新型コロナの流行で感染対策が求められ、世の中の生活様式も変化していく中で、視覚に障害がある人とその人たちをサポートする盲導犬が、新たな困難に直面しています。一体何が起きているのか、実情を取材しました。
福岡市博多区で1人暮らしをする内田理保子さん(29)。内田さんは小学2年生のとき、脳に腫瘍ができる病気が原因で左目の視力を失い、中学生になると右目も見えなくなりました。それ以来、視覚障がい者用の杖を使っていましたが、おととしからは盲導犬のオウジと生活を共にしています。
●内田理保子さん「(オウジはどんな性格ですか?)すごく甘えん坊で食いしん坊です。今はもう一緒にいないと生活できないって感じですね」
マッサージ師の資格を持つ内田さんは、勤め先の高齢者施設がある東区まで通っていて、オウジがバスの乗り降りや歩行の補助をしています。この日、仕事終わりに訪れたのは、行きつけの定食屋です。
●味の正福 吉岡めぐみ社長「ほかのお客様と変わらず対応させてもらっています。熱いものは危ないので、どこに置きますよと必ず声をかけるようにしています」
オウジが目となり、周囲のサポートも得ながら日常生活を送る内田さんですが、新型コロナの流行が始まって以降、新たな困難に直面しています。そのひとつがアルコール消毒です。
●内田理保子さん「アルコールの場所は、やっぱりわからないです。場所もそうですし、形が手で押すタイプなのか足で押すタイプなのか、自動なのか分からないので」
また、感染防止のために、物に触れる機会をなるべく減らそうという風潮の中、様々な物を触って確認することが多い内田さんは、息苦しさを感じるようになりました。
●内田理保子さん「どうしても私たちは、どこかで触れないと生活が難しくて、きょうもスーパーで買い物するときに、これでいいですかと店員さんが手に渡してくださった。この大きさでいいですかと。ちょっと、周りの方からそれに対してどう思われているかは不安です。あの人いろいろ触っているけどとか思われているのかなと」
さらに、深刻な出来事もありました。2002年に施行された「身体障害者補助犬法」は、公共施設や飲食店、医療機関など不特定多数が利用する場所でも、盲導犬などの補助犬を受け入れるよう定めています。しかし、内田さんがオウジを連れてコンビニや居酒屋などに入ろうとした際、特に理由もなく入店を拒否されたことが何度もあったといいます。
●内田理保子さん「一方的に『動物は入れません』と言われました。ペットは断っていますと。ペットじゃないんです。盲導犬ですと言っても、なかなかその人が盲導犬を知らないのか分かりませんけど・・・、従業員の中に動物アレルギーの人がいるので、ちょっとごめんなさいと言われたこともあります」
日本盲導犬協会がおととし、ユーザー227人を対象にアンケートをしたところ、約4割が「受け入れ拒否を経験した」と回答しました。また、昨年度実施された別の調査でも、受け入れ拒否の事例が37件報告されました。このうち、飲食店よりも多かったのが医療機関の13件で、統計を始めた2005年以降で最多となりました。
九州盲導犬協会の中村理事長は、新型コロナへの対応で医療現場がひっ迫していることが、要因の一つだと指摘します。
●九州盲導犬協会 中村博文理事長「ユーザーさんが病院に行ったときに、サポートする人がいない。病院の人も人がいないから手が回らないという形で、これは一つ大きなストレスになっている」
一方で、過剰な衛生意識などが背景にあるとみられるケースも報告されています。
●調査報告から引用
「犬は土足だからコロナを持ち込むリスクが高いという理由で、多くの制限を課せられた」
「新型コロナワクチンの接種会場で、犬を離れた場所で待機をさせるのは心配だと伝えるも、担当医より『衛生上、診察室に盲導犬が入るのは好ましくない』との指示があった」
●九州盲導犬協会 中村博文理事長「盲導犬は、基本的に清潔に管理されていますので、普通の一般の方と同じように受け入れてもらえたらと。盲導犬ユーザーが困っていることは、病院に行くときにサポートが必要なこと」
福岡市城南区の「りょうすけ内科外科」は長年、視覚障がいがある患者を受け入れてきました。
●記者リポート「こちらの病院では、以前は入り口でスリッパに履き替える必要があったんですが、今は土足で中に入れるようになっています」
5年前に改装する際、盲導犬を連れた患者が安心して通えるよう、入り口をスロープにしたり手すりを取り付けたりと、設備をバリアフリーにしました。感染予防に気を配りながらも、ユーザーの目線になって盲導犬を知ることが必要だと院長は話します。
●りょうすけ内科外科 山口良介院長「人畜共通感染症(人と動物に共通する感染症)はそう多くないんですけど、そういうことも知らないことが原因じゃないか。盲導犬ユーザーを受け入れる側が、知識を増やし世の中に宣伝して、困っている人がいるから盲導犬は必要だという意識を高めることが必要だと感じます」
長引くコロナ下で、新たな苦悩を抱え孤立感を強める盲導犬ユーザー。生活様式が大きく変わる中で、社会が正しい知識と思いやりを持って接することが、盲導犬を必要とする人たちの支えになるはずです。
福岡市博多区で1人暮らしをする内田理保子さん(29)。内田さんは小学2年生のとき、脳に腫瘍ができる病気が原因で左目の視力を失い、中学生になると右目も見えなくなりました。それ以来、視覚障がい者用の杖を使っていましたが、おととしからは盲導犬のオウジと生活を共にしています。
●内田理保子さん「(オウジはどんな性格ですか?)すごく甘えん坊で食いしん坊です。今はもう一緒にいないと生活できないって感じですね」
マッサージ師の資格を持つ内田さんは、勤め先の高齢者施設がある東区まで通っていて、オウジがバスの乗り降りや歩行の補助をしています。この日、仕事終わりに訪れたのは、行きつけの定食屋です。
●味の正福 吉岡めぐみ社長「ほかのお客様と変わらず対応させてもらっています。熱いものは危ないので、どこに置きますよと必ず声をかけるようにしています」
オウジが目となり、周囲のサポートも得ながら日常生活を送る内田さんですが、新型コロナの流行が始まって以降、新たな困難に直面しています。そのひとつがアルコール消毒です。
●内田理保子さん「アルコールの場所は、やっぱりわからないです。場所もそうですし、形が手で押すタイプなのか足で押すタイプなのか、自動なのか分からないので」
また、感染防止のために、物に触れる機会をなるべく減らそうという風潮の中、様々な物を触って確認することが多い内田さんは、息苦しさを感じるようになりました。
●内田理保子さん「どうしても私たちは、どこかで触れないと生活が難しくて、きょうもスーパーで買い物するときに、これでいいですかと店員さんが手に渡してくださった。この大きさでいいですかと。ちょっと、周りの方からそれに対してどう思われているかは不安です。あの人いろいろ触っているけどとか思われているのかなと」
さらに、深刻な出来事もありました。2002年に施行された「身体障害者補助犬法」は、公共施設や飲食店、医療機関など不特定多数が利用する場所でも、盲導犬などの補助犬を受け入れるよう定めています。しかし、内田さんがオウジを連れてコンビニや居酒屋などに入ろうとした際、特に理由もなく入店を拒否されたことが何度もあったといいます。
●内田理保子さん「一方的に『動物は入れません』と言われました。ペットは断っていますと。ペットじゃないんです。盲導犬ですと言っても、なかなかその人が盲導犬を知らないのか分かりませんけど・・・、従業員の中に動物アレルギーの人がいるので、ちょっとごめんなさいと言われたこともあります」
日本盲導犬協会がおととし、ユーザー227人を対象にアンケートをしたところ、約4割が「受け入れ拒否を経験した」と回答しました。また、昨年度実施された別の調査でも、受け入れ拒否の事例が37件報告されました。このうち、飲食店よりも多かったのが医療機関の13件で、統計を始めた2005年以降で最多となりました。
九州盲導犬協会の中村理事長は、新型コロナへの対応で医療現場がひっ迫していることが、要因の一つだと指摘します。
●九州盲導犬協会 中村博文理事長「ユーザーさんが病院に行ったときに、サポートする人がいない。病院の人も人がいないから手が回らないという形で、これは一つ大きなストレスになっている」
一方で、過剰な衛生意識などが背景にあるとみられるケースも報告されています。
●調査報告から引用
「犬は土足だからコロナを持ち込むリスクが高いという理由で、多くの制限を課せられた」
「新型コロナワクチンの接種会場で、犬を離れた場所で待機をさせるのは心配だと伝えるも、担当医より『衛生上、診察室に盲導犬が入るのは好ましくない』との指示があった」
●九州盲導犬協会 中村博文理事長「盲導犬は、基本的に清潔に管理されていますので、普通の一般の方と同じように受け入れてもらえたらと。盲導犬ユーザーが困っていることは、病院に行くときにサポートが必要なこと」
福岡市城南区の「りょうすけ内科外科」は長年、視覚障がいがある患者を受け入れてきました。
●記者リポート「こちらの病院では、以前は入り口でスリッパに履き替える必要があったんですが、今は土足で中に入れるようになっています」
5年前に改装する際、盲導犬を連れた患者が安心して通えるよう、入り口をスロープにしたり手すりを取り付けたりと、設備をバリアフリーにしました。感染予防に気を配りながらも、ユーザーの目線になって盲導犬を知ることが必要だと院長は話します。
●りょうすけ内科外科 山口良介院長「人畜共通感染症(人と動物に共通する感染症)はそう多くないんですけど、そういうことも知らないことが原因じゃないか。盲導犬ユーザーを受け入れる側が、知識を増やし世の中に宣伝して、困っている人がいるから盲導犬は必要だという意識を高めることが必要だと感じます」
長引くコロナ下で、新たな苦悩を抱え孤立感を強める盲導犬ユーザー。生活様式が大きく変わる中で、社会が正しい知識と思いやりを持って接することが、盲導犬を必要とする人たちの支えになるはずです。
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