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「男はみんな妄想の生き物だ」back numberのあの名曲を読み解く

かつて作詞家を志望していた、元サンデー毎日編集長・潟永秀一郎さんがレギュラー出演しているRKBラジオ『櫻井浩二インサイト』で月イチ恒例となっている企画「この歌詞が凄い」。11月24日の放送では、若き日の胸キュン「男はみんな妄想の生き物だ」というテーマで、back numberの2曲を解説した。  

「男の人は女性よりロマンチストだ」と言われます。私もそうでした。ロマンチストというより、アホなんですが(笑)、高校時代バンドをやってた頃「いつかトレーラーにバンド名を書いて全国ツアーをして、コンサート会場に昔好きだった人が来ているのに気づいて、彼女に向かって歌ったら、閉演後に『私も好きだった』って言われないか」とか、試験勉強もせずにそんなことばっかり考えていて。まさにアホです(笑)

そして、後でわかるんですね。「あなたはロマンチストだね」って、実は「子どもだよね」を、優しく言い換えただけなんだ、って。そして、こうも言われました。「あなたが好きなのは私じゃなくて、あなたが思い描いている恋愛小説の私だ」って。だからこれから紹介する歌を聴いたとき「ああ、こういうことだったんだ」って、ストンと胸に落ちたんです。冬が近づくと聴きたくなる2015年のヒット曲、back numberの「ヒロイン」です。この曲、どの歌詞が凄いといって、サビの
ああ今隣で、雪が綺麗と笑うのは君がいい
でも寒いねって嬉しそうなのも
転びそうになって掴んだ手のその先で
ありがとうって楽しそうなのも
それも君がいい

という歌詞です。実際には彼女は隣にいないので、完全に妄想です。でも、絵が浮かぶじゃないですか。自分を見つめる、無邪気な彼女の笑顔が。改めて、歌の物語を簡単に説明すると、大好きだった人と離れ離れになって、雪が降ってきた時、彼女の街でも雪が降っているのかなって思って、メールを打とうかどうか迷ったけど打てなくて、切ないのは歌詞のこの部分
君の街に白い雪が降った時
君は誰に会いたくなるんだろう
雪が綺麗だねって
誰に言いたくなるんだろう

…って、つまりは片思いです。でも、片思いはある意味無敵で、告白してふられない限り、恋は終わりません。ずっと脳裏に浮かぶ笑顔は変わらない。永遠のヒロインです。妄想の彼女は永遠に齢もとらないけれど、現実は、雪が降ったら「寒いよ~」って不機嫌になるかもしれないし、転びそうな彼女の手をつかんだら、引っ張られて一緒に転んで喧嘩になるかもしれないし、あくまで偶像は偶像。だから、叶わなかった恋の相手とは、もう会えない方が幸せなのかもしれません。いずれにせよ、「恋に恋した」頃の男子の一途さを、雪が降ったという短いエピソードを切り取って甘酸っぱく伝えてくれる歌として、これからも長く残っていくと思います。

妄想ついでに、back numberの歌をもう1曲。2016年、これも冬にヒットした「ハッピーエンド」です。この歌のどこが「男の妄想」かと言うと……全部です。妄想って想像力で、それなしに歌も小説も生まれませんから。清水依与吏さんって、大したソングライターです。歌の物語を簡単に言うと、彼から好きだと言っておきながら、おそらくは遠距離恋愛になって、彼も忙しくなって別れを告げます。だけど彼女は、健気に涙も見せず、恨み言一つ言わず、未練の言葉も冗談に紛らせて「元気でいてね」って言ってくれるって、ね、妄想でしょう(笑)。そんな仏様みたいな人、いませんよね。歌詞で言うと、例えば
今、すぐに抱きしめて
私がいれば何もいらないと
それだけ言ってキスをして
なんてね 嘘だよ ごめんね

とか。
泣かない私に少し
ほっとした顔のあなた
相変わらず暢気ね そこも大好きよ

とか。そして一番切ないというか、すごいのは次のフレーズ
あなたが勇気を出して
初めて電話をくれた。
あの夜の私と何が違うんだろう

――って、悲しすぎません?

ちなみにこの歌、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』という映画の主題歌で、最初に紹介した「ヒロイン」はJRのスキーツアーのコマーシャルソング、CMのヒロインは広瀬すずちゃんでした。どちらも映像と一緒に見るとまた印象が変わるので、ネットなどで見られる方は、ぜひチェックをしてみてください。

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