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【特集】福岡に避難のウクライナ親子-在留資格の課題

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ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1か月。3歳の娘の手を引いてウクライナから福岡県に避難してきた女性がいる。新たな生活の一歩を踏み出したものの、戦地に残る両親と夫を気遣わない日はない。政府はウクライナからの避難民を90日間の「短期滞在」で受け入れている。ただ、この資格では、健康保険にも加入できなければ、働くこともできず、安定した生活は期待できない。親子は、在留資格の切り替えを申請した。

3歳娘を連れて1万キロ避難…親子が直面した課題

ウクライナ人のエカテリーナ・チャプリンシカさんと3歳になる娘のアナスタシアちゃん。24日朝、福岡市博多区にある外国人を支援するNPOを訪ねた。

「特定活動という、1年間働きながら生活ができる在留資格があります」(NPOグローバルライフサポートセンター)
今月16日、関西空港。福岡県田川市で暮らす姉と再会し、抱き合って喜びを分かちあうエカテリーナさんの姿があった。

「無事に来てくれて安心しました」(姉の中島スピツラーナさん)
それから1週間あまり。初めて訪れた国。自然豊かで文化を大切にする国民性が印象的だっという。その一方で、言葉もまったく分からない親子を待っていたのは、健康保険がなく、働くこともできないという現実だった。
政府は、ウクライナからの避難民をまずは3か月の「短期滞在」で受け入れている。これを、就労や健康保険に加入できる1年間の「特定活動」の資格に切り替えることを認めたのは先週のことだった。
「更新はできるはず。それを思いながら、毎日の生活を安定させていく、そっちの方で頑張っていただければ」(外国人支援のNPO)
当面は、田川市にある姉夫婦の自宅に身を寄せることにしているが…。
「妹はやっぱり仕事したいと。できればアナスタシアちゃんを幼稚園に連れて行きたい。これからほかの子供たちと会えないと困ると思います。通常の生活に戻れるというかそれを目指してますね」(姉の中島スピツラーナさん)
姉の中島スピツラーナさんは、ウクライナに残るエカテリーナさんの夫が今月2日に自宅で撮影した映像を見せてくれた。ミサイルが着弾したとみられる激しい音と閃光が映っている。総合病院に被害が出て、赤ちゃんを含む大勢が死傷したという。
首都キエフから140キロほど離れたウクライナ西部のジトーミル。エカテリーナさんの夫と両親が留まるこの場所には、軍の基地があり、連日のように激しい攻撃を受けているという。
「夫は心が強いから。みんながウクライナが勝つと思っているから」(エカテリーナさん)

23日のゼレンスキー大統領の国会演説については…

「日本人がどう受け止めたかは分からないが、奮闘する大統領は誇らしかった」(エカテリーナさん)
エカテリーナさんを日本に呼び寄せたのは、9歳上の姉・中島スピツラーナさんだ。夫や両親と離れたくないと避難をためらうエカテリーナさんを「子供の未来を奪ってはいけない」と説得した。エカテリーナさん親子は、数日分の着替えだけを持って11日間かけて、およそ1万キロ離れた日本にたどり着いた。娘には「海外旅行だ」と伝えている。身の安全は確保できたものの、故郷に残した家族の安否を気遣わない日はない。
「愛してるって、早くこの戦争が終わらせたい。早く一緒にいたい」(エカテリーナさん)
この日、親子は入管を訪れ在留資格の切り替えを申請した。

「今の状態でずっと家に引きこもっていると、やっぱりいい精神状態にはないと思うんですよ。在留資格を整えると、前を向いて歩けるっていうところの一歩に必ずなるはず」(NPOグローバルライフサポートセンター・山下ゆかり代表理事)

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