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想像を超える“捕虜虐待”への怒り、法廷を埋め尽くす被告たち~28歳の青年はなぜ戦争犯罪人となったのか【連載:あるBC級戦犯の遺書】#8
日本大学の高澤弘明さんがアメリカ国立公文書館で入手した写真。藤中松雄の姿があった「石垣島事件」を裁いた横浜軍事法廷は、被告となった大勢の元日本兵で傍聴席まで埋め尽くされていた。殺害された米兵3人に対して起訴されたのは46人。捕虜虐待に対する米軍の怒りは、「日本人の想像を超える」ものだった―。
「石垣島事件」横浜軍事法廷の傍聴席まで埋め尽くす元日本兵
1947年12月3日に撮影された横浜裁判の法廷写真では、被告人席だけでなく傍聴席まで囚人服姿の元日本兵が埋め尽くしている。藤中松雄が戦犯に問われた「石垣島事件」の被告は全部で46人。法廷の中をとらえた4枚の写真には、合わせて45人が写っていた。被告人の間には、通訳の姿もみえる。初公判が11月26日なので、裁判が始まってまだ日が浅い。判決は翌年の3月17日に言い渡された。約3か月半の審理が行われたということだ。
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弁護人の後ろにある被告人席の奥の列、左から三番目に座っているのが、福岡県出身の藤中松雄であることは、遺族の確認がとれた。しかし、高澤さんによると他の被告については、まだ手がかりがないという。
アメリカの第8軍がアメリカの捕虜に対する犯罪を裁いた
恵泉女学園大学の内海愛子名誉教授によると、「石垣島事件」が裁かれた横浜裁判には大きな特徴があるという。BC級戦犯はすべて「通例の戦争犯罪」として裁かれているが、具体的には「例えば捕虜を虐待したり、殺したり、住民虐殺をやったり、略奪をしたり、それから戦時性暴力も通例の戦争犯罪として裁かれる」という。
その中で、横浜裁判にかけられたのは、ほとんどが捕虜に関わるものだった。横浜軍事法廷を開いたのは、アメリカの第8軍だ。
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恵泉女学園大学・内海愛子名誉教授「ということは、日本の戦争犯罪一般が裁かれたのではなくて、法廷を開いたアメリカの第8軍にとって日本の戦争犯罪を裁きますから、捕虜虐待、それが裁判の中心になってきます。『アメリカの第8軍がアメリカの捕虜に対する犯罪を裁いた』、横浜裁判はそういう大きな特徴を持っています。300件以上裁判があります。半数以上が捕虜収容所に入れられた人に関係するもので、もうひとつ多いものは、爆撃機や戦闘機の搭乗員が落下傘で降下したり、搭乗機を撃ち落とされて捕虜になった人たちに関係するものです」
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この記事を書いたひと
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大村由紀子
RKB毎日放送 ディレクター 1989年入社 司法、戦争等をテーマにしたドキュメンタリーを制作。2021年「永遠の平和を あるBC級戦犯の遺書」(テレビ・ラジオ)で石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞奨励賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞審査委員特別賞、放送文化基金賞優秀賞、独・ワールドメディアフェスティバル銀賞など受賞。