ヨルダンで見つけた不ぞろいの色ガラス玉をつないだカーテンタッセル(留め具)が、春の柔らかい日差しを含み窓辺で軽やかに輝いている。ガラスが持つピュアな透明感が好きな私が心待ちにしているのが、4月18日から九州国立博物館で開催される特別展「アールヌーヴォーのガラス ガレとドームの自然賛歌」。エミール・ガレの作品を多く保有し人気作品を揃える北澤美術館の名品が到来するとのことで、今から心が躍る。
19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで盛んに流行した美術運動「アールヌーヴォー」。ガレは、そのアールヌーヴォーを代表するフランスのガラス工芸家だ。彼の作品は華やかで装飾的なデザインと色遣いが魅力である。独特な感性のままにガラスに彫刻を施し、繊細さと同時にノミで彫ったような粗削り感もあるリアルな曲線で、モチーフとなっている花や昆虫などが持つ生命力を効果的に表現している。
今回の展示で真っ先に鑑賞したいのが「蘭文八角扁壷」。中央に立体的なカトレアの花を一輪大胆に配したピンク色のつぼで、自由で有機的な花びらの曲線がいかにもアールヌーヴォー的。香りまで漂ってきそうなほどなまめかしいのだ。
ガレの超絶技巧が生み出したアールヌーヴォー黄金期のガラスの美しさを堪能したい。
4月15日(土)毎日新聞掲載
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