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「沖宮」~石牟礼道子 最後の作品に込めた思い~

暮らし
2019年第1回
制作:RKK熊本放送
ディレクター:宮脇 利充

2018年2月に亡くなった石牟礼道子(享年90)は、水俣病事件を描いた「苦海浄土」で知られる日本を代表する作家である。彼女の最後の作品、新作能「沖宮」は、謎に満ちた作品だ。天草島原の乱で孤児になった5歳の幼女が主人公で、渇水に苦しむ天草の地で雨乞いの人身御供として海に流される。そこに乳兄妹である天草四郎の亡霊が現れ、原城で討ち死にした農民たちがいる海の底の<沖宮>へと誘う物語だ。2018年秋、熊本・京都・東京の3会場で上演された。石牟礼はこの最後の作品で何を伝えたかったのだろうか?
「沖宮」公演の実現は、石牟礼と、長年の友人である京都在住の染織家・志村ふくみ(95)の念願だった。志村の娘で「沖宮」の衣装制作を担当した洋子(69)は、能のテーマは<死と再生>であると話す。石牟礼と志村が共有する生死観が、物語と衣装の色に託され表現されていると。
一方、石牟礼の後半生を公私にわたり支えた思想史家の渡辺京二(88)は、能のモチーフは1971年から約1年、チッソ東京本社前に水俣病未認定患者らとともに座り込んだ日々であると読み解く。石牟礼自身の文章、関係者へのインタビューから、最晩年に作家が記した作品には、40歳代前半の水俣病闘争の日々が反映されていたことが浮かび上がる。

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