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「これって雇用保険を使うものなの?」コロナ禍で見えてきた疑問

「これって雇用保険を使うものなの?」コロナ禍で見えてきた疑問

コロナ禍での雇用維持のために支払われてきた雇用調整助成金の財源不足を補うため、来年4月から雇用保険料を引き上げる方針だった日本政府。

しかし、労働者が負担する分の料率アップを来年秋以降に先送りする方向で調整に入ったという。そもそも雇用保険はどんなことに使われているのだろうか?明治大学の飯田泰之准教授がRKBラジオ『櫻井浩二インサイト』で解説した。

明治大准教授
飯田泰之

雇用保険料アップをめぐり対立する意見

一般的には「失業保険」と言われている、雇用保険事業から支払われている雇用調整助成金は、コロナ禍において失業の増加を防ぐのに最も大きく寄与した制度です。

しかし、休業補償を使う会社が増えたことによって、これまで積み上がっていた約6兆円の積立金はほぼなくなりました。そこで保険料をアップしようということになりましたが、この問題をめぐって二つの意見が対立しています。

現在、雇用保険料は給料の0.3%を労働者、0.6%を事業主(会社)、あわせて0.9%を負担することになっています。この0.9%という料率は‟異例の低さ”なんです。なぜかと言うと、2010年12年頃からどんどん日本国内は雇用情勢が良くなって、失業手当を受ける方が減ったため、お金が余り始めたんです。

しかし、雇用調整助成金の支払いで積立金が減ってしまったので「そろそろ0.9%という低い料率を少し上げてみてはどうですか。雇用拡大で料率が下がる前の段階まで戻すべきなんじゃないですか」というのが、引き上げを主張する側の意見です。

一方で「引き上げるのはおかしい」と言っている側もいます。雇用保険事業は「労働者がお金を出し合って、失業した人が給付を受ける」という‟保険の事業”ですが、コロナショックは保険者の責めに負わせることができないものであり、国が直接負担するべきではないかという意見です。

ちょうど、激甚災害に指定されると、損害保険を使わず、国が負担するのと同じです。今回の雇用調整助成金も、失業率が上がったという理由で積立金が足りなくなったわけではないので、その分は国が負担するべきじゃないかという理屈です。

どちらも言われてみればごもっともな意見ですが、どのみち何らかの形で負担しない限り、給付の継続はできないので、これを機に‟どれが保険的な業務なのか“どれが国がやるべき業務なのか”を、危機対応を絡めてしっかり切り分けていく必要があります。

コロナショックで見えてきた制度への疑問

この雇用保険、大きく分けて四つの事業をしてます。①失業等給付。これが一番わかりやすいですね。しかしほかにも、②育児休業給付、これも雇用保険から払われています。そして③職業安定事業と④能力開発事業。これは職業安定所等が行う能力開発業務や再教育業務を指します。

こういった四つの事業のうち、誰がどう見ても保険だ、というのは①の失業等給付です。しかし②の育児休業給付については、子育てに関わることなので、国や自治体でしっかりとサポートしていくべきもので、雇用保険を使うものではないという見方もできます。

また失業した方、これから職に就こうという方への職業訓練等の費用も、はたして保険で賄うべき事業なのかという疑問が出てきます。

コロナショックによって、これまでは気にしないでもなんとかなっていた、今でどおりやっておけば特に大きな間違いはないということで続いていたものが「よくよく考えてみると、建て付けがおかしいんじゃないか」というものは、雇用保険だけでなく、いろんな制度についても見えてきました。

こうしたものは今後、一つ一つ解きほぐしていく必要があると思います。失業等給付に話を戻すと、日本は比較的給付の期間が短く、金額も短いと言われています。こちらを充実させると同時に、育児等については、雇用保険事業ではない形での行政のサポートというのを検討していく必要があるかもしれません。

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