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国連の委員会が日本政府を審査!?谷口真由美「人権の理解深める機会に」

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国連女性差別撤廃委員会による日本政府の審査が行われている。人権がビジネスにも関わる国際情勢の中、誠実に対応してこなかった日本の政府と世論に国際社会から厳しい目が向けられている。法学者の谷口真由美さんは10月21日に出演したRKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』で、人権への理解を深めるために注目してほしいと語った。

女性差別撤廃条約で改正、成立した法律

国連の女性差別撤廃委員会がスイスのジュネーブで開催され、8年ぶりに日本政府のジェンダー平等の取り組みに対する審査が行われています。本来は4年に1回なんですが、女性差別撤廃委員会が抱えている案件が多すぎて、まとめて8年に1度、2回分審査するということになっています。審査した結果、改善のための勧告を行うというものです。

日本は1985年に女性差別撤廃条約を批准しています。実はそのときに改正された法律とか新しくできた法律があわせて2つあります。1つは男女雇用機会均等法の成立です。均等法第1世代と言われる方々がもうそろそろ定年を迎えます。

もう1つは、国籍法が改正されました。日本はそれまで、父親の国籍を重視していたんです。例えば日本国籍のお母さんとアメリカ国籍のお父さんがいる場合は、日本で生まれた子供でも直ちに日本国籍にならなかったということがあります。

母親は産んだ人なので、お母さんははっきりしているんですけど、「この人がお父さんである」ということの証明について民法には「母親の配偶者を父とみなす」と書いているんです。つまり、出生届を出したときに初めて父親が確定するということです。

それが国籍法改正によって、「お父さんお母さんのどちらかが日本国籍の場合は、子供は日本国籍になる」と変わりました。

その他にも、家庭科が男女必修になって、そのときに学習指導要領が変わりました。最近は家庭科と言わず生活という科目だったりしますが、生活に関わることというのは男女関係なく、ちゃんと履修しないと駄目ですよ、ボタン付けられなかったら困りますよね? ご飯作れないと困りますよね? ということで必修になりました。

男性と女性の機会は平等か

この女性差別撤廃条約は、いわゆる機会の平等だけではなくて、実質的な平等を求めています。「みんな誰でもスタートラインに立たせてあげるよ」というのが機会の平等ですけれど、例えば丸腰で何も武器を持たない人と、武器を沢山備えた人が戦いをしたらどうなるかというと、基本的には武器を持った人が勝ちますよね。

その「武器を持っている」というのは、最近でいうとリソース=資源とか、自分たちが持っている知識であったりとか、経験値であったりとか、先輩から教えてもらったことということになるんですけれども、武器がある人とない人、誰でも試合に参加できますよと言われたら、丸腰の人も来ちゃうわけですよ。

でも、勝ち負けというのは割とはっきりしていますよね。だから、スタートラインに立つときに必要な武器や、必要な物というのは付けてから行かなきゃいけないし、その資源を付けてもらえるか、持たせてもらえるかどうかに男性と女性で差がありませんか? ということが考慮されなければならないというのが女性差別撤廃条約のいうところなんです。

例えば今、30%以上女性の方を管理職にしなきゃいけないという企業も増えてきました。これは、すでにたくさん女性が働いているにも関わらず、意思決定に男性ばかりが参加していたら、女性の意思が反映されないことがあるので、意思決定の場に女性を入れましょうということも言われているからです。

グローバル社会の中で問われる日本の姿勢

ジェンダーギャップ指数という言葉がニュースで出てきますよね。世界各国の男女格差を示すものですが、日本は今年146か国中118位でした。下から数えた方が早いんですよ。日本は、平均寿命も長かったり、初等教育も充実していたりして、割と生きていきやすい国なんですが、そこに「女性」という性別を入れただけで、ものすごく生きづらくなるというのがこのジェンダーギャップ指数なんですね。

最近、選択的夫婦別姓の話でなぜ経団連が動き出しているかというと、今はもう「ビジネスと人権」という文脈も出ているくらいで、要は企業が取引をするときに、人権状況がちゃんと整ってなかったり悪かったりしたら「もう取引しません」というのがグローバル社会の標準になりつつあるんですね。

リスナーの皆さん、「ウチは中小、零細やから関係ないわ」と思っているかもしれませんが、ある日突然大企業、取引先から「あなたの会社の人権状況を知らせてくれ」というような通知が来るかもしれません。そこでもし人権状況が良くないとなってしまったら、取引停止であったり、「こういうふうに是正してください」と言われたりするケースも出てきます。

今そういう時代にあって、国際人権というのは一つの基準なので「それを知らない」とか、「使えていない」とか、「条約の趣旨と全く違うことをしている」みたいなことってよろしくないですよということが言われているわけですね。

だから、女性差別撤廃委員会の審査でどういう勧告が出るか分かりませんけれども、それを全然誠実に履行してこなかった日本政府およびそれを支える世論というものに対して、厳しい目が向けられているということが考えられます。

人権の保障を世論調査や人々の感情で推し量ったら駄目なんです。特に少数者の人権というのは、多数者がいくら好きだとか嫌いだとか言おうが関係ないんですよ。「人権なんで」っていう話です。

そのあたりの人権のきちんとした理解を深めるためにも、この女性差別撤廃条約の委員会の審査というものに注目をしていただきたいですし、選択的夫婦別姓が今回の選挙の争点になっていますけど、本来選挙の争点ではなくて、すぐにでもやらなあかん話なんちゃうの? っていうのが実のところあります。

◎谷口真由美
法学者。1975年、大阪市生まれ。2012年、政治談議を交わす井戸端会議を目的に「全日本おばちゃん党」を立ち上げる(現在は解散)。元日本ラグビーフットボール協会理事。専門は、人権、ハラスメント、男女共同参画、女性活躍、性教育、組織論、ジェンダー法、国際人権法、憲法。

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