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米大学で「サスティナビリティ」が新しい学問に~多様な学生集まる

いま、「SDGs(Sustainable Development Goals)」は世界の合い言葉。アメリカの名門・スタンフォード大学に70年ぶりにできたという新学部も、「サステナビリティスクール」だ。民放記者を辞め、昨夏から同学部でSDGsについて研究している尾川真一さんが、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で報告した。

スタンフォード大学に新学部「サステナビリティスクール」

スタンフォード大学に70年ぶりに新しい学部ができました。ミリオネア(大富豪)のジョン・ドアさんからの多額の寄付で作られたため、彼の名を付けて「スタンフォード・ドア・サステナビリティスクール(Stanford Doerr School of Sustainability)」というのが正式名称です。

これまでエンジニアリングスクール(工学部)やロースクール(法学部)、ビジネススクール(経営学部)などに散らばっていた環境関連を寄せ集め、一つの学部として新たに立ち上げています。たとえば、かつてはロースクールの授業だったものが、今期からはロースクールとサステナビリティスクールの共同授業として行われています。

私は「水素」と「水ビジネス」それから「カーボンキャプチャー(炭素回収)」の3科目の授業を受けています。

二酸化炭素を地中深くに埋める「炭素回収」

地球温暖化の一番の原因になっているのが二酸化炭素、温室効果ガスです。これを減らすため、二酸化炭素を排出するところからそれを回収して、貯蓄してしまおう、というのが「炭素回収」です。

たとえば、二酸化炭素を含んだ煙を出しているような工場に新たにプラントをつけて、そこで二酸化炭素を回収して、石油やガスが埋まっているのと同じように、地中の奥深くに埋めてしまおうという取り組みです。

カーボンニュートラルに向けての取り組みで、いちばんいいのは削減することですね。火力発電で作っていた電気を、太陽光に置き換えることでゼロにするといったものです。でも、鉄鋼業とか化学業では、どうしても物を作るプロセスで二酸化炭素が出てしまいます。こうした産業では、よほどの技術革新がない限り二酸化炭素をゼロにすることはできません。鉄を使わないわけにはいかないので、出てきた二酸化炭素を回収するという発想になります。それが炭素回収です。

学部の垣根を越えて学生が集まる

サステナビリティスクールとパッケージ化して、気候変動に関連する全ての分野の授業を揃えたのは、すごくわかりやすいですね。私は理系畑ではないので、炭素回収の知識はもともとありませんでした。でも、このスクールの授業を調べている中で、面白そうだなと思って受講しました。

この学部の授業でもう一つ面白いのは、学生たちに多様性があるということです。先生も今期が初めてなので「みんなはどこの学部から来ていますか?」と手を上げさせるんですが、これが、ビジネススクール、ロースクール、そして理系のエンジニアリングスクール、それぞれ3分の1ずつぐらいできれいにバランスが取れているんです。

学問の体系を超えてバックグラウンドが違う人たちが、同じクラスで授業を受けるというのは、すごく新鮮だと感じています。

気候変動はひとつの学問分野で解決できない

サステナビリティスクールの目的の一つは、新しくビジネスを作っていくことだと感じています。そもそも気候変動がなぜ今問題なっているかというと、ずっと解決しなかった問題が後回しにされて、こうして顕著になっているからなんです。

この問題、ひとつの学問分野だけでは解決できないと、スタンフォード大学は考えています。だから、さまざまな学部に分散していたものをまとめたのでしょう。ここに集まった人たちが、それぞれのバックグラウンドの強みを合わせて、一つのチームとして新しいビジネスを作るというのが、スタンフォード大学の大きな目的ですね。

イノベーションが起きる仕組みがある

秋から新学期が始まります。そこでまず行われるのは「気候変動とは何か」をというジェネラルな授業。それが冬になると、今度はみんなで何かアイディアを出しましょう、というグループプロジェクトの授業が用意されています。そのアイディアの発表会では投票があり、そこで選ばれると、翌春には大学から予算がついたり、学外からプロの投資家がメンターの役割を果たしたりして、フィードバックをもらえるような仕組みになっています。

シリコンバレーのいいところは、スタンフォード大学という、一流の学生が集まるところからアイディアが生まれることと、GoogleなどGAFAに代表される大きな企業もあり、さらに一流の投資家もいるところです。

さらに、過去の卒業生で成功者もいますよね。スタンフォード大学を出て億万長者になったような人たち。彼らが定期的に講演に来て、「僕もそこの席に座って勉強をしていたよ」というような話をしていきます。そうしたら学生たちは刺激を受けて本気になりますね。

こっちに来て思うんですが「身近に感じる」ということが一番大事なのではないでしょうか。「自分もできるんじゃないか」と思える、思わせてくれるような環境ですね。学生同士も、学生と教授も、それから大学と外部もお互いに刺激をしあえるような環境で、イノベーションが生まれてくるんだなと感じています。

スタンフォード大学客員研究員・尾川真一さん

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