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『博多さっぱそうらん記』⑧「深夜のごみ収集」と博多市の怨念

「また、お告げがあったとたい」 「お告げって、どんな?」 「玉せせりの陰の玉ば使って、怨念ば集めんしゃい。それば筥崎さんに収めたら、怨念は消え去る……。そげん告げられたとたい」 ゴミの収集が滞っているのは、カタハネたちとハンの者がゴミ収集車を使って、玉せせりの「陰の玉」に集まる「博多市の怨念」を、奪い合っていたからだった。 「陰の玉が無くなった理由はわかったとして、どうして博多市の怨念を奪い合うのに、ゴミ収集車を使わなきゃならないんだ?」 「福岡市は、全国でも珍しか、夜のゴミ収集ばしよる。それがなぜか、知っとるね?」 「それは、昼の収拾で渋滞を引き起こさないようにでしょう?」 「それは、表向きの理由たい。夜のゴミ収集が決まる過程には、アタシらが大きくかかわっとるとたい」 「博多市の怨念は、博多のお祭りや行事ごとの時には大量に発生する。ばってん、それ以外の時にも少しずつ、一日の人々の活動が終わった深夜に、地面の下から沸き上がってくるとたい。その怨念ば効率よく集めるための手段たい」 ゴミ収集車に自分たちの力の一部を託して、夜のゴミ収集と一緒に博多市の怨念を回収していたのだという。 「アタシらハンの者と、カタハネが対峙して、まさに一触即発やった。そん時に、筥崎の神さんが仲裁に入ってくれたとたい。それから、陰の玉ば使った、この羽片世界での『玉せせり』がはじまったわけたい」 「陰の玉で玉せせり?」 「博多人形店」や「博多ラーメン」の店に陰の玉をぶつければカタハネ側が怨念を獲得し、逆に「福岡」の名前のついた店や施設にぶつければ、ハンの者が怨念を得るというわけだ。 「玉せせりが行われた1月3日から毎晩、夜明けまで争いよるとばってん、決着がつかんで、毎晩追いかけっこばしよるとたい」 カタハネたちは、繁華街の中に入り込んで、「店の看板」に陰の玉をあててゆく。「博多ラーメン」や、「博多人形」など、博多の名を冠した店だった。福岡部にありながら「博多」の名前を冠する店舗は、カタハネ側にとってのポイントになる。陰の玉に集まった怨念が、カタハネたちのゴミ収集車に吸い込まれてゆく。 「思い切り博多側に飛ばせ!」 玉は東に向かって遠く飛び、落ちた先は博多駅前だ。ハンの者はうまく連携し、「福岡センタービル」や、「ANAクラウンホテルプラザ福岡」に玉をぶつけた。博多駅前にありながら「福岡」を名乗る施設は、ハンの者側にとってのポイントになる。 カタハネの車とハンの者の車が、競い合うように東へと向かった。

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