ブルーカーボンオフセット~海藻の力で脱炭素

多くの自治体や企業がいま目指している「カーボンニュートラル」は、二酸化炭素の排出量を減らして植物が吸収する量に近づけ、実質ゼロにするという考え方です。実現するには排出量の削減と、植物を増やすことで吸収量を増加させるやり方があります。福岡市の博多湾では、行政や企業、それに子供たちが協力して、二酸化炭素を吸収する海の生物を増やす取り組みを進めています。

「海のゆりかご」アマモ

福岡市東区の和白干潟。岸から数百メートル進んだところで、近くにある高校の科学部の部員たちがボトルから草のようなものを取り出しました。

「こちらはアマモという海草です。生徒たちが手作業で一つ一つ干潟に植え付けていきます」(RKB小畠健太)

作業の途中で誤って苗を落としてしまいました。

「遊びとちゃうねんぞ。奈多小の小学生の頑張りを無駄にする気?」(城東高校科学部進藤大雅さん)

手作業で植え付けられていくこのアマモの苗は、同じく東区にある奈多(なた)小学校の児童が種から発芽させ、大切に育ててきたものです。奈多小学校は毎年、子供たちが育てたアマモの苗を、近くの海に植える活動をしてきました。

「小魚とかがすみかになるように大きく成長してほしいと思います」(中村優里さん)
「学校の一人一人がそういう活動が出来て、自分が一つでもやることで、地球環境が少しでも良くなるって言うことがうれしいです」(向野心菜さん)

アマモは成長すると、魚の産卵場所やすみかになるため、「海のゆりかご」とも呼ばれます。福岡市は2005年から、博多湾の環境保護のため、アマモを増やす取り組みを進めてきました。

「気候変動が注目される前、生物保全、この魚たち、海の生き物が住みやすい環境を作ろうというところから始めておりまして」(福岡市みなと環境政策課・久原明子課長)

アマモの効果は、魚のすみかになるだけではありません。陸上の森林などが吸収する炭素=グリーンカーボンに対し、アマモのような海草や植物プランクトンなど、海の生物が吸収する炭素をブルーカーボンと呼びます。グリーンカーボンよりブルーカーボンの方が総量が多いという研究もあり、脱炭素の機運が高まる今、注目されているのです。

福岡市は年に1回“吸収量”を販売

福岡市はおととしから博多湾の海の生物による二酸化炭素の吸収量を数値化して販売する「ブルーカーボンオフセット」の制度を開始しました。クレジットと呼ばれるこの吸収量を0.1トンあたり800円で販売し、売り上げをアマモ場の整備など、生物のさらなる育成に役立てる仕組みです。

一方、企業や市民は、クレジットを購入することで、自分たちの努力や工夫では減らせない二酸化炭素の排出量を相殺し、脱炭素の取り組みとしてアピールできます。

「事業活動としての脱炭素も併せて大事だということがグローバルに議論されている。いずれこの流れは中小企業にも求められてくるだろう」(エコワークス・小山貴史社長)

こう話すのは、福岡市に本社を置く住宅メーカー、エコワークスの小山社長です。モデルハウスや事務所ではすでに脱炭素を達成していますが、住宅の建築現場で使う車両の排出分などの自社の努力では減らせない分をクレジットで賄うため制度に参加しました。

「環境意識の高いお客様が確実に増えている。こういう取り組みをしている会社を消費者の方が選んでいただける社会に確実に向かっていると実感しています」(エコワークス・小山貴史社長)

福岡市が年に1回、公募で販売するブルーカーボンオフセット制度のクレジットは、2年連続で完売。今後も定期的に募集を続ける方針です。

「和白干潟全体をアマモ場にして、楽しく遊べる干潟になってほしいですね」(城東高校科学部・進藤大雅さん)

海の生き物を育み、脱炭素にも貢献する力を秘めたアマモ。アマモ場の整備を通して、博多湾の環境保護とブルーカーボンの拡大を目指す活動が、未来を担う世代の手で続けられています。

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