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加隈亜衣・主演「博多さっぱそうらん記」ダイジェスト

第二話「玉せせり」その1~5

新しい年を迎えた。  博多の町の一年は1月3日の筥崎宮の「玉せせり」から始まる。裸に締め込み姿の競り子たちが一つの「玉」を奪い合う、勇壮な祭りだった。陸側が勝てば豊作で、海側が勝てば豊漁となる。
 
 かなめは、博を誘って見学に行くことにした。二人は、ぎこちなく一緒に歩いた。着物姿のかなめにどぎまぎしているのか、博はべらべらと博多うんちくを語り出す。筥崎宮そばの承天寺前を通りかかり、不思議な「オブジェ」のようなものにかなめが注目していると、「それは昔あった博多大仏の台座だよ。博多大仏は戦時中の金属供出で失われてしまったけどね。もともと承天寺は博多の中心部の西川端にあったから、博多大仏もそこにあったんだ」と立て板に水で語りだす。そんな姿を微笑ましく見守っていると、博は気まずげに黙り込んだ。博は本当に、博多のことを嫌っているんだろうか。
 
 問い質そうとしていると、玉せせりの会場で、騒動が持ち上がっていた。玉せせりに使用される玉は陰陽二つあり、二つあわせて清められた後、「陽の玉」だけが玉せせりに使用され、「陰の玉」はそのまま一年後まで安置されるのだ。ところが、その「陰の玉」だけが忽然と姿を消してしまった。「玉せせり」の行事自体には支障は出なかったが、地元のニュースでは、誰が盗んだのか、どこに行ってしまったのかが取り沙汰されていた。「陰の玉」が消えてしまったことで、何か不吉なことが起きなければいい、との報道に、かなめも正月そうそう、不吉な気分に襲われてしまった。

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