下に減少しています。

●インタビュー

雪が減って土壌の乾燥化が進んでいることに加え、強い台風の襲来が相次いで、倒れる木も増えているということです。

こうした危機を前に済州島は2013年、韓国でいち早く脱炭素社会を目指す「カーボンフリーアイランド」構想を掲げました。
2030年までに、すべての電気を再生可能エネルギーでまかない、車の75%を電気自動車に置き換えるというものです。
補助金を出して、名物のミカン畑を太陽光発電所に転換。
さらに、強い風をいかした風力発電の設置に力を入れて、脱炭素社会の実現を目指しています。


<スタジオQ&A>
Q済州で起きている問題に九州との共通点は?

済州は九州の西側にあり、気候や風土も共通している部分がたくさんあります。
九州北部の海でも温暖化の影響で海藻が減る一方で、南の生き物が増えていますが、潜ってみてみると済州の海でも全く同じことが起きていました。

一方、陸上でも固有種の木が次々と枯れているのですが、実はこの名産のミカンも温暖化の影響で、今世紀中に栽培が難しくなるともいわれています。そうしたこともあり、危機感も高まっていると感じました。

Q済州では、どんな対策に取り組んでいるんでしょうか?

済州島の脱炭素社会に向けた取り組みの柱は、再生可能エネルギーと電気自動車の導入を進めることです。
ただ、2020年時点での目標は、電気自動車が10%、再生可能エネルギーが44%だったのですが、現状は5%と16%にとどまっています。2030年での脱炭素=カーボンフリーという目標の達成は、難しいのではないかとみられています。
済州に行くと、ナンバープレートが青の電気自動車を韓国本土よりよく見かけましたが、購入時の補助金が削減されていることもあり、電気自動車は予定通りに普及していません。

Qなぜ再生可能エネルギーの導入が進んでいないのでしょうか?

済州は、風が強いため風力発電に適していて、特に海の上に風車を設置する洋上風力発電への期待が高くなっています。ところが、漁場の変化を心配する漁業者の反対などで設置が進んでいません。
さらに、瞬間的に電気が余る問題も起きています。風が強い日などは、使う分以上に発電してしまっているのです。今後、風力発電などがより増えれば、2034年には年間の半分で電気が余ってしまうとの試算もあります。対策として、韓国本土へ電気を送る送電網の強化や電気をためる蓄電システムの開発などを進める方針です。
九州でも、晴れた日には太陽光による発電が増えすぎて、電気が余る問題が起きています。済州で問題をどのように解決していくのか、九州にとっても大いに参考になりそうです。

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