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学校薬剤師ってご存じですか?

大賀薬局

学校薬剤師とは?知られざる存在と、その大切な役割とは


薬剤師が大学以外の学校(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校)にかかわっているのをご存じですか?
学校医、学校歯科医は、学校に健診に来てくれて直接かかわることが多いのでご存じの方は多いと思います。
でも実は、薬剤師も学校保健安全法で設置が義務付けられています。会ったことないな...と思う方も多いのでは。そんな学校薬剤師の存在に迫ります。

学校薬剤師が必要になったわけ


1930年、小樽市の小学校で女子児童に「アスピリン」を服用させるつもりが、「塩化第二水銀」という毒薬を服用させてしまったため、その女子児童を死亡させてしまうという事故が起きました。
学校には授業や環境整備に使うために様々な薬品を保管しています。このような事故を予防するためには学校に薬の専門家を置くべきだという声が高まり、学校に薬剤師が配置されることになったそうです。
そして1958年に学校保健法が制定公布されて、法律でも学校には学校薬剤師を置くと定められたそうです。

学校薬剤師のお仕事


学校環境衛生(換気、採光、照明など)を維持・管理するための指導を行います。
そのために学校環境衛生基準に定められた状態であるか、検査をしています。
主な検査項目は
  • 教室等の環境検査
    換気及び保温、採光及び照明、騒音の検査
  • 水質検査
    飲料水、水泳プールなどの水質検査、施設・設備の状態

他にも

  • 排水の管理
    雨水の排水溝などに問題がないか
  • 学校の衛生管理
    学校の清潔、清掃、トイレの管理、教室等の備品の管理、ごみ処理、ネズミや衛生害虫などが適切に行われているか
  • 薬品類の管理
    保健室の医薬品、理科室の薬品、プールの消毒液などが適切に管理されているか
  • 感染症・食中毒の予防
などです。

環境基準の重要性


教室での授業中に子供たちの呼気に含まれる二酸化炭素の放出はもちろん、感染する可能性、特にコロナやインフルエンザ等のウイルスが放出されているとクラスターが起きる原因になってしまいます。今の時代、換気の重要性は皆さんにもご理解いただけるかと思います。
授業に集中できるような室温、目の負担にならない照度、先生の声が聞こえるように騒音の状況確認が必要なのです。
飲料水の安全は特に重要です。少子化の時代、40年前の第2次ベビーブームの児童生徒のために建てられた校舎では受水槽が大きすぎて、飲料水を細菌繁殖から守る遊離残留塩素濃度が低くなってしまうこともあります。

福岡市の場合、教室の環境検査は依頼があった場合に行っていますが、水質検査は毎学期行っています。
また、昨年のように長期間コロナで学校が閉鎖された際も、子供たちを受け入れる前に先生方が必至で消毒作業を行っているところに伺って、消毒の仕方の助言、水質検査をしました。
学校の先生方は薬の専門家ではないので、たとえ文書で指導が来ていても薬剤師が立ち会って手順通りにできているか確認できると、自信を持って生徒を迎え入れる準備ができるようになります。

学校には保健室の医薬品、理科・化学実験室の薬品、プール水の消毒等の薬品類や園芸用薬品など、多くの薬品を所有しています。
それらの使用、保管などの指導や助言も学校薬剤師の仕事です。
特にコロナ下において、学校でも大量の消毒薬を使用することとなりました。これも今年、保管場所・方法などに問題がないか、確認、指導を行っています。

食中毒予防の観点から給食センター、給食室の環境衛生基準検査も行うことがあります。
福岡市の中学校の給食センターで職員の方が給食を作っているところで、環境検査に参加したこともあります。子供たちの口に入るものですから、授業を受ける環境同様、重要ですよね。

健康指導や保健指導はとても大切


2009年に「学校保健安全法及び学校保健安全法施行規則」が施行され、学校環境衛生だけでなく、児童生徒の健康相談や保健指導も行うことと定められました。
保健指導というのは、
  • 医薬品が適正に使用されるための啓発活動
  • 薬物乱用防止活動
  • 飲酒や喫煙に関する啓発活動
です。

喫煙防止教室は夏休み前に行うことが多いです。長い休みの間に、先輩や年上の友人に誘われて好奇心から喫煙してしまう子どもを作らないためです。子どもが喫煙している場合、ご家族に嫌煙家がいれば電子タバコでもにおいで気づくケースはあります。
ですが、ご両親やご家族に喫煙者がいる場合、子供がこっそり喫煙していても気づきにくいですし、子どもも家族が吸っているのだからと「体に悪い」「成長を妨げる」という意識が薄くなりやすいです。
そのため、どの家庭の子供にも、「自分を含めて家族みんなタバコを吸わないことが大切」と一生懸命伝えています。

薬物乱用といえば、違法薬物の所持、使用です。
イマドキ怖いのは、違法薬物と知らずに使用してしまうことです。一昔前は手に入れるのには、夜の繁華街等に行かなければならなかったですし、商店で手に入るもの(例えばシンナー)は子どもが購入しに来ると売ってもらえないので、周囲にそういう環境や条件がそろってしまいやすい子どもたちを重点的に見守ることで、避けることができていました。
しかし、今はネットで何でも簡単に購入できる時代。目の前に座ってスマホをいじっている子供が実は薬物乱用の危険にさらされている可能性もあるので、より一層注意が必要です。

また、市販のお薬の中にも習慣性のあるものがあり、子供が勝手に購入して間違った使い方をする可能性があります。
「薬物乱用」は違法薬物だけでなく、目の前にある薬も正しく使わなければ「乱用」になり、健康で豊かな人生の妨げになることを話しています。

学校薬剤師は、子供たちが授業に集中できる環境を守る仕事、そして子供たちの現在だけでなく未来の健康を守る仕事をしています。
昨年は新型コロナウィルスの影響で多くの学校のプール授業が中止になりました。早く終息して、子供たちがもっとのびのびと授業が受けれるようになるといいですね。

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この記事を書いたひと

大賀薬局

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福岡市博多区に本社を置き、ドラッグストア、調剤薬局などを展開する。創業、明治35年(西暦1902年) 。健康に関する様々なコラムを展開しています。