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「肥料高騰」廃業する農家も…格安肥料を“再生リン”活用し開発

円安の影響で廃業する農家も出てきています。農業に欠かせない肥料も原料の多くを輸入しているため、価格が上昇しているんです。農家の窮地を救いたいと、格安の肥料を福岡市とJAが協力して開発しました。  

電照菊農家は電気代だけでなく…

福岡県八女市にある電照菊のビニールハウスです。
電照菊農家 柴田悟史さん「これが電照ですね、蛍光灯。生育期間中はだいたい4時間、深夜4時間。(質問 毎日ですか?)そうですね」

「肥料価格は約4割の値上げ」

菊の生育に適した温度は13℃から18℃。ハウス内の温度を保つため、夏場は風を送る循環扇、そして冬場は暖房が欠かせません。
電照菊農家 柴田悟史さん「重油の暖房機ですね。重油の価格はかなり上がっています。原油価格が上がっていますので」
上がっているのは、燃料代だけではありません。
電照菊農家 柴田悟史さん「(質問 生産に関わるモノは?)ほとんど上がっていますね。資材、農機もそうだし、電気代、肥料も…上がってないものがないかも。もちろん人件費もですね。」

「肥料価格は約4割の値上げ」

なかでも深刻なのが、農業に欠かせない「肥料」の高騰です。
JAふくおか八女 浅川誉光係長「価格はですね、やはり今年に入りまして、かなり上昇傾向になっております。約4割の値上げになっております」
なぜ肥料が高くなっているのでしょうか?

JAぜんのうグループの肥料メーカーです。
東純次工場長「肥料の三要素が窒素とリン酸と、カリウムですね」

原料のほとんどは輸入


植物の成長に必要な「窒素」、「リン酸」、「カリウム」の3要素の原料は、ほとんどを輸入に頼っています。財務省の貿易統計によると、窒素の原料の37%、リン酸の原料の90%は中国。そしてカリウムの原料は、ロシアとベラルーシから25%ほどを輸入していました。
東純次工場長「最初は中国の輸出規制から始まってですね。中国からの原料が入りにくくなってきているのと、今回ロシアの戦争によってですね、カリウム関係も…以前に比べれば倍近くになっているような形ですね」

緊急対策の一方で「廃業する農家」も

福岡県は、肥料価格の上昇分を補助する緊急対策を今年6月から実施していますが、すでに廃業する農家も出てきているといいます。
電照菊農家 柴田悟史さん「そういう経費がかさんで生産をやめていく方とかですね。作物を変えるとか…高齢になってきた方はやめられますし、労働力確保が難しければ別の仕事を探す方もいらっしゃいます」

格安肥料を“再生リン”で開発

RKB小畠健太「菊を育てるために必要な電気や重油など、あらゆるモノが値上がりしている中で、今回生産コストを大幅に下げることができる新しい肥料が開発されました」

福岡市東区の和白水処理センターです。集まってくる下水からごみのほか、赤潮を引き起こす植物プランクトンの栄養となる「リン」を取り除いています。
和白水処理センター 佐々木友幸所長「こちらの施設は国土交通省が開発した技術の施設で、国内導入1号機になります。この施設のおかげでリンの回収量が大幅に増えました」
リンの回収設備を更新したことで、これまで年間10トンだった回収量は8倍以上に増えました。福岡市は、この「リン」を有効活用できないかと、新たな肥料の開発をJA全農ふくれんに提案。JA全農ふくれんが開発した家畜のフンの堆肥を混ぜ込む技術も活用して、新たな肥料「eグリーン」が完成し、今年9月から販売を開始しました。

地域でとれる原料を使うため、価格も抑えられています。

「価格は従来の半分以下」

電照菊農家 柴田悟史さん「安いと思います。これまで使っていたモノと比べると半分以下になりますね。エコというか、それこそ国内で手に入る原料で作っているということで、それで価格が安くなれば、なおのことありがたいですね」

JA全農ふくれんでは、さまざまな作物で試験栽培を実施していて、今後、さらなる普及を図っていく方針です。
JA全農ふくれん 久保成人さん「いろんな作物にこれから試験をして、広くご利用いただきたいなと考えております。良いものを安く安定的に供給していきたいという思いがありますので、是非手に取って使っていただけたらなとは思っています」
地域での資源を活用したエコな肥料。肥料価格の高騰に苦しむ農家の救世主として期待されています。

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