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新海誠「『すずめの戸締まり』RADWINPSが最初に作った曲は全部ボツにした」

新海誠「『すずめの戸締まり』RADWINPSが最初に作った曲は全部ボツにした」

11月11日に劇場公開され、大ヒット上映中の『すずめの戸締まり』新海誠監督が、RKBラジオ『Toi toi toi』にゲスト出演。普段あまり語られることのなかった声優たちとのエピソードや、『君の名は。』から3作品続けて主題歌や挿入歌を担当するRADWINPS野田洋次郎との秘話を披露した。

 

劇場でしか体験できない音にこだわる

山口たかし(以下、山口):映画の宣伝コピーに「新海誠監督・集大成にして最高傑作」と書いてあって「いや、ちょっと待ってくれ。『君の名は。』『天気の子』どちらも本当に素晴らしい作品だったし、最高って言っちゃっていいの?」と思ったけど、最高傑作でした。

 

新海誠監督(以下、新海):いやぁ、福岡来てよかった(笑)

 

山口:映像もストーリーも声優さんも素晴らしかったんだけど、なによりロードムービーだったじゃないですか。九州をスタートして全国津々浦々、素晴らしい風景を見ると「映画って、旅行に行った気分というか別世界に連れていってくれるもんなんだな」って改めて思い返して。劇場で見られてよかった。

 

新海:映像ってスマホやタブレットの解像度がぐっと上がっているから「きれいな絵」というのは手元で見られるんです。ですから、劇場のスクリーンと実はあまりスマホの解像度は変わらないんですけど、音はスピーカーのサイズも違うし数も違うから、劇場体験と呼べるような、(音が)お腹に響いて、でもセリフもくっきり耳に届いて、という特別な設計をしているので、ぜひ劇場で体験してほしいなとは思います。

 

山口:(草太役の)松村北斗さんがプレミア上映会のときに「新海監督が僕の声を音にしてくれた」って言っていて、どういうことなんだろう? と思ったんですが、劇場で観てわかりました。

 

新海:声優さんの声も、メロディーの一つというか、映像も音楽も含めて、全部映画を構成するための大事なパズルのピースなんで、それを全部組み合わせて一つの大きなメッセージというか、気持ちみたいなものを観客に受け取ってもらえれば幸せだなと思います。

『天気の子』上映のときに「次は誰も取りこぼさない作品を」と思った

別府あゆみ(以下、別府):6歳の娘と一緒に観たんですが、あの臨場感に最初は「ママ、ママ」っていう声が隣でしていたんですが、その後はずっと夢中になって、観終わった後も「もう1回行きたい」って。

 

新海:6歳のお子さんの映画体験の一つになったんだったら、こんなに幸せなことはないですね。僕(前作の)『天気の子』のときとかもこっそり映画館に行くと、例えばおじいちゃんがお孫さんと来ていたりするんですよ。で、「大丈夫かな? お子さんにはちょっと難しい映画を作っちゃったけど」みたいな気持ちがあって、やっぱりちょっと退屈しているようなお子さんの姿を見たりすると「次の映画こそ、もう誰も取りこぼさないで『面白かった』って、小さな子からご年配の方まで思ってもらえるような映画にしたい」と『すずめの戸締まり』はずっと思っていたんですよね。ですから6歳のお子さんが飽きずに観てくださったのであれば嬉しいです。

「OKテイク」も手放してくれなかった深津絵里

山口:完成したのが本当に公開直前でしたよね?

 

新海:初号試写といって、まずは完成した映画はスタッフと一緒に見るんですけど、その初号試写とマスコミ試写の日が同じでしたからね。

 

山口:特にどこにこだわっていたんですか?

 

新海:最後の最後までギリギリまで引っ張ってしまったのは映像の細かなところで、例えばあるシーンで火の粉がいっぱい舞っているんですけど、その火の粉のサイズとか空気中に移動する軌道であったりとか、どういうふうに火の粉が飛べば臨場感が増すかとか、間違い探しみたいなところを最後の最後まで微調整していましたね。

 

別府:それは監督の感覚で?

 

新海:僕もですけど、やっぱり現場のスタッフがこだわって「手放したくない」って。キャストもそうで、深津絵里さんが今回、環(たまき)役というすずめのおばさん役をやっているんですけど、深津さんも手放してくれない。例えばテイクを取って「OKです」ってこっちが言っても、「本当にこれで大丈夫なんでしょうか?」って。宮崎弁の細かなニュアンスとか、あと段々日本を移動していく話なので、方言のニュアンスも変わっていって、移動するに従ってそういうところもこだわってですから、キャストもなかなか手放してくれず。アニメーターや映像クリエイターも手放してくれずですから、最後までギリギリまで時間がかかってしまいましたね。

 

別府:監督も結構時間をたっぷりと使いましたか?

 

新海:今回の作品に取り組むことに、ある程度は贅沢な時間を使わせていただいたんですが、ただやっぱり3年に1本ぐらいは映画を出したいという気持ちはあります。そうしないと自分たちの今感じている不安とか、高揚みたいなものと、観客の気持ちがあまり離れすぎちゃうと怖いなと。ですから同時代の映画として、今僕たちが住んでいる世界の映画なんだよって気持ちで見てほしかったので、あまり時間をかけ過ぎずに作りたいという気持ちも同時にありました。

『天気の子』のキャンペーンで全国各地を訪れ今作につながった

山口:実は『すずめの戸締まり』も、前作『天気の子』のキャンペーンで全国を回ったときにアイディアが生まれたとか。

 

新海:そうです。コロナ禍前だったので、世界含めていろんな地域を巡っているときに「繁華街とかも寂しくなってるな」とか「シャッター街が増えたな」とか、過疎化が進んでいる街を目にする機会が多くて。かつては賑やかだった街が、人がいなくなったときどうなるんだろう? このまま朽ちていく街を、お葬式とか人間に“悼む行い”があるように、亡くなった場所を悼むような慰霊するようなキャラクターがいたら、それはもしかしたらアニメの主人公になるかなと思って。

宣伝プロデューサーから「飽きた」といわれた“新海ブルー”

山口:新海監督の作品って、青が素敵だなって思うんですよ。「ティファニーブルー」や「北野ブルー」に続く「新海ブルー」でしょこれは。

 

新海:いや、『君の名は。』でも『天気の子』でも青だったので「もうちょっと飽きたよ」と宣伝プロデューサーとか(言われて)「次の映画のポスターは青じゃなくて、くすんだ曇り空とかで」って出してみたら「やっぱりこれは暗い、もうちょっと明るくしてください」と。

 

別府:今回は新しい新海ブルー?

 

新海:そうですね。でも青だけではなくて、いろんな時間が混じり合った空を今回映画の軸にしました。「全ての時間が(同時に)ある」という場所が出てくるんですよ。ですから青空なんだけど、星も光っていて、同時に夕日もあってみたいな、不思議な世界も出てきます。

脚本を読んだ野田洋次郎が作った曲は全部ボツに!

山口:映画のアイディアができて、それを本にして新海監督がまず見せるのが、RADWIMPSの野田洋次郎さんというのは本当ですか?

 

新海:そういえば、この3冊(『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』)はそうですね。もともと僕は純粋にRADWIMPSの洋次郎さんのファンだったんです。アニメーションってまず「絵コンテ」を描くんですけど、そこに勝手にRADWIMPSの曲をはめて「ここでこんな曲がかかればいいな」ってやるぐらい好きだったんです。そこで思い切って実際オファーしてみようと思って、そこから『君の名は。』が始まったんです。

 

新海:今は作曲家と映画監督という関係性ではなくて、僕は洋次郎さんに導いてもらっているような気がするんですよ。『すずめの戸締まり』でも「脚本を書いたら洋次郎さんに最初に読んでほしい」と思って送ったんですね。そうしたら、数か月後に6曲、ボーカル曲が上がってきて。彼が多分部屋でギター弾きながら歌った完全なオリジナル。でも、全部ボツにして使わなかったんですよね。

 

山口:えー! ぜいたく! ファンなんですよね?

 

新海:ファンだからドキドキするんですけど、好きだって思いながら。でも映画にはまるかどうかはまた別の問題なんで。ただその6曲全てに洋次郎さんからの脚本の感想が含まれているんです。「この映画の大事な部分はここなんじゃないか」とか、映画の脚本にはない言葉の歌詞なんですけど、でも「もっと大事なところがここにあるんだ」っていうのを全部音楽で教えてもらって、そこからもう少しこの気持ちを掘り下げて深く描こうみたいな。それで一緒に並走しながら、素晴らしい曲をいただいてゴールまで行ったので、導いていただいているという気持ちが強いですね。

不安を抱えた人と一緒に仕事がしたい

新海:映画を一番必要としているのは若い子だと思うんですよね。生き方とか、まだ見ぬ感情のこととかを漫画とか映画って教えてくれるじゃないですか。その先生きていく指針だったんですよね。大人になるとね、他にもいろいろお酒とかいろんな逃げ道もあるし。ですから、まず何よりも若い人に届けられるものにしたいという気持ちがあって、でも自分も年を取ってくると段々、先ほど登場した深津絵里さん演じる環という40歳ぐらいのキャラクターも出てくるようになりましたけれども、でも、まず何より第1に、若い世代に向けたいとは思っています。

 

山口:『君の名は。』を中学生のとき劇場で見て感動を覚えたのが、今回のヒロイン役の原菜乃華ちゃんなんですよね。だから『すずめの戸締まり』を観た子供がまた将来、新海監督の作品に出るってこともあるかもしれないね。

 

新海:自分だけが年をとっていって、ヒロインはずっと18歳ぐらいで、3年ごとに映画を作るたびに自分の老いを感じますけどね(笑)

 

別府:キャスティングもやっぱり若い方を使われてるなっていうイメージがあるんですけど。

 

新海:キャラクターと近い世代の人をから選ぶっていうのが多いですよね。ただ、声の芝居なんて本当は関係ないんですけど、でも劇場映画って、キャラクター自身が最初何かが足りない不安からスタートして、それが解消されて、出口でちゃんと1人立ちできるのが基本的な構造なので、やっぱり最初不安を抱えた人と一緒に仕事をしたいんですよ。その不安ごと映画のために欲しいというか。ですから原菜乃華さんもそうですし松村北斗くんも、初めてが大事なわけじゃないんですが、でも彼らアニメーションが初めてで、そのことに対しての、不安とかその恐れみたいなものも、一緒に映画を一緒に作りながらそれが一つずつなくなっていく。それがキャラクターの映画の中の変化にシンクロして、お客さんもそれをどこかで感じると思うんですよね。

 

山口:松本白鸚さんも素晴らしかったです。

 

新海:松本白鸚さんや北斗くんにやっていただいたのは、伝統的な役割を担っているというキャラクターなので、歌舞伎役者とかとのイメージが重なって白鸚さんにオファーさせていただいて。

 

山口:白鸚さんも初めてだったんですよね?

 

新海:そうなんです。白鸚さんはアニメーションってあんまり知らないんだけど、松たか子さんの娘、つまりお孫さんが「新海さんの作品は出た方がいいよ」って。孫力によって実現しましたね。

 

山口:素敵な話ですね。まだ見てないよっていう方も、今年2022年最注目作品ですから、皆さんの心に残る作品だと思います。最後に新海監督からリスナーの皆さんに何かメッセージあれば。

 

新海:この映画って6年前とか3年前にキャンペーンで九州に来て皆さんの声を聞いて『すずめの戸締まり』まで導いていただいたような気がするんです。「次見たい映画はこういう映画なんだ」と。ですので「私も作るのを手伝ったんだよ」みたいな気持ちで映画館に行っていただけるとすごく幸せですので、ぜひぜひ自分の作品を見るような気持ちでお付き合いください。

金曜ドラマ『クロサギ』

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