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NUNUSAAA (ぬぬさー) ~布職人たちの挑戦~

沖縄の伝統工芸は概ね他県よりは売れていると言われる。しかし職人たちはその実感を感じられない。さらに近年の着物離れや経済状況が職人の世界に大きく揺さぶりをかけている。そして彼らが直面するのが「伝統」という誇りと重み。伝統は先人たちの知恵と技の集積。しかし一方でその「伝統」が職人を苦しめ、彼らは葛藤を続けている。

そこで琉球絣の産地、南風原町で立ち上がったNUNUSAAA(ぬぬさー)プロジェクト。仕掛けるのは知る人ぞ知る大分県在住の事業敏腕プロデューサー、江副直樹さん。愛情と冷静な眼差しで地域や人々をプロデュースする。

他の地域でも職人たちはSNSによる発信をしているが、江副さんのプロデュースは一味違う。HPはロングインタビューと職人のイメージのみ。職人たちに慣れないインスタグラムやトークを企画し、実施する。単なる情報発信ではない。言語化することで自身と向き合い魅力や悩みを等身大で発信。工房から出て異業種や他産地を経験。意識を変革させる試みなのだ。
戸惑いながら進む沖縄の布職人たち。伝統を愛し、地域を愛し、家族を愛し、その中で伝統とどう向き合うのか葛藤し始めた3代目絣職人、大城幸司さんを中心に現在進行形のNUNUSAAAを追った。

・NUNUSAAA(ぬぬさー)
住所:沖縄県南風原町字本部137番地 琉球絣事業共同組合
電話:098-889-1634
HP:http://ryukyukasuri.com
・Bunbo(代表:江副直樹)
住所:大分県日田市田島193-5
電話:0973-28-6969
HP:http://bunbo.jp
・うなぎの寝床(代表:白水高広)
住所:福岡県八女市本町267
電話:?0943-22-3699

取材後記

沖縄の伝統工芸といわれるものは、概ね他県よりは売れているといわれている。しかし職人さんらの言葉からその実感を感じられない。そして彼らがいつも口にする「伝統」という言葉、そしてその誇りと重み、そしてそこから生まれる悩みが気になっていた。沖縄だけでなく、産地はどこも「伝統」の恩恵と重圧を感じている。「伝統と革新」とよく言われる言葉だが、その狭間で職人たちは何を思うのか、知りたいと思っていた。

「かすりの里」、南風原町では産地活性化のため数々の施策を実施して来た。しかし「これこそ!」といった話を聞くことはなかった。そこに去年、NUNUSAAAという不思議な名前を聞いたのだった。沖縄の言葉で「布人」、布を作る人。つまり染織職人ではないか。彼らのHPを見るとおしゃれなイメージ。しかし商品は1つもない。当初、お世辞にも「インスタ映え」とは言えなかった彼らのインスタグラムはいつの間にかフォロアーは少しずつだが増えていた。俄然、興味を持った。他の産地でもHPやインスタグラムなど職人たちの情報発信は行われているが、NUNUSAAAは何かが違う、そんな印象を持った。

しかも仕掛けているのは沖縄県外のプロデューサーだという。事業プロデューサー、江副直樹氏の企みは工房で黙々と伝統工芸を作る昔ながらの職人との決別。「もの言う職人」「発信する職人」。つまり自分の産地や伝統に愛情と誇りを持っているのなら、自分で言語化し発信しろ。責任と誇りを持って産地や伝統を背負え、と言うことなのだと気付かされた。
取材するしかない。遠距離操作で職人の意識改革。発注を待つだけの職人から攻めの職人へ。取材は新しい発見だらけだった。

久留米絣と琉球かすり、そして大分のプロデューサー。九州と沖縄がタッグを組む試みに、カメラクルーもわたしも興味津々だった。そしてそこで見たのは100個のクッション。ひょっとしたら「伝統と革新」はこのようにして起こっていくのではないか。この次は何が起こるのか。これからのNUNUSAAAと江副氏の仕掛けから目が離せない。
担当:RBC琉球放送 土江真樹子

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