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父が遺したあの子のメロディー

2021年第9回
制作:NBC長崎放送
ディレクター:古川恵子

怒りのムードが満ちないのは、歌のせいかもしれません。毎年8月9日の「長崎原爆の日」、式典で子供たちがうたう歌のことです。長崎市立山里小学校の「あの子」と城山小学校の「子らのみ魂よ」。原子爆弾の犠牲者に毎年交互に捧げられています。2つの歌の作曲者は、木野普見雄さん(1970年没・享年63)という被爆者です。歌の知名度と反して、木野普見雄さんのことを知る人はほとんどいません。

木野さんの長男・木野隆博さん(70)は、父親から原爆の話を聞いたことが一度もありません。ただ、原爆で妻子3人を亡くしたこと、母親と再婚して自分が生まれたこと、そして原爆の歌を作ったことは周りから聞いて知っていました。

父親の50回忌を機に初めてちゃんと読んだ手記の中には、生々しい被爆体験と家族を奪われた怒り、底知れぬ悲しみが綴られていました。父が亡くした家族は妻31歳、長女5歳、長男3歳。

なぜ父は被爆体験を語らなかったのか、美しいメロディーには、どんな思いが込められているのでしょうか。

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