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アニメで人気に火がついた「アライグマ」による被害が急増 狂犬病やエキノコックス症など感染症を媒介するリスクも

動物園などで人気者のアライグマですが、いま全国各地でその生息域を拡大し、アライグマによる被害が急増しています。アライグマを「優先防除対象」として本格的な対策に乗り出す自治体も出てきました。


◆約50年前にペットとして大量輸入
アライグマは、特定外来生物に指定されていますが、もともとは北米大陸を原産とする動物です。約50年前に、アライグマと少年とのふれあいをテーマにしたアニメ「あらいぐまラスカル」が放映されたことから人気に火がつき、日本にもペットとして大量輸入されました。しかしアライグマは気性が荒く、飼養されていたものが逃げたり捨てられたりして野生化。現在は全国各地でその生息域を拡大しています。


◆ペットが野生化し生息域を拡大
このうち福岡県では、2004年度にフルーツの里として知られる朝倉市で初めてその姿が確認されました。2022年度までに、60市町村のうち計50市町村で生息が確認されています。


◆農作物の被害額は約4億5600万円
アライグマはミカンの皮をむいて食べるほど手先が器用で、雑食性のため農作物にも被害が相次いでいます。農水省によると、2022年度の全国の被害額は、約4億5600万円にのぼりました。


◆問題は繁殖力の強さと感染症へのリスク
農作物への被害額はイノシシ(約36億円)シカ(約65億円)などの他の動物と比べると被害は少ないように見えますが、問題はその繁殖力の強さと感染症へのリスクです。アライグマのメスは満1歳から出産が可能で、平均3頭~4頭の子供を産むほか、狂犬病やエキノコックス症、重症急性呼吸器症候群(SARS)など、人に感染する様々な感染症を媒介している可能性があります。


◆福岡県は捕獲のための分析システム開発へ
こうした状況を受けて、本格的な駆除に乗り出す自治体も出てきました。
福岡県は去年6月、アライグマを「優先防除対象種」に決定。専門家たちの意見も踏まえて、完全排除に向けた防除計画を策定しました。

福岡県では、農作物への被害額が約2500万円と、8年前の3倍以上に増加。天井裏や床下に侵入されたり、糞をされたりするなどの生活被害も293件にのぼり、3年前の2倍以上に増えました。

防除計画では各地区で講習会を開いて、アライグマを駆除できる人を毎年約400人増やすなど捕獲体制を強化する方針です。また、来年度には捕獲情報をもとに捕獲を重点的に行うエリアや生息密度などを分析するためのシステムも開発する予定です。
福岡県は、「全国的に見ても被害は大きいほうではないが、このまま放っておくとあっという間に被害が拡大するおそれがある。手遅れにならないように早めに対策を行いたい」と話しています。

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